第18話 進化へ
いきなり現れた“スパーダ”と名乗るチーム。
屈強な悪魔を一撃で倒す力は圧倒的だ。
その力に戸惑う兎だったが、その兎よりも劣等感を感じているのは・・・・華だった。
「ヒュウッ!楽勝ぉ!」
「そりゃあそうだよ。こんな楽な任務久しぶりだったね。」
「・・・・二人、うるさい・・・。」
―――――誰だよ、お前ら!!
純白のマントを着ている、全くタイプの違う男三人。
傷だらけの大男。マントがかなり擦り切れて、汚れている。
小学生くらいにみえるチビ。150cmないんじゃないか?
無表情な眼鏡。本読んでるし。
「ウサっち!!」
心配そうな声で華が駆け寄ってきた。
「ハッ!こんな雑魚に惨敗かよ!?
クルエルのお気に入りだからって少し期待してたのによぉ!!」
「そういうこと言っちゃダメだって。
まだ神の閃光になって一週間経ってないって聞いたよ?
ここまでできてるんだから凄い方だよ。」
「・・・・・・・。」
眼鏡はダンマリだが、チビが大男を落ち着かせる。
「き・・・貴様ら・・・・何者だ?」
「あたしからも聞きたいです。あんたたちは誰?」
俺と華が口をそろえて聞く。すぐに大男が口を開いた。
「おいおい!!先輩に向かってそれはないんじゃねぇ?!?
“スパーダ”って聞いたことあるだろぉ!?」
「悪いが、俺は聞いたことねぇな・・・・。」
修行漬けの五日だったからな。説明受けたのは組織のことだけだ。
他のチームのことなんざ聞いちゃいねぇ。
「す・・・・スパーダって言った!?」
華が驚きの声を上げる。
「し・・・知ってんのか?」
「その声は“雷撃の華”か!?
じゃあ、そっちに転がってるのは“時の星南”か!!」
「え!?じゃあ、あの二人は“天空龍の星華”!?」
「・・・・今は三叉の槍の一員!
ウサっち、スパーダってのはね、世界屈指の日本有数チーム。
その攻撃能力の高さから、嵐の神“スサノオ”の称号を持ってるんだよ。」
・・・・・・・・・・へぇ。そんな称号もあるのか。
で、そんなお偉いさんが何しに来た?
こんな任務、さぞかし退屈でしょうに。
「クルエルさんの命令で来たんだ。
いきなり通信が途切れたもんだから救援に行ってくれってね。
怪我人もいるようだからもう行くよ。
ハル、お願いね。」
チビが眼鏡を呼んだ。
パタン
眼鏡は読んでいた本を閉じ、トコトコと歩いてきた。
「・・・・じゃあ、みんな集まって・・・。」
眼鏡はボソッと言い、みんなが眼鏡を中心に、円を描くように集まった。
まだ気を失っている星南は華に、
怪我で動けない俺はあの大男に肩を貸してもらっていた。
「・・・じゃあ、行くよ・・・。」
眼鏡はしゃがみ、地面に手をかざした。
―――――――ボシュッ!!!!!
俺たちの周りの地面がめくれ上がり、俺たちを包み込んだ。
ぎゅううううううう・・・・・・ポン!
地面は俺たちをぎゅうっと握り込んだ。
・・・と思ったら、乾いた音がして俺たちは別の場所に飛んでいた。
「やあ、お帰りなさい♪
三叉の槍、スパーダの皆さん、お疲れ様でした。」
―――聞き慣れた声だ。
俺らの目の前にはクルエルと三人の組織員が深々とお辞儀をして立っていた。
「ったくよお!!こんな退屈な任務、あんたの命令じゃなかったら行かなかったぜ!!」
「それでも行って下さったじゃあないですか♪感謝していますよ。」
「総統!!」
「華さん、すみませんでした。まさか、あんなものが居るとは思っても見ませんでした。
それにあなたがたなら、と思っていたのですが・・・・。」
「あたしなら大丈夫ですから、星南とウサっちをお願いします。」
「了解しました。」
華の懇願で、俺と星南は他の組織員に運ばれた。
「では総統、我々は行きますね。我々には別の任務もありますので。」
そう言って、スパーダの三人は行ってしまった。
スパーダが行ってから、クルエルが口を開いた。
「しくじったようですね。腕が鈍りましたか。」
「・・・・・・すみません。」
華は半分泣きそうになってしまった。
「あたし・・・・・・。」
そこで言葉は詰まってしまった。
「今のあなたは、あの三人の中では最も劣ります。
発展途上で、安定していない。得意としている“飛雷”でさえ未完成な力だ。」
―――――わかってた。あたしが一番力になってないこと。
攻撃しかできない。その攻撃も通じなかった。昔はこんなじゃなかったのに。
――――――――悔しいっ
華の肩はフルフルと震えていた。眼からは涙が溢れてしまった。
それを見て、クルエルは思った。
(あなたの力はひどく未熟だ。今までの戦いで生き残れたのは才能と運だけです。
未熟な力は徐々に勢いを失い、いずれ消えていくでしょう。
実際にもう力は衰え始めてしまっている。
それを止めるには“進化”が必要だ。あなたにはそれだけの力がある。
私はそれを信じていますよ・・・・。)
その夜、クルエルと華が俺のところに謝ってきた。
任務であんなのが出てきたのは想定外だったようだ。
ま、とりあえず死ななかったからいいんだけどな。
とは言え、あの“スパーダ”ってのが来てくれなきゃ死んでただろうが。
怪我は命に別状はなく、特に後遺症もないそうだ。すぐに退院もできるらしい。
星南も気を失っているだけで、華も俺よりはよっぽど軽傷。
―――――――ふう。任務って結構大変だな。もっと強くならねぇと。
あ、そういえばスパーダについて聞くの忘れてた。
何があったかは知らないが、そのときに見た華は落ち込んでいるように見えた。
翌日。俺はまた訓練場にいた。
さて、今日は何をするか。星南は検査が長引いてまだ病院だしな。
がちゃ
クルエルと華が入ってきた。
「おはようございます♪もうすっかりいいようですねぇ。」
「ウサっち、おはよう!今日もやろうか?」
ってか、学校はどうした?今日は平日だが。
「今日は華いんのか。」
「もう夏休みだよーん♪
まあ、修行漬けの休みになりそうだけどね。」
そういや、もう夏か。高校落ちてから三ヶ月だな。
そう言った華の表情には決意が見えた。
―――――――んじゃ、全力でやろうか。
そんな覚悟が感じれた。その気迫は気持ちよかった。
「おもしれぇじゃん。」
俺は笑った。それを見て、華は少し不思議そうな顔をした。
「何がおもしろいの?」
「俺は華を超えていく。そのためにはお前が俺の上にいてくれなきゃなんねぇ。」
それを聞いて、クルエルはくすっと笑った。
華は少しムッとしてたが、すぐに笑った。
「そう簡単に超させると思わないでよ?」
「簡単に超えれちゃつまんねぇ。」
俺も華もニヤッと笑った。
せっかくこの組織に入ったんだ。退屈させるなよ。
クルエルでーす♪
次回、まだ任務は一回しかやってませんが、私から重大発表がありますよー。
皆さんには圧倒的な力を持っていた、あの“スパーダ”を超えていただきます。
なーに大丈夫ですよぉ♪
あなたたちの能力には、自分たちが思っているよりも伸びる余地があるんですよ・・・・。
次回『進化の覚悟』