never mind
「今日、俺の人生が決まる…」そんなことを唐突にいったのは春馬だった。朝のホームルームが終わり時間にも少し今は余裕があるので、教室の所々から色々な会話がきこえてくるが、春馬のそれは他の言葉とは明らかに異なるものだった。
「え~?春馬っちどうしたの?今日何かあったっけ?」奏が答える。
「お前、わからない…の…か…?」驚いた様子で春馬が問う。
「うん、なにがあるの~?」何のことか検討がつかない奏は素直に春馬に聞いた。
「ふん、無知のお前に教えてやろう。今日は女子が家庭科の調理実習で"クッキー"を作る日だ!それに、その"クッキー"は持ち帰れて誰かに渡すことができる!!この意味がわかるか!!!」
「あー、クッキーが貰いたいだけね…」
「要約するとそうなるな…そして勝負はもう始まっている!調理実習は二時間目!つまり二時間目までに己をアピールしなければならない!」
「春馬っち~喋り方かわってない?それに、貰えない人はいるから気にしなくていいんだよ…?」奏が諭すようにいう。
「なんで貰えない前提なんだよ!スラ〇ダンクの安〇先生も"諦めたらそこで試合終了"っていってただろ!俺は諦めん!!」
そういうと、春馬は「お腹減ったな~甘い物食いたいな~」とクラスの女子に聞こえるようにいいながら廊下に出ていった。
奏は「春馬、クッキー貰えたらご飯おごってあげようかな~」と近くにいた友達ー高橋 豪にいった。
「奢る気ないだろ……」豪は呆れるように答えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「リア充爆発しろ…」そう呟いたのはほかでもない春馬だった。
「そういう時もあるよ~」
「クッキーをたくさん貰った貴方にはこういうことは一生わからないだろうね!!」
そういうと春馬は廊下に出ていく……
「春馬くん!」名前を呼ばれ振り向く。
そこには黒髪に制服が良く似合った女の子がたっていた。確か1組だったっけ…?しかし注目すべきはそこではない!
手には"クッキー"をもっている…!
「これ…」そういいながらクッキーを前に出す。
◇春馬の脳内◇
うぇっ!えぇぇぇぇぇ!っしゃあ!リア充りすぺくとぅぅ!ついに俺にもモテ期がぁぁ!!!
◇現実◇
しかし…女の子が言いはなったのは残酷な一言だった。
「奏君にわたしてほしいんだ!」
「いいよ…」
「ありがとう!」そういって女の子はクッキーを春馬に渡すと去っていった。
おおよその話を春馬から聞いた奏は可哀想なものを見る目で
「never mind」といった。
ちなみに春馬はその日一日中放心状態だった…。
モテない人って悲しい思いをする事が多いですよね…