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第75話「ポンコツ」

決勝戦延長前半、スタート。

「冬馬」


俺はゴールラインの外であおむけになっているエースに、すっと手を差し伸べた。後ろにはみんなもいる。

冬馬はゆっくりと上半身を起こし、俺の手を握って「ほっ!」と気合を入れて立ち上がった。


「冬馬先輩!僕、感動しました!すごいゴールです!」

「80分チンタラしてても、やるときゃやるんだよな、おめーは」

「俺の必殺シュートほどじゃないけど、まあまあだったな」


みんなが口々にに冬馬の同点ゴールをたたえる。

「……冬馬、どうした?」

小さなエースは何も答えず、ただまっすぐ一点を見つめている。何か考え込むように。

「まだ勝ったわけじゃねえ。延長がある。それにFWとして、こんなギリギリになるまで仕事しねえようじゃダメだ」

言って、一人スタスタとベンチに戻っていく。

みんなが顔を見合わせて、


「ああいうところ、ブレないですね」

「いつも通りだな」

「そっけねえ野郎だぜ」


と言い合っている。


その中で一人、背中を見送りながら芦尾がつぶやく。

「あいつもしかして……」

「もしかして、何だ?」

「照れてるのかも」

そんなわけあるか。


ベンチに戻る。


夏希がみんなにタオルやドリンクを渡していく。こばっちはすでに目を真っ赤にしてしゃくりあげていて、銀次に頭をくしゃくしゃにされている。こいつらはもう人目も気にせずイチャつくようになっている。人のこと言えない気もするけど、何か腹立つ。


「えいっ」

「わっ」


俺の頭にタオルがかぶせられる。慌てて取ると、夏希が俺を見て笑っていた。

「お疲れ。やっと仕事したね、キャプテン」

「評価が辛いな。直登のゴールも、俺のコーナーキックがアシストだぞ」

「うん。でも今のは、未散じゃなきゃ上げられないボ-ルだったし」

「半分以上冬馬のおかげだよ」


俺は横を向いてドリンクをあおった。


謙遜じゃない。事実だ。


俺としては、もう少し手前に落ちるつもりで逆サイド目がけてクロスを上げたのだ。でも急に詰めてきた倉石のプレッシャーに負けて、予定より早いタイミングで蹴らざるを得なくなり、結果逆サイドのゴールラインギリギリまで追い風に流されてしまった。

あのきわどい角度のボレーは冬馬じゃなきゃ決められなかっただろう。


「銀次君も、よくあそこでパスに切り替えたよね」

「そうだな」


銀次に「俺が谷を引き付けるから、お前が左から冬馬に上げろ」と言われた時はちょっと驚いた。

谷との勝負にこだわっているかと思ったからだ。

しかし銀次は「あれだけつっかかって行ってたら、まさか今さらパスとは思わねえだろう?」と笑っていた。ベンチからのこばっちのゲキがよほど効いたらしい。


「冬馬は?」


ふと周りを見回すと、うちのエースの姿がない。トイレか?

