11話
スイレン山に生息するモンスターは主にフレアリザードマンやレッドオーガ、最も多いのがボムロックという岩石系のモンスターだ。
ドラ〇エで言う所のば〇だん岩とよく似ているが、ボムロックは自ら移動出来ず周囲の岩に擬態することで敵を待ち構えるモンスターである。
近づいた敵に爆裂系のスキルを使ってくるため、索敵スキルのない冒険者にはかなりの難敵と言えるだろう。
そんなボムロックに優人達は悪戦苦闘していた───主にナナのせいで。
「ゆ、ユートもう動いていい?」
「まだだ………これで全部だな」
索敵スキルでナナの周囲にいる擬態したボムロックを見つけ、爆裂攻撃を食らわないように氷系魔法でまとめて氷砕する。
少々手間だが無害で進むにはこの手段を取るしかないのだ。
「ナナ、もう動いていいぞ。
─────ったく、だから勝手に動き回るなって言ったのに」
「だって、こんなところにいると思わなかったんだもん………」
「擬態出来る、からどこにでも、いる」
「そうだぞ、油断は禁物だからな」
「ご、ごめん………。
─────あっ、あそこに座りやすそうな岩があるよ!!
結構歩いたし、あそこで休憩しようよ!!」
「あ、おいナナ待て!!それは───」
ナナが自分たちとほぼ同じサイズの岩目掛けて走る、とその岩がくるりと180度向きを変え、その凶暴な顔を露にする。
「え、こ、これもボムロック………」
「だから勝手に動くなって!!
ああもう!!『アイスシリンダー』」
咄嗟にLv7魔法・アイスシリンダーを唱え、ボムロックを氷の柱で包み込み氷砕する。
目の前の岩がモンスターだったショックで尻餅をついていたナナを優人は引っ張り上げ、ため息交じりに言葉を発する。
「ナナ、ついさっき注意したばっかりだろ………」
「うぅ、ごめん………」
「ちゃんと、反省する」
「い、イリスちゃん~」
「はぁ、まあこの辺りにはもうモンスターもいなさそうだし、そこの岩場で休憩しよう」
「………モンスターじゃない、よね?」
「お前と一緒にするな、索敵使ってるんだから安心しろ」
「そ、そうだよねあはは………」
「全く」と呟きながらも優人はナナとイリスを連れて岩場で休憩を取るのだった。
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「わぁ~、ここが洞窟かぁ~」
休憩を終えた優人達は山道をどんどん進み、ついに目的であるスイレン石を多く採掘できる洞窟までたどり着いた。
洞窟内は優人達の想像以上に広く、水晶のように青く光る石、木陰に自生する苔のような色をした結晶、まるで人の生き血を啜ったかのように怪しくも赤い輝きを放つ石の欠片など、岩壁から様々な種類の鉱物が顔を出し、まるで採掘されるのを待っているかの様だった。
「師匠、ここも調べてた?」
「いや、ここはセシリアさんに教えてもらったんだ」
昨日馬車で出発する際に見送りに来ていたセシリアから、採掘方法とオススメの採掘スポットを聞いていた。
その情報を頼りに優人はここに来ていたのだ。
「そういえばさ、結局どうやって採掘するの?」
「ああ、言って無かったな。コレを使うんだよ」
そういって優人が収納から取り出したのは、白い袋と判子の様なもののセットが3組。
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名称:採掘セット
レア度:SR
説明:岩壁の中から鉱石だけを取り出したりするために使う道具。
判子と袋がセットになっており、袋には収納と似たスキルが施されている。
使い方は判子と袋に自分の体液(唾液、血液等)を染み込ませることで2つをリンクさせる。
そして入手したい鉱物に判子を押すと袋の中に自動で収納され、鉱物があった場所には同じ大きさの石が出現する。
鉱物を取り出すときは袋を逆さにするか、袋に手を入れて取り出したい鉱物を念じる。
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優人はとりあえず、アイテムの説明に書かれている事をそのまま2人に話し、1セットずつ渡す。
「とりあえず片っ端から鉱物を採掘してくれ。
後でスイレン石と他のを分ければいいから」
「うん分かった!!ナナ頑張るよ!!」
「私も、頑張る」
「索敵したら近くに敵の反応はなかったし、灯りはこのランタンを使ってくれ」
そう言って、収納から出したランタンも渡す。
「師匠、鉱石を収納に、入れた方が、楽じゃない?」
「あー、収納は落ちてる鉱物には使えるけど、壁に埋まってるのには使えないんだよ。
多分ぽっかり穴が開いたせいで壁が崩れたりするのを防いでるんだと思う」
「へえー、収納ってそういうのを判断できるんだー」
「あくまで仮説だけどな。
よし、そろそろ依頼を始めようか」
次回投稿は4/8(土)13:00予定です。
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