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第3話

 『QPS-P04』の銃器は、全て“ナチスドイツ”の銃器となっております。

 因みに私は銃器が好きなだけで、ナチスの思想に賛成している分けではありません。

 悪魔のような蝙蝠のような翼を広げ、“変異種”と化した『不死人』が体当たりを掛けてくる。

 不意を突かれた的場薫は身を低くして体当たりをかわすと、振り向き様に『シュマイザー』のトリガーを弾こうとした。が、背後に着地していた『不死人』が裏拳を繰り出し『シュマイザー』を弾き飛ばした。

 武装を失った薫に、今度は鉤爪の様に鋭く尖った五指が振り下ろされる。とっさに左腕を突き出し、鉤爪より手前を受け止めた薫だが、何と『QPS』によって強化された腕力をものともせず『不死人』の鉤爪が顔面に振り下ろされた。


「ぐぅぅぅぅーーーー!」


 鉤爪は『エネルギーシールド』を僅かに突破し、左頬に傷を作り、更には薫の体を数メートル吹き飛ばした。薫は地面を転がった。


「『エネルギーシールド』破損、修復中、修復完了。ーーーー左腕及び左頬に損傷有り。大丈夫ですか、薫様?」


「大丈夫だけど、何て腕力に切断力だ…………」


 理性的な“変異種”は完全に薫の行動を読んでおり、更に驚異的な力で圧倒する。『QPS』による腕力の強化と『エネルギーシールド』のお陰で左腕の軽い打撲と左頬の軽い裂傷程度で済んだものの、直撃すれば命は無かっただろう。


「今のでその頭を引き裂いたつもりだったが、その不可視の防壁は想像以上に硬いようだな?」


 『不死人』は爪に付いた血を縦に割れる口から舌を出し舐め取る。


「しかし、完全では無いと見た。次は殺す」


 そう宣言するや、数メートル離れていた薫との距離を一瞬で縮め、薫の首筋を狙って鉤爪を振るう。薫は身を退く事でそれをかわした。

 掠めただけで『エネルギーシールド』に亀裂が入る程の威力。直撃していたならば、確実に死んでいただろう。


「良くかわす」


「死にたくは無いもんでね」


「良かろう。ならば殺してやる」


 そう言って『不死人』は両手の鉤爪を変幻自在に振るい襲い来る。

 薫は時にかわし、時に捌き、何とか致命傷を避けていた。ダメージも『エネルギーシールド』にしか無く、体はおろかロングコートも無傷である。が、それもいつまで持つか分からない。

 このままではいずれ追い詰められてしまうと悟った薫は、鉤爪をかわした瞬間に懐へ入り込むと、腹部へ徒手空拳を食らわせる。が、『QPS』によって強化された渾身のパンチは、思った程のダメージを与える事は出来なかった。

 次の瞬間、薫の腹部に強烈な回し蹴りが入り、またもや吹き飛ばされた。


「この野郎!」


 薫は地に伏した状態でヒップホルスターに納められた『QT-P08』自動拳銃を抜き放ち、『9×19mm対不死人弾』を撃ち放った。

 しかし、鉤爪に弾かれ有効打を得られなかった。


「戦闘可能時間、残り三分」


 ターナーの言葉が虚しく鼓膜を震わせる。

 残り三分でこの化け物を倒せというのは、不可能に近い。いや、最早、薫一人で倒す事さえ危うい。

 そうこうしている内に『P08』のマガジンに入っている弾薬が尽きた。それを見計らう様に、『不死人』は急速に薫との距離を詰め、まだ起き上がれていない薫の頭部に強烈な蹴りを食らわせた。瞬間、薫の体が宙を舞い、仰向けに倒れた。


「なかなか楽しめたぞ、政府の犬」


 『不死人』は薫の腹部を踏みつけると、勝利を確信したように言葉を吐いた。

 実際、もう勝負は着いている。

 『P08』は再装填が必要だし、『QPS』で強化した攻撃も通用しない。薫の負けは確定である。


「では、とどめだ」


 宣言するや、『不死人』は大きく右手の鉤爪を振り上げた。

 逃げ場は無い。

 最早、これまでかと諦める自分と、まだ負けるわけにはいかないと往生際の悪い自分が心中で衝突する。そして後者が勝った。

 薫は素早くベルトの左側に備えていた『高周波振動ナイフ』を抜き放ち、腹の上に乗っている『不死人』の太ももに突き刺した。『対不死人用素材』で作られたナイフは、小刻みに振動しながら深々と黒い皮膚を貫いて行く。


「がぁぁぁぁーーーー!」


 『不死人』が悲鳴を上げる。

 薫は構わずナイフを捻り、肉を引き裂いた。そしてナイフを引き抜くと、『不死人』は二三歩よろめいて薫から離れた。


「このクソガキがぁ!」


 この瞬間、『不死人(アンデッド)因子』を傷付けられた痛みと、薫の往生際の悪さに激昂した『不死人』は冷静さを欠いていた。

 先程までの様に冷静で理性的であれば、次の様な不意打ちを食らう事は無かっただろう。


「伏せて!」


 その叫び声と共に、バスローブ姿の女性が車の間から身を乗り出し、突撃銃を構え発砲した。

 矢継ぎ早に繰り出された弾丸は、全て『不死人』の背中に命中した。


「ぐぁぁぁぁーーーー! 貴様ぁ!」


「二等兵、これを」


 そう言って女性は薫が手放した『シュマイザー』を放り投げてくれた。

 薫は『シュマイザー』を受け取ると、度重なる攻撃に負傷した『不死人』を狙い、トリガーを弾いた。マガジン一本分の『9×19mm対不死人弾』が『不死人』の胴体に命中し、その黒く染まった体を蜂の巣の様に穴だらけにした。


「まさか、この私がーーーー」


 『不死人』は自身の敗北を信じられないまま、地面に倒れた。

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