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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
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6話






スイレン山に行くために、セシリアに頼んで専用の馬車を用意してもらった。


目的地としてはスイレン山の麓にあるキリの村。

山の麓ということで地脈を利用した温泉がこの村の売りらしく、人間中心の村にしてはかなりの規模まで発展している。

異種族の観光客も多く、村は数多くの花壇で飾られ、独特な建物が舗装された街路に沿って並び立っている。


特徴的なのはその平面図。

大きな円形の広場を中心として放射状に道路が伸び、その先に居住区域が逆三角形状で存在し、その隣り合う三角形の頂点同士がほぼ重なり合っているという、上空から見れば不細工な正六角形の様な構造をしているのだ。





そんな花と温泉の村・キリを訪れるのは──





「いやー、いつもちーちゃんだから少し遅く感じるけど、たまには馬車もいいもんだねぇー。

風が暖かくて気持ちいいー」


「ナナ、はしゃぎすぎ。あと、まだ寒いから」


「キリの村に着くまでまだまだ時間かかるんだからあまりはしゃぎすぎるなよ?

向こうに着く前にバテたら意味無いからな?」


「分かってるよ、ナナもそこまでバカじゃないし?」





優人、ナナ、イリスの3人である。


リアとニレには今回留守番を頼んだのだ。

理由としては、ソフィアが居ないため家に防御系の魔法をかけられず、全員で移動するという不用心な事は出来ないから。



最初リアは不満そうな表情だったが、キリの村の土産品の一つの「天然入浴剤(美)」という物を買って帰る、と言うことで何とか納得してもらえた。

がしかし、その入浴剤の隠し成分が少量の媚薬だという事を優人が知る事になるのはまだまだ先の話である。




「──っ、モンスターか」


「え、どこどこ?」


「─うん、前方に3体、形的に」


「フレアリザードマンだろうな。

まあ俺1人で十分だろ──馬車を止めてくれ」


「あっ、ちょユート?

──もうあんな所まで行っちゃった」




馬車が止まったのを確認するとほぼ同じタイミングで優人は馬車を飛び出し、一目散で標的(フレアリザードマン)の元へと駆けつける。


辿り着くとすぐに手に持っている無名を振りかざし、3体を瞬きもしないうちに蹴散らしてしまった。




「ま、こんなもんだろ。馬車を動かしてくれ」


「もー、ユート1人で突っ走りすぎだからね?」


「師匠、私達も、闘う」


「って言ってもなぁ。

イリス達が来る頃には全部倒しちゃうぞ?」


「そこはユートが手加減してナナ達のために残してくれればいいじゃんか!!」


「いや、モンスター相手に手加減は無いだろ」


「ナナ、今のは師匠が正論」


「ううっ…………戦わなくていいのはありがたいけどさぁ」




ナナの愚痴はキリの村に着くまで続くのだった。
















──────────────────────





「わぁー!!

ユート見て!!キレイ!!スゴい!!」


「分かってるから服引っ張るなって!

ってもまあ、これは確かに凄いなぁ」


「………凄い」






キリの村へと降り立った優人達の目に飛び込んできたのは、村の中心部を円形に陣取る色彩豊かな花壇、その中心にある龍と思われる石像だった。


全ての花はまるで石像を崇めるかのように大きく花弁を開き、そこに置かれた像がどれだけ立派なのかを示している風だった。



そして花壇を中心に放射状に続く街道に沿って存在する建物───それもほとんどが店なのだが───はどれも瓦屋根で出来た木造建築であり、その風景は日本にいた時に日本史で習った江戸の町並みに近いモノを優人に想像させる。




「とりあえず、宿を探しておこう。

山に登るってなると確実に一拍はいるだろうからな」


「うーん、どれを選んだらいいか迷っちゃうねー」




温泉があればどこでもいいけどね!!

と、本気でそう思っているらしいナナが笑顔で優人に振り向く。


しかしそれを鵜呑みにする優人ではない。イリスもだ。




「──イリス、真面目に宿を探そうか」


「うん、全力で、頑張る」


「えっと、ナナ何かまずいこと言ったかなぁ………」


「ま、こんなこともあろうかと事前にある程度調べておいたから心配するな。

俺達が泊まる宿も実は候補は絞ってあるんだ」




そう言って2人にキリの村の温泉について説明を始める。




キリの村にある宿は全部で6つ。

「温泉の村」と呼ばれるにしては少ないと感じるかも知れないが

、しかしそれは「宿の数」という面においてのみだ。


事は村の形に起因する。


正六角形の各辺付近は居住区域、中心部には円形の花壇があり、それらを結ぶ道路沿いに店が立ち並んでいるというのは既に既知。


ではそれ以外の部分、正確には店と居住区域で囲まれた6つの隙間は何に使われているのか?


そう、これこそがこの村の名物である温泉地帯なのだ。

この温泉地帯はそれぞれが少しずつ異なる効能を有しており、それを管理しているのが6つの宿である。




「この村には宿は全部で6つある。

(くれない)』、『(あめ)』、『(こがね)』、『みどり』、『(きよみ)』、そして『(くろぎぬ)』。


この中で一番人気が天、その次が雪でこの2つは人気過ぎて当日に宿泊は不可能らしい。

そこで3番人気の金に行こうと思うんだけど────どうした?2人共」




書物に書かれていた事をそのままつらつらと述べる優人だが、どうやらそれを聞いている少女2人の関心はそこには無かったらしい。




「ねぇイリスちゃん。

こんなに温泉に詳しいユートって何か怪しくない?

何か絶対隠してるよねー」


「……襲われる?」


「えー?ユートってそんな事するんだぁー?」


「……………お前ら外で寝たいのか?」




2人がからかっているのは分かっているが、自分を変態扱いされたのがカチンときたらしく、優人は「ごめんだってー!野宿とか嫌だよー!」と1人騒ぐ少女と「………また、やり過ぎた」と呟く少女を無視して、宿屋『金』に向かうのだった。






次回投稿は3/29(水)13:00予定です

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