「あ」

冬馬はいた。ベンチからも、客席からも離れた場所で一人、両手を後ろについて座り込んでいた。

目はまっすぐフィールドを見つめている。


「あいつ、何であんなところにいるんだ?」

俺が言うと、

「呼んでくる」

と夏希が走り出した。

「ケンカすんなよー」

背中にかけた俺の言葉は届いただろうか。



私より背が六センチ低い、背番号9のエースストライカー。

ヤツはなぜか、みんなから離れた場所に一人きりで座り込んでいる。


私はゆっくりと近づいて声をかけた。

「冬馬」

返事はない。気にせず続ける。

「行こうよ、みんなのところ。一人でたそがれてないでさ」

「うるせえ」


カチン。


どうしてこの男はこういう物言いしかできないんだろう。紗良ちゃんとか有璃栖ちゃんには普通だったくせに。

やっぱり前に金原君が言ってた、

「冬馬は自分より身長の低い女には優しい傾向がある」

という説は本当なのかもしれない。絶対私にだけ態度が悪い。


でも私の方が精神年齢は大人のはずだ。怒っちゃいけない。

「一人だけこんなところにいたら不自然だし、延長戦に向けて気合が入らないでしょ?」

冬馬が前を向いたまま答える。

「うるせえっつってんだよ。あっち行けよ」

プチン。


「……あんたねえっ!人と話すんならこっち向きなさいよ!人が下手に出てるからってその態度は」

私は冬馬の右腕をつかんで思いっきり引っ張り上げた。

「いっ……つっ。離せっ!」

一瞬顔をしかめて、冬馬が私の手を振り払う。


今……確かに。


「冬馬、あんた」

「何だよ」

「どこか痛めたの?」

「……」

冬馬は答えない。ムスッとした顔で正面を見続けている。

「もしかして……首?」

私が聞くと、しばらく間を空けて冬馬はポツリと答えた。

「……首が回らねえ」

「いつ?」

「さっきボレー決めた時だ。体ひねったまま落っこちてな」

ラインギリギリのボレーを打った後、そのままの変な態勢で落ちたんだ。

「それ……みんなに言わなきゃ」

「だめだ。言うな」

「何がだめなの!一回戦のねん挫の時は、そのまま退場したからよかったけど、今日は延長戦出るんだよ!知らせなきゃだめじゃない!特に未散には」

「それがだめだって言ってるんだ!」

冬馬が声を荒らげる。私は口を閉じて、じっと冬馬を見つめた。


「最後なんだ」

「え」


聞き取れないくらい小さな声で、冬馬が言った。

「ユースにも上がれず、どこに行っても落とされて、もう、藤谷しかいねえんだ。俺にパスを出す10番は」


冬馬が……初めて弱音を吐いてる。

何で?私のこと、嫌いなんじゃ。


「そんなこと、ないよ」

それしか言えない。


「もしも藤谷に見切られたら」

言って、冬馬は地面に視線を落とした。


「俺はただの、ポンコツだ」


「冬馬……」

震えてる。

そうなんだ。突っ張っても、怒っても、口が悪くても、年は私と同じ、高校二年生なんだ。

未熟な私たちに気持ちの支えは必要で、それが揺らいだら不安になって当たり前。

それを支えるのも、マネージャーの仕事なんだ。


私は冬馬の横に腰を下ろした。

「何バカなこと言ってるの、あんたは。未散が言ってた。県大会優勝を目指そうと思ったのも、ずっと忘れてた勝ちたいって気持ちを思い出したのも、全部冬馬がいたからだって。あの戦術だって、最終的にはあんたにボールをつなぐためのものなんだから。そこまでの存在を、たかがケガぐらいで見切るわけないじゃない」

