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忌み子なぼっち王子様を手なずける方法  作者: 佐伯さん
第二章 王子様と共同生活始めました
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まずは着替えをゲットしましょう

「取り敢えず服の入手を最優先にしようか」


 物珍しそうにしているエド君の手を引きつつ、私達は町を歩く。

 特に注目された様子はないので、紛れられていると言って良いだろう。若干エド君に女性の視線が向いているけど、それはエド君が美形だからだろうな。


「……聞いているのかな?」

「ああ、聞いている。……ただ、慣れないから辺りを見ていただけだ」

「まあその気持ちは分からなくはないんだけど、あんまりきょろきょろしてるとおのぼりさんって思われて露店でぼったくられるから気を付けてね」


 多分隔離されてきたらしい彼には全部珍しいのだろう。逃げる道中はゆっくりと周囲を見る余裕もなかっただろうし。


 だから、今回は物見遊山とまではいかないものの、お外の世界でも見て貰おうかと思う。私的には家でごろごろしておきたいけど、流石に一人じゃないんだし。


 取り敢えず服を見繕うのと、食料を調達。それさえ目処が立てば多少見て回るくらい問題ないのだ。

 ……あんまり動き回られると、体力のない私にはきついから程々にして欲しいけど。


「まあ、私が居るから良いか。兎に角、まずは服ね。此方にあるからついてきて」

「……分かったから、手を握らなくても良いだろう。袖で充分だ」

「我が儘だね、もう。はいはいこれで良い?」


 未だに手を繋いでいる事が嫌らしい彼のご要望に応えるべく、仕方なく握る場所をローブの袖に変えてあげよう。

 高々手を繋いだぐらいでそこまで嫌がらなくても良いと思うんだよね。


 ちょこん、と摘まんで背の高い彼を見上げると、鼻を鳴らして顔ごと視線を逸らされた。何処までも反抗的である。


 ……まあ良いけど。これからゆっくりと慣れて貰えれば良いし。

 いざとなったら泣き落としでもして距離でも詰めてみようか、慌てそうでちょっと興味がある。


 仕方ないなあ、と納得して、私はなるべく此方を見ないようにする彼を引っ張って服を買うべく店に向かった。




 結局、店では着替え用に下着等含め三着くらい纏めて買う事になった。勿論チョイスは彼に任せている。私が選んでも仕方ないし。

 当面の着替えなので、ローテーションで使って貰おう。


 うん、この時点でちょっと重いなあと思うものの、まあ持つのは本人だから良しとしよう。


 エド君は私がお金を払う事に抵抗を感じているようだけど、無一文の君が払える訳がないので私が買うに決まってる。


「まあこれで衣食住の衣は良しとして、あとはちょっと食料を買い込んでー」

「一つ聞いても良いか」

「何?」

「……何故俺に此処までする」


 何故、か。

 そんなの、拾ったから、としか言えないんだけどな。責任は取るべきだし。

 境遇に同情したっていうのもある。私に師匠から手が差しのべられたのだから、彼にも差しのべられて然るべきだと思った。


 私は、基本的に理由なくして人助けはしない。正当な対価があればこそ、力を貸す。

 良心ってものはそれなりにはあるのだけど、人より薄い。

 それはまあ過去の事もあって基準が曖昧になってるっていうのもあるのだけど。


 ……でも、エド君に関しては、ちょっと特別なのかもしれない。私と、同じような存在として。


「大丈夫、その内体で支払って貰うから」

「はあっ!?」

「え? 流石に住むなら家の事くらいして貰わなきゃ……何、まさかお手伝いすらしてくれないの?」


 流石にそこまで甘やかす訳にはいかないんだけど、とフリーズしているエド君に不服も露にすると、エド君は「そういう意味か」と何故か安堵していた。


 逆にどういうつもりがあると思っていたのか。まさか実験させろとか言われるとでも思っていたのだろうか。


 何を想像したのか、と問い掛ければ「うるさい」としか返ってこない。

 エド君にとってのうるさいというのは拒絶の意なので、これ以上は踏み込むな、という事なのだ。気になるものの、引き下がっておこう。


 はいはい、と流す事にして、私は彼を引っ張って場所移動する。


 お次は何処に行こうかな、っと。

 食料を買いに行っても良いけどかさばる事間違いなしなんだよね。ちょっとうろつくなら手荷物は少ないに越した事はないのだけど。


「何か食べたいものとかある?」

「お前の薬草茶以外だ」

「無理矢理飲ませた事根に持ってるね。仕方ないじゃない、怪我してたんだもの」


 どうやら昨日の夜に出した薬草茶(普段私が飲んでるものを希釈したもの)が大層お気に召さなかったらしい。原液で飲んでる私は何だというのか。濃く入れてる私がおかしいのか。


 早く治すには飲むのが手っ取り早いから出したのに渋るし……まあ飲んだけど暫く渋い顔が直らなくて、ずっと睨まれてる感じだった。というか実際睨まれたよ。


 でも飲んで貰わないと困るんだよね。

 ……あれ、色々なものの循環を整える作用のもの出したから。体に淀む、魔力とかね。


「まあ頑張ってお茶は飲みたまえ。そうじゃなくて、ご飯は何が食べたいかって聞いてるの」

「……何でも良い」

「その何でも良いが困るんだよエド君。私一人だったら殆ど代わり映えしない食生活になるもの。……まあ適当に材料買い込んで有り合わせで作るけども」


 エド君が食べたいものとかは言わないので、献立は私が全部考えなければならないらしい。

 いや今までと変わらないんだけど、なんというか、作り甲斐がない子だなエド君。文句を言われるよりはマシなんだろうけども。


 というかまあ、エド君的には美味しくないかもね。王宮で出ていた料理とは雲泥の差だろうし。

 まあ自分でも思うんだけど、私そこそこに食べられたら良いので美味しさは然程追究しないもの。


「あれ、リア様?」


 困ったなあ、と溜め息をついた瞬間、聞き覚えのある声。


 視線を移すと、緩い波を描く赤毛を揺らしたエプロン姿の少女が立っていた。

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