プロローグ
本来、龍人族という種族は存在しなかった。
では彼らは一体何者なのだろうか?
その問いに対する答えとして、1つの仮説が存在する。
それによると龍人族は元々人間だった、という。
人間の中でも屈強、それも龍を殺す程の力を持つ者達が数多の龍を殺し、その返り血を浴び続ける事によって皮膚が龍の鱗そのものに変形した姿が龍人族の祖先だと、その仮説では述べられている。
龍人族の祖先を見た人々はそれを「龍の呪い」とし、人間達は龍人と化した者達を酷く忌み嫌い、自分達の住居から追い出し、迫害を続けたらしい。
追い出された龍人達は新たに手に入れたその身体のお陰もあって劣悪な環境下でも暮らしていけるため、人間達が普通足を踏み入れない山の奥地や渓谷の奥深くなどを住居にした。
その後龍人達は迫害した人間達に対する恨みをある宝玉に込め、それを毎日拝む事で復讐心を滾らせたと言う。
現在、その宝玉は見つかっておらず、一部の者は「そんなのは初めから存在しない、架空のものだ」と口にしている。
しかし私はそうは思わない、宝玉は存在している。
もちろん、こう断言するのにもちゃんとした理由がある。私は独自の調査によって、宝玉に近づくための鍵となる話を聞くことが出来たのだ。その内容は以下の通りだ:
『龍人族の第一人者だと言われているハルク・ファルガン。彼の末裔が龍人族の秘密に関わる重大な物を抱えている。』
これこそただの噂だろう、と思う者も多くいるだろう。
だがそれでも構わない。むしろそう思っている者の為にも研究・調査のしがいがあるものだ。
そして私は龍人族の中でも名の通った者に接触を図り、末裔についての情報を聞き出そうと試みた。
結論からまず言おう、接触には成功した。
しかし末裔や宝玉についての情報はおろか、先祖が迫害されていた事すら知らない様子だった。
当てが外れて手詰まりになってしまったが、私はまだまだこんな所で諦めるつもりは無い。
これを読んでいる者達のため、そして龍人族の歴史について異を唱える同業者のためにも私は何としてでも龍人族の正しい歴史を紐解き、宝玉の在り処を発見してみせる。
読者諸君には私の研究・調査の成果に期待し、あわよくば私の無事を願っていてもらえると有難い。
では、次は私の成功話でまた会おう。
(────著者:イルギス・ミィス
『龍人族を追って』)
お待たせ致しました3章の開幕です^^
楽しんで頂ければ幸いですm(_ _)m
※1話と同時掲載です、次回投稿は1話に書いています。