「……」

「だからほら、行くよ」

言って、勢いよく冬馬の手を取った。

「おい、離せよ!ガキじゃねえんだから!」

私は抵抗する冬馬の手をガッチリと握り、みんなの待つベンチへ引きずっていった。


「おいおい、チーマネさん。何仲良くお手々つないでるんすか?」

ベンチに行くと早速芦尾が冷やかしてくる。冬馬は無理やり私の手を振り払った。痛いな、もう。

「冬馬からみんなに報告することがあるんだって。ほら」

私は一歩下がり、背中をバンと叩いた。

「いっ……てーな。わかったよ」

みんなが注目する中、冬馬はふてくされたような顔で、首を手で押さえながら言った。


「……さっきのシュートで着地ミスって、首痛めた。回らねえ」


ベンチが静まり返る。

数秒後、最初に口を開いたのはキャプテンだった。

「すまん。やっぱり俺のクロスが流れすぎて、無理な体勢にさせたな」

銀次君が続く。

「いや、俺がもうちょっと中で粘ってたら、藤谷が深いとこまで行けたはずだ」

「違います!僕が倉石を離したのが悪いんです」

「倉石はあの段階から未散の動きを読んでたんだから、そこは仕方ない」


みんなであれこれ話し始める。誰も冬馬を責めたり、不安を口にする部員はいない。

そして最後には「やっぱりあのボレーはすごい」の一言に落ち着いていた。


「冬馬」

未散が言った。

「まっすぐ向いてシュート打つのは、平気か?」

「ああ」

「黒須、延長戦はタテに速くを意識して行こう。冬馬も、ラインから抜け出すというよりは、ゴールに背を向けてポストプレーみたいなのを多めにしてくれ。そっから体ごとゴールに振り替えればケガはバレないだろ」

「……」

「どうした?」

「何でもねえ。それでいい」

「芦尾は中盤で粘りながら、その必殺シュートという名の普通のミドルシュートを狙ってくれ」

「おい、バカにすんな!」

「あとはもう、後半と同じだ。三十分しかないから、相手に一点でも取られたら取り返す時間は無いに等しい。しっかり守っていこう」

みんなが「はい!」とか「おう!」とかバラバラに返事をする。


「ああ、もう、まとまらないなあ。キャプテン、また俺が声出しやっていいですか?」

伊崎君がやれやれといった顔で前に出る。

未散は笑って、

「おお、そうか。いっちょ気合入るヤツ頼む」

とみんなに円陣を組ませる。

「おーし、そんじゃあ俺に続いてくださーい」


『おお!』


「ライツィハー!」

『ライツィハー!』


「ファイアージンガー!」

『ファイアージンガー!』


「シュヴァインシュタイガー!」

『シュヴァインシュタイガー!』


意味は分からないけど、力の限り、精一杯叫んだ。

明日声が出なくなってもいい。私の声が、今日みんなの力になるなら。


観客席から拍手が上がった。

気合いみなぎる選手たちが、フィールドに元気よく飛び出していく。


「おい、広瀬」

サイドライン際で、冬馬が呼んだ。


……広瀬?


私は手にしたボトルを落っことして振り向いた。

「あんた今、初めて私の名前呼んだ」

「そんなことはどうでもいい」

冬馬はユニフォームのすそを引っ張って言った。

「お前が間違えて発注したんだよな、この赤いユニフォーム」

「何、今さら。蒸し返さないでよ」

何なの、いきなり。さっきの仕返しのつもり?

「あの時、色はどうでもいいって俺は言ったけどな」

「うん、言った」


「本当は恥ずかしかったんだぞ」


「え」

何それ。

「それだけだ」

「ちょっと」

どういうこと?


「どした?」

最後に出ていく未散が、私の顔を見て言った。

「あ、ううん。何でも。冬馬がわけのわかんないこと言って」

「ふーん」

言って、未散はなぜか私の右手をチラチラと見ている。

「手がどうかした?」

未散の目の前でひらひらさせてみる。

「いや、その」

目をそらし、あごをポリポリかきながら、未散は言った。

「さっき冬馬を連れてくるとき、何も人前で手までつながなくてもって思って」

「……」

しばらく言葉の意味を考えて、私はこみあげてくる笑いを必死にこらえた。

「何それ。やきもち?」

「そんなんじゃない。断じてちがう」

「しょーもないこと気にしてないで、集中集中」

未散の背中を叩き、急いでフィールドに向かせる。

バカだな、もう。こんな時に。



夏希に背中を叩かれてフィールドに飛び出る。

その時、反対側の春瀬ベンチから、怒鳴り声が聞こえた。


「誰にものを言ってるんだ!」


後半に見たのと同じ状況。立ち上がった三倉監督と倉石がにらみあっていた。周りのスタッフが必死に監督を押さえている。倉石の周りには4番の別府だけが立っている。


またケンカしてるのか、まったく。でもベンチでの不協和音はこちらに有利だ。いいぞ、もっとやれ。

それからしばらく監督の怒鳴り声が続き、そしてパタッとやんだ。


……おさまった?


