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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
93/180

9話




「あぁ、今になって自分が恥ずかしい………」



タオル一枚で露天風呂に浸かっていたナナがはぁ、と深くため息をつく。



「まあ、師匠も悪いから」



ずり落ちそうなタオルを左手で押さえながら、イリスが答える。



「って元はと言えばイリスちゃんが悪いんだからね!?」


「反省はしている、けど後悔は、していない」


「イリスちゃん!?」


「まあまあ」


「全くもう、イリスちゃんったら。

ナナの事応援してくれないの?」



タオルで押さえつけられながらも湯に浮かぶ双丘の下で腕組みし、ナナが「もうっ」と口を尖らせる。



「大丈夫、策はある」


「策?どんなどんな?」


「耳貸して。───────────」




その夜、ある旅館のある個室露天温泉では怪しげな密約が交わされるのだった。




















───────────────────────





「ふぅ………、酷い目にあった」



イリスが露天風呂に入ることをナナに勧めてくれたおかげで解放された優人は、一人布団を敷いていた。



(しかし、ナナってマジ切れしたらあんなに怖いんだな………

心に深く刻み付けておこう)



ナナが聞けばまた怒られそうなことを思いながら、黙々と作業を続けていく。



(結局、ほとんど夕食食べれなかったし、土産物店で何か買っておくかな。

っと、これで最後かな)



敷き終えた優人は書置きを残し、部屋の鍵を持ったのを確認してから部屋を出て行った。


















廊下を歩き、階段を下りていると途中でシーツを持った受付とすれ違う。



「あっ、お客様。先程は災難でしたね」


「見てたのか。本当に災難だったよ………

受付さんも忙しそうだな」


「まあ、お仕事ですから。それと───」



受付は自分の胸元にある小さめのプレートを軽くつまみ、微笑む。



「私の事はアキと呼んでもらって構いませんよ、お客様。

『受付さん』では少し寂しいですから」


「そうか、じゃあそう呼ぶことにする。

───っと、早く行かないと土産物店が閉まっちゃうな」


「そうですね。ではまた」


「ああ」



アキと別れた後、土産物店に着くとほとんど人が居なかったのでスムーズに買い物が出来た。




(2人共もうそろそろ風呂から上がってるかな)



そう思いながら部屋の前まで戻って来、鍵を開ける。



「悪い、買い物に出掛けてて遅く────」



───チャリィィィィィン。



鍵を、落とした。

その事にすら気付いていない優人の目線の先にいたのは、ナナだ。



「あっ、ユートお帰り!!

温泉気持ちよかったよー………ってどうしたの?」


「お前、その恰好………」


「ああこれ?更衣室の所に掛けてあったから着てみたんだ!!

………似合ってる?」



手を前に組んでもじもじするナナ。

しかし優人が気にしているのはそこではない。



「お前、それ”子供用”だろ………」



そう、明らかにサイズが合っていない。

胸のあたりは谷間が強調されるように大胆に開き、裾は膝上ぐらいにまで短かった。


どこからどう見ても男を誘っているようにしか見えないその恰好に、ナナは気付いていないのだ。



「ええっ!?

どうりで小さいと思ったんだぁ」


「着る前に気付くだろ、普通………」


「だって!!

………これを着たらユートと仲直り出来るって」

 


(ナナ、さっきの事気にしてたんだな………)



目の前でシュンとするナナを見て、優人はほんの少し優しい気持ちになる。

それと同時に違和感を感じる。



「ごめんね、ユート。

ナナもあんなに怒るつもりじゃなかったんだけど」


「いや、あれはまあ、俺も悪かったしな。

ナナが落ち込む必要はないと思うぞ」



優人は優しい手つきで頭を撫でてやる。

ナナは最初自分のされていることに驚いていたが、次第にその心地よさに身を委ねていた。


頭を撫でながら優人はさっきの違和感が何か考えていると、その答えは意外にもすぐ出た。



「なあ、それ誰に着ろって言われた?」


「え?イリスちゃんだけど」



ナナがそう答えた直後、更衣室からガサッと音がする。



「………イリス。何がしたかったんだ?」


「策、失敗に終わった」



そこから子供サイズの浴衣を着たイリスが現れた。

右手には櫛があることから、まだ髪のセットが終わっていなかったらしい。



「で?何でナナに噓を教えたんだよ」


「エロかった、から。

ナナに欲情した、師匠が襲えば、万事解決」


「えっ!?イリスちゃんそれどういう事!?」


「……ナナにも説明してなかったのかよ」


「でも、エロかった、でしょ?」


「ちょっ、イリスちゃん!?」


「まあ、確かに反則級ではあったな」


「ユートも真面目に答えないでっ!!」



「嫌あぁぁぁぁぁっ!!」とその場にへたり込むナナ。

それによって胸が上下に揺れる。言うなれば「プルンッ」っとだ。



「……反則」



イリスは両手を胸に当て、はぁとため息をつく。



「と、とりあえずナナは今すぐ着替えてこい。

イリスはちょっと反省しとけ」



頭にチョップを入れられ、涙目で「痛い」と訴える。


そんなイリスを無視し、優人は土産物店で買ってきた物をテーブルの上に出す。



「とりあえずナナが着替え終わったら食べようぜ。

その後俺は風呂入るし布団は敷いてあるから、先に寝てていいぞ」


「分かった、そうする」







次回投稿は4/4(火)13:00予定です

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