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忌み子なぼっち王子様を手なずける方法  作者: 佐伯さん
第二章 王子様と共同生活始めました
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不法侵入はよくないです

 思わず大きな音を立ててドアを閉めてしまった。気まずい沈黙が私とエド君の間に訪れる。

 

 うん、エド君の言いたい事は分かるし視線でも感じる。あいつ誰だって聞きたいんだよね、うんよく分かる。

 私も驚いてるしいやもう何で此処に居やがるんですかねって感じだよ。


 おかしい、居る筈がないというか、何で来たんだ。用事は暫くなかった筈だし、あれ程事前連絡なしに来るなと言った筈なのに。


「あれ、不法侵入では」

「……不法侵入といえば、不法侵入だね。でも鍵与えたからなあ……あああやっぱり鍵渡さなければ良かったよ本当に……」


 うん、不法侵入と言えば不法侵入なんだけど……なんというか、鍵を持っているんだよね。例の、繋がる扉の。

 今鍵与えたの後悔してるよほんと。


 エド君が意味の分からないって顔してるけど私にも昔の自分の考えが意味分からないよ。


 けど、仕方ない。このままだと家に入れないから、仕方なく開けよう。うん、警戒しながら。


 すーはー、と深呼吸をしながら、ゆっくり扉を開けて――。


「何で今閉めたのかな、傷付くよ僕でも」


 開けた瞬間を狙って抱き締められた。


「いやああああああ離してええええええ」

「相変わらずリアは子供っぽくて愛らしいなあ。全然成長してないよね」


 だから嫌だったのだ、彼に出くわすのは! スキンシップ魔だし体触るし! あと然り気無く体型侮辱してくるし!

 私の悲鳴も気にせずまさぐってくるのでぞわぞわとした感覚を覚え、「にゃぎゃああああ」と声を上げてしまう。この変態め……っ!


「リア、女の子ならもうちょっと可愛い悲鳴を上げようか」

「そっちは紳士なら変態行為は止めてよ! 離してってば!」


 どう考えても非はそっちにあるので、私は全力で抵抗する。

 腕の中で暴れてお腹も殴るけど、全く効いた気配がない。……魔法使わなければ非力なのは自覚してるけど!


 けどどうやら今回は程々で離してくれるらしく、パッと抱擁を解いてくれたので逃げる為にも全力でエド君の所に戻ってエド君に抱き付いておく。


 エド君が「おいこら!?」と動揺の声を上げているけど今は許して欲しい。エド君の方が何倍も良いというか、彼は毎回手付きがいやらしいのだ。ぞわっとする。


 次から見かけた瞬間にエド君に抱き付いておこう。

 そうしたら向こうも抱き付けない筈だ。そんな趣味はないだろうし。


「お、おい、はなせばか」

「ごめん今だけ、今だけは……!」


 変態の魔の手から逃れるにはこうするしかないのだ。その為にはエド君の羞恥が露になるのも辞さないのだ。

 むぎゅ、と抱き付きながら顔だけ後方に向けると、彼は今気付いたかのようにエド君に視線を……しまった!


「おや、彼は?」


 ……最悪だ。


 興味を持たれたとか、そういう問題じゃない。

 色を変えてない姿を見られたのが、駄目だ。何故ならば、彼は。


「う。……居候」

「へえ、居候。僕以外の男を連れ込むなんて」

「あなたは連れ込んでるんじゃなくて勝手に入ったんでしょう!」

「僕とリアの仲じゃないか。まあ良いとして。……リア、おいで?」


 笑顔で手招きされて、今回ばかりは逆らえない。


 ゆっくりとエド君の体から離れて、とても気が進まないけど彼の元に。

 引き寄せられても、抵抗はしない。……今優勢なのは、彼だから。


 そうっと耳元に唇を寄せられてぞわっと背筋が震える。そんな私に彼はまた笑った。


「リア、拾い物は選ばなきゃ駄目だよ? そこの彼、シャハトの第三王子でしょ。特徴が一致してるし」


 ――やっぱりばれたか。

 伝わっていない筈がないのだ、庶民にはともかく、上に立つ人間なら。


 唇を噛むと、変わらない微笑みを浮かべて、また小さな声で囁く。


「彼は死罪を言い渡された、そうこっちには伝わってるんだけどな。匿ってあげてるんだね。優しい事は良いけど、見つかったら大事だね」

「……アレク。トーレスの基本方針は魔女に不干渉だね? 文句言われる筋合いはないと思うのだけど」

「おや、シャハトに知れればどうなるか分かってるだろうに」

「アレクが言わなければ良い。あなたさえ黙ればどうにでもなる」


 シャハトは、どうしてもエド君を亡き者にしたいらしい。

 でも、何故そこまでして抹消したいのかが分からない。それもエド君が大人になってから。


 まあそれはまたエド君とアレクからそれぞれ話を聞けたら御の字。特にエド君なんて話したがらないだろうし。


 そんな事は極論どうでもよくて、私はエド君の身の安全が確保出来ればそれで良いのだ。

 だから、私は出来得る限りの事をしよう。あまり、脅しとか得意ではないのだけど。


「分かってるでしょう、そっちこそ。薬がないと困るのはあなたの方だ」

「そう来たか。……まあ困るけどさ」

「薬だけじゃないよ。……分かるよね? 私は、温厚なつもりだけど、魔女だよ?」


 私は、脅すとか、苦手だ。でもやらなきゃ守れない事があるのも知ってる。


 あと、一つ言うと……私は常識というものより、自分の感情の赴くままに選ぶ。魔女なら皆そうだ。価値観を全て人間と一緒に捉えられても困る。


 私は……自分のものにちょっかいを出される事程気に食わない事はないんだからね?


「アレク。――シャハト第三王子は依然として生死不明。トーレス側では何も情報は得ていない。それで良いよね?」

「分かった分かった、内緒にしとくよ。リアに嫌われたくないし、魔女を敵に回したなんて父上に知れたら、地位の低くてか弱い僕は殺されちゃうから」


 微笑みを浮かべて問い掛けると、わざとらしく肩を竦めて私から手を離すアレク。


 無抵抗ですよ、という意思表示なのかひらひらと手を振っているアレクに、私は全くもうと思いつつもエド君の元に。

 流石にもう抱き付きはしないけど。


 エド君はやり取りが聞こえていなかったらしくて何故かとても眉が寄っている。自分の事を何か言われていた、というのは察しているのだろう。


「……誰だ、そいつは」

「彼は……あー……えっと……何と言えば良いのか。ボンボン?」

「……は?」


 私から説明をして良いのか、と視線でアレクに問うと、意味が分かったらしくて「自己紹介がまだだったね」とエド君に向き直る。


「アレクシス=フィル=トーレス。この国の第四王子だ。初めまして、シャハトの第三王子」


 何もかも察してしまった厄介者の彼は、それはそれはむかつく程綺麗に微笑んだ。

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