春瀬ベンチを見ると、急に三倉監督が地面にガクンと両ひざをついた。

右手で胸を押さえて。


「え」


そばにいた春瀬の選手とスタッフが倒れこんだ監督を支える。春瀬の選手たちもフィールドからダッシュで戻っていく。観客席がざわつきだす。


俺の脳裏に病院の待合室で出会った三倉監督の顔が浮かぶ。そういえば監督が診察に行った科は「内科・循環器科」だった。

……心臓、悪かったのか。


三倉監督が倒れてからしばらくして、救急車のサイレンが聞こえてきた。小走りに駆け付けた救急隊が、テキパキと監督を担架に乗せて運んでいく。

主審からは「一度ベンチに戻ってもいいよ」と言われていたが、少しでも動き出しを良くするために待ち時間はボール回しにあてた。春瀬ベンチが気になって適当なパス回しになってしまったが、何もしないよりはマシだろう。


それから五分ほどたって、春瀬の選手たちがフィールドに戻ってきた。皆神妙な顔をしている。

明らかに動揺している選手もいる。

だが一人だけ、異質な表情をしている男がいた。


倉石だけが、口元に笑みを浮かべていた。


センターサークルに倉石と飯嶋が立つ。飯嶋は倉石と違って、救急車のサイレンが遠ざかる方を心配そうに見つめている。意外といいヤツかも。


笑ってた倉石は気持ち悪いけど、監督の退場がどんな影響を及ぼすかをコッソリ考えてる俺も結構薄情だ。プレーを誉めてくれた監督なのに。


延長前半開始のホイッスル。


泣いても笑っても、この三十分間がフィールドでプレーできる最後のチャンス。


キックオフからすぐに、春瀬は素早いパスワークを見せてきた。

さっきまでの、のらりくらりとかわすようなパスじゃない。確実にモト高ゴールへ迫ろうという意図を感じる。

そして何より、パスが速い。三倉監督が倒れていなくなったからか?つまりこれは、監督代行になったコーチの判断?


いや、ちがう。


『本物のフットボールを、君たちに見せてあげるよ』


初めて会った時、倉石はそう言った。きっとこのチームは倉石のチームだ。だからあの男は、監督が救急車で運ばれたとき笑ったんだ。

これで自分の好きなフットボールができるって。


延長前半四分。


倉石がセンターの別府に渡してゴール前に走り出した。別府はワントラップしてすぐに右サイドへロングパスを送る。

谷がものすごいスピードでボールを追う。銀次が後を追い、ちょうど谷の視界に入る位置で間合いを詰める。

谷は内へ切り返すような動きを見せて、その場でアーリークロスを上げた。


「ふんっ!」


島がクロス目がけて前に飛び出てくる。

いや、これは違う。ダメだ。


「島っ!出るなっ!」


俺が叫ぶより先に、クロスはクククッと急激に曲がり、島の鼻先をかすめて逆サイドの丸井のもとへ届く。

「ほっ!」

胸トラップした丸井がボールを地面に落とさずに、角度のないところから右足を振りぬいた。

いや、これもちがう!シュートじゃない!


ボールは巻き込むような軌道を描き、ちょうどゴール正面に上げられた。

走り込んだのは、倉石だった。


「うおおおっ!」


照井が詰めるより先に、ペナルティアーク付近から倉石がボレーシュートを放つ。島はまだ戻り切れていない。俺は叫んだ。


「直登おおおっ!」


ゴール左スミに向かう強烈なボレー。そこに直登が思い切り飛んでいた。

シュートは直登の頭に弾かれ、ゴールの後ろにそれて行った。

俺は芝の上に転がった直登に駆け寄る。


「直登、ナイスディフェンスだ」


俺は両手で幼なじみを引き起こす。

「目がチカチカするよ。あいつ、細いのにすごいパワーだ」

両目を何度もきつく閉じて、頭を振る。


俺は守備陣を見回して言った。

「たぶん延長戦は、ずっとこんな感じで攻められると思う。きついだろうけど、何とか守ってボール出してくれ」

「任せてください!キャプテン、この照井を信用してくださいよ」

照井が自分の胸をポンポン叩く。

「前半三失点のCBが何言ってやがる」

銀次が笑う。

みんなもつられて笑った。


延長前半十三分。


息が切れる。体が痛い。


倉石のボレーを直登が止めてからの十分間。勝ち越し点を取られていないのが奇跡に思えるほど、俺たちは攻め立てられていた。


右SBの谷、右MFの家下とセンターの別府、そして両翼の飯嶋と丸井。

そいつらがひっきりなしに速いパスを回し、スキを作っては怒涛の攻めを食らわせてくる。


少し下がってパスの出所を抑えようとしても、毒島が別府を絶妙な距離感でフォローしており、なかなかコースを押さえられない。

照井が、国分が、直登が、そして島が。

みんなが体を張って、歯を食いしばってゴール前でシュートをふせいでくれている。

チクショウ、やっぱりインターハイ王者は強いぜ。

一回、たった一回でいい。カウンターのチャンスが欲しい。


「ふんっ!」


飯嶋のシュートを島が横っ飛びで防ぎ、春瀬のコーナーキックになった。


今回は俺もゴール前に混ざる。守備で貢献できるわけでもないけど、何とかこぼれ球を拾えないかという切実な望みだ。


左のコーナーから家下がボールを上げる。直登がヘッドで弾き返す。落ちた先に、別府が待ち構えている。

やばい、フリーだ!俺が下がったせいだ!


「ふっ!」


ワンバウンドしたボールを別府が右足で蹴り込む。芝から少しだけ浮いた低く鋭いシュートがゴール左スミに向かう。


「ぐっ!」


国分がとっさに足を出す。

弾かれたボールがゴール前の丸井の背中に当たり、逆サイドのゴールに向かってバウンドする。ボールが転がる先には、誰もいない。


いかん!


俺は転がっていくボールに向かって走り出した。島もボールにダイビングしてくる。

そして真横から、人の気配がした。


「邪魔だ!」


それは鬼のような形相の倉石だった。

バウンドしたボールに向かって、俺と倉石は交錯しながらゴールへ滑り込む。


「ぬおおおおっ!」


倉石と押し合いながら、ゴールへなだれ込む。

ボールに最初に届いたのは、倉石だった。

俺がボールを見たのは、それが最後。


勢いに押された俺は、右のゴールポストに頭から突っ込んでいった。


ガチン。


目の前に火花が散るような、そんな衝撃とイヤな音。

脳みそがグラグラ揺さぶられる。まだ半乾きの芝の感触が背中に気色悪い。

と同時に、強烈な吐き気が襲ってきた。


ポストが濡れていたのか、それとも汗か。左目に何か液体が入ってくる。遠くで主審のホイッスルが聞こえる。


ああ、決められたんだ。四点目。まずいな。


「おい、藤谷!動くなよ!絶対動くなよ!」

銀次が大きな声で叫んでいる。

「主審!担架だ!血が出てる!」

血?俺はゆっくりと、自分の左目を手でおおった。

ヌルッ、というイヤな感触が手のひらに伝わる。

間違いなく血だ。でもどこから?

「藤谷!傷口触るな!額の上の方が切れてる!おい、担架まだか!」

銀次の怒鳴り声が耳にキンキン響く。声がでかい。


春瀬高校 4-3 本河津高校 得点 倉石


額にタオルを当てられて、俺の体が担架に乗せられる。

しばらく揺られてベンチに着いた。

「未散!」

俺の真上に、泣きそうな顔をした夏希の顔が逆さまに見えた。

最低だな、俺。


今日は好きな女の誕生日だってのに、こんな悲しい顔させて。


つづく

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