表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈閑章 移りゆく年と変わらない日常〉
83/180

リアの日記②



最近日記に書くような出来事も少ないので、今日は

私の仕事について書こうかなって思います。



食事の方は交代制でナナやイリス達も手伝ってもらっているんですけど、洗濯物や掃除はメイドとしてニレと2人でやるようにしています。


洗濯の仕方は家庭によって違うのですが、私は手洗いで

やるようにしています。

あ、もちろん洗剤も使いますよ。


と言うのも、生活魔法を使えば簡単に汚れを落とせるん

ですけど、それでは匂いのないただの綺麗な服になる、と言ってナナがお願いしてきたんです。


まあ、お年頃の女の子ですし、好きな人と暮らしてる

わけですからそうしたい気持ちはよく分かるんですけどね。


ああ、そう言えば洗濯物で面白い話があるんですよ。
















──────────────────────────






ある日の夕暮れ時──




「ユート様、部屋に洗濯物置いておききますね」


「あー、自分で持って上がるからいいよ。

こっちに持ってきてくれないか?」


「かしこまりました」



綺麗に畳まれた大量の衣類を持ったリアが、

ソファで読書中の優人の傍に歩いて来る。


読んでいた本にしおりを挟み、本を閉じ置いた優人は

リアから衣類を受け取る。




「ん、いつもありがとな」


「いえ、仕事ですから」


「…………あれ?

おいリア、シャツ1枚足りないぞ?」


「え、本当ですか?

おかしいですね、干した物は全て取り込んだと

思うんですけど…………」


「もしかしたら、干してある最中に風で飛ばされたのかもしれないな」


「だとしたら私の失態ですね、申し訳ありません」


「あー、別に頭下げるほどの事じゃないって。

シャツなんて沢山あるし、また今度買えばいいからな。

まあ、そうだな、次からは飛ばされないように注意しておいてくれよ?」


「はい、かしこまりました」


「──っと、いたいた。

おーいリアさんー!!

ナナと一緒にお風呂入らないー?」



声のする方にリアが顔を向けると、

階段の所からナナが手を振っていた。



「お風呂?うーん…………。

洗濯物をみんなの部屋に置いて回ってからでもいい?」


「うん!!

じゃあ先に入ってるねー!!」



リアの返事を待つこと無く、ナナは駆け足で風呂場に

向かって行った。



「ったく、家の中で走り回るなってーの」


「まあ、あの元気がナナのいい所ですから」


「まあ、そうだな。

リアも、あいつが文句言う前に早く風呂いって来た

方がいいんじゃないか?」


「そうですね、前みたいに変な事されるかも知れませんからね。

もしそんな事あったら、またユート様の部屋にでも」


「来なくていいから!

ほら、早く行ってこいよ」


「ふふっ、冗談ですよ。

じゃあ、先にお風呂入らせてもらいますね」



リアは残りの洗濯物を手にして、少し早足で

2階へと歩いていった。

















「あー、キモチイイ〜〜〜」


「ナナってお風呂に入ると本当に人が変わるよね………」



2人で入るには広過ぎるほどの大浴槽の壁側にもたれかかるリアが、縁側でだらしない声を上げるナナに口を出す。



「仕方ないじゃん〜!!

お風呂気持ちいいんだもん〜!!

リアさんもそう思うでしょ?」


「まあ、気持ちいいけどね。疲れも取れるし」


「家事ってけっこう重労働だもんね〜