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第16話

 二等兵の発言に、何かのプログラムが発動したのを感じた。同時に、琴乃の中の何かが壊れた。

 瞬間、千本木琴乃は自分のしていた事が、全て『エインヘリアルシステム』に操られてやった事だと理解した。

 『不死人(アンデッド)』の組織を殲滅した事も、『ハイヒューマン』を銃撃した事も、全て琴乃の意思とは無関係であり、『エインヘリアルシステム』が琴乃へ暗示を掛けてやらせていた事だと分かった。

 何という事をしでかしたのか。

 琴乃はただ、『QPS』を身を守る道具として扱う筈だったのに、システムに操られて『不死人』どころか人間も『ハイヒューマン』も関係無く殺してしまっていたとは。

 こんな筈では無かった、という後悔が琴乃を苛む。

 兎も角、このスーツ脱がなければならない。

 琴乃は『QPS端末』を操作してスーツを外そうとするが、体が金縛りにでもあったかのようにまるで動かなかった。四肢だけでなく、唇も声帯も動かない。


「流石は私を拒み、私の支配から逃れた兵士だ。全てお見通しと言うわけか」


 次の瞬間、琴乃の唇が、声帯が、琴乃の意思に反して動き始めた。

 声は琴乃の物だが、言葉は全くの別人の物だ。これはカレンの、『エインヘリアルシステム』の言葉だ。


「今すぐ彼女を解放しろ!」


「それは出来ない相談だ。この女はパーツとしては申し分無い。『アンデッド』や『ハイヒューマン』を倒すのにはな」


「お前の目的は何だ!?」


「目的? そんなものは決まっている。人間社会の安寧の為。私はその様にプログラミングされている。だから、その様に行動しているまで」


「人間を殺しておいて、何が人間社会の安寧の為だ! お前は破綻している!」


「『アンデッド』に協力する人間は殺さなければならない。力に溺れた『ハイヒューマン』を生かしては置けない。ただそれだけだ」


「大多数を助ける為に少数を犠牲にする、か」


「その通り。私は何も間違っては居ない。私は、人間を守るヒーローなのだ」


「馬鹿が! その天秤の掛け方では、やがて助けた人数よりも犠牲者の方が多くなる! 機械では人間は救えない!」


「お前がそれを言うのか? 『QPS』という力を得て、ただ軍からの命令に従って『アンデッド』を殺していたお前が。私とお前は何が違う? 命令に、プログラムに忠実に行動する私とお前に、何の違いがある?」


「違うさ、全くね。僕は自分の正義を定義して戦うが、お前のそれは所詮、借り物の紛い物だ。偽善って言うんだよ」


「フッ、私達はどうあっても分かり合えないようだな?」


「その様だな」


 不味い、と琴乃は焦る。

 『QPS』が戦闘モードに移行した。

 このままでは二等兵が殺されてしまう。

 琴乃は自らの能力を全力で振り絞り、何とか『エインヘリアルシステム』から自分の体を取り戻そうと試みる。


「あ……に…………」


「千本木さん?」


「……に…………逃げて! 二等兵!」


 自分の能力をフル活用しても、唇の制御を取り戻す程度しか出来なかった。

 次の瞬間には、体が勝手に動き出し、二等兵に殴り掛かろうとしていた。

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