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忌み子なぼっち王子様を手なずける方法  作者: 佐伯さん
第六章 さようなら、王子様
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王子様の甘え

「エド君、気がかりな事でもあった?」


 アレクが帰った後、私は口を閉ざしがちだったエド君に声をかける事にした。


 エド君があまり口を挟まなかったのは、恐らくエド君がどうしようもない範囲で事が進んでいる、というのがあるのだろう。当事者なのに解決させる事が出来ないのはもどかしいと思う。

 それに、エド君としてはフィデリオには亡くなって欲しくない訳で、謀殺の危険性を考えたら明るくなれる筈がない。

 ……あと、最後に……エド君は諦めたような瞳はしていない。何か考えていたようにも思える。解決策を脳内で模索していたのだろう。


 まあ全部私の推測なので、本人に聞くのが一番早いだろうから聞くのだけど。


「……父上を助ける方法を考えていた」

「思い付いた?」

「……思い付いたら苦労しないがな。俺は、正直王政なんかには詳しくないし、遠ざけられていたから」


 ちゃんと完全に教育の施されたアレクとは違って、エド君は政務に関わらないからそういったものはされていないのだろう。基礎的な教育はされてる、らしいけど。

 あと本人曰くある程度は本があったから読んで覚えたてらしい。


 だから、その辺り詳しくないのは理解してるし、アレクの方が向いているというのも、理解している。エド君もそれは承知しているだろう。

 その上で、何も出来ないもどかしさがあるに違いない。


「……俺にもっと力があれば早いんだけどな」

「エド君には力があるとは思うけどな。アドルフィーネの血を引いた魔女だからね? それに、私が居るもの。エド君が望むなら、私はエド君の剣にでも盾にでもなるよ」

「それ俺が言う台詞だろう」

「だって、エド君より私の方が強いんだもん」


 事実なのだけど、指摘されるのは面白くないらしく若干拗ねた風に瞳を細めているエド君。

 そういった顔は可愛いよねエド君。……でも良かった、こういう冗談で気が多少でも晴れたなら。


「私は前にエド君を頼ったから、今度はエド君が私を頼るべきだよ。どーんと甘えてくれていいよ?」

「お前に甘えてると、どんどん甘えるのが癖になる」

「癖になっても程々のところで背中を叩いてあげる」


 そうしたらエド君は自分で立ち上がるでしょう? と笑うと、軽く目を丸くした後にほどけるような笑みに。

 それもそうだな、と何処か晴れやかに笑って、エド君は私の背中に手を回した。おお、甘えるという意思表示みたいだ。


 ふふー、と笑ってぎゅうっと抱き締め返すと、エド君は残っていた強張りをとかして、喉を鳴らして私の肩に顔を埋めた。

 よしよし、と撫でて思う存分甘えさせるのだけど、暫くしたら顔を赤らめたエド君が此方を窺ってくるのだ。


「……リア」

「何?」

「お前って幼いんだか包容力があるんだか分からないな」

「む、馬鹿にされた気分。同い年なんだってば」

「知ってるよ」


  くすくす、と笑ったエド君。分かってなさそうな気もする。仕方ないじゃない、体は成人手前なんだもん。私だって成長したいけどどうにもならないし。


 魔女の体は全盛期に保たれる、なんていうけど成人手前は全盛期じゃないし。……本当に必要となったら成長する、とも聞くけど、今のところ成長の気配はない。

 困った事もそうないから良いのだけど、子供扱いは御免なのだ。


 エド君は多分今の姿で成長が止まるだろうから、ちょっぴりうらやましい。


「……いつかエド君が見惚れるくらいの美女になるもん」

「はいはい。今でも見惚れるから無茶はするなよ」


 エド君がさらりと褒めてくれたので、唇を尖らせたまま頬に口づけておいた。

 エド君が真っ赤になったのでしてやったりと笑ったら反撃されたので、そういう所はエド君可愛くないとこれみよがしに拗ねてやったら、エド君が宥めるように頭を撫でてくれた。……子供じゃないもん。

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