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第2話

「3、2、1ーーーーTime Over」


 “超高速移動”システム『加速(アクセル)』の終了を告げる女性の電子ボイスが、的場薫の鼓膜を震わせる。

 間一髪、紙一重の差で間に合った。

 街一番の高層ホテルにて『不死人(アンデッド)』反応が検知されたという一報を受けた薫は、『QPS(Quantization Powered Suit)』と呼ばれるパワードスーツを身に纏い現場へ急行した。するとホテルの駐車場で銃撃が行われており、今、眼前に居る黒いスーツの『不死人』が女性を銃撃する様子が飛び込んで来たので、慌てて『加速(アクセル)』を使い『加速領域』に入り『不死人』と女性との間に割って入った。『不死人』の使う『ウージー』短機関銃から繰り出される『9×19mmパラベラム弾』を、ケブラー素材で出来て尚且つ『エネルギーシールド』を纏ったロングコートで受け止めたのだ。


「何だ、貴様?」


「大丈夫ですか!?」


 薫は『不死人』を無視して振り返り、バスローブ一枚というハレンチな姿をした女性に声を掛けた。

 濡れそぼった長い黒髪に切れ長の目をした女性は、唖然とした様子で「貴方、誰?」と問い掛けてきた。


「僕は『人類統一連邦政府日本軍』所属、的場薫二等兵です」


 薫は笑顔を浮かべ名乗った。

 この場合、怖がらせてはならないと思ったからだ。


「その格好は“ナチス親衛隊”のコスプレか? ふざけた野郎め」


 不意に『不死人』が声を発したかと思えば、「死ね!」と薫の頭部目掛け銃撃する。しかし、この『QPS-P04』と名付けられたパワードスーツの試作型4号機は、全身を隈無く『エネルギーシールド』でカバーしている。例え剥き出しの皮膚を狙い攻撃したとしても、必ず無効化してしまう。

 しかし、欠点もある。

 それは全身を覆うほどの『エネルギーシールド』を維持するには、莫大な電力が必要という点である。それを補うべく新たにバッテリーを開発、装着しているが、それでも連続して『エネルギーシールド』を展開し続けられるのは十分が良いところであった。更に悪いことに『エネルギーシールド』のエネルギーは『QPS』本体と共有している為、『QPS-P04』の戦闘可能時間は十分程度になってしまうのだ。

 逆に言えば、十分で戦闘を終わらせれば良いという事でもある。

 これはあくまで試作機である為、こんな実戦向けでない装備をしているが、量産型では廃止するらしい。


「銃弾が効かない?」


「ターナー、『シュマイザー』を頼む」


「了解しました、薫様」


 人工知能(AI)の女性が了承の言葉を返すと共に、薫の手中に光が収束し『QT-MP40“シュマイザー”』が出現する。

 これはナチスドイツが使用していた短機関銃を、『QPS』専用にリメイクした代物だ。

 薫は素早く構えると、腰だめの状態で発砲する。例え腰だめでもHUD(Head Up Display)にターゲッティングサイトが浮かび上がっているため、ある程度の正確な射撃が可能であった。

 しかし、『不死人』は驚異的な身体能力で、『シュマイザー』の『9×19mm対不死人弾』をかわした。


「何だコイツ!」


 薫は『不死人』の動きを先読みして銃撃する。が、まるで弾丸の軌道を読んでいるかのように『不死人』は弾丸を避け続ける。

 やがて三十二発入りマガジンを全て撃ち切り、弾切れを起こした。

 薫はマガジンを外すとストレージから新たなマガジンを出現させ、『シュマイザー』に装填する。


「薫様、『QPS-P04』の戦闘可能時間、残り五分を切りました」


「『加速(アクセル)』を使ったせいでエネルギーをごっそり持っていかれたのか?」


「はい、『加速(アクセル)』も後一度しか使えません」


「出来るだけ節約して行こう。必要の無いシステムは切ってくれて構わない」


「もう施行済みです。それでも五分が限度です」


「…………了解した」


 ターナーが的確に制限時間を示してくれる。

 正直、ここまで燃費が悪いとは思わなかった。やはり常時『エネルギーシールド』を展開し続けるのは非効率的なのであろう。


「何をぶつくさ言っている?」


 『不死人』は『ウージー』を放り捨てる。戦闘を止めて投降する、という分けでもあるまい。

 薫は『シュマイザー』のアイアンサイトを覗き込み、『アンデッド』を照準にとらえる。やはりターゲッティングサイトがあるとは言え、実際に照準器で狙った方がより正確である。

 薫が照準を合わせていると、『不死人』に異変が起こり始めた。


「銃弾が効かないならば、この方法を取らせて貰う」


 途端に、『不死人』の背中のスーツが破れ、悪魔のような翼が生えたかと思えば、顔面が黒く塗り潰され、その真ん中が割れ乱杭歯が生えた口が縦に開いた。変化はそれだけに止まらず、両手の指が鉤爪の様に鋭く尖り、肌が黒くなると毛細血管のような赤い筋が全身を蝕む様に走った。

 『不死人』の“変異種”である。

 しかし、不可解な事が一つある。“変異種”は普通、人間性が失われ破壊と殺戮の衝動だけで行動する化け物である。けど、この『不死人』はまるで変異した自分をコントロールしているようだ。


「来ます、薫様」


 ターナーの無機質な声が、思考の淵に沈み掛けていた薫の意識を現実に引き戻した。

 すると、蝙蝠男のように変化した『不死人』が体当たりを掛けてきていた。

 的場薫という名前は、私の好きな漫画から名字と名前を取って考えました。

 二人とも名ガンナーなんですよ。

 分かる人が居れば、凄いです。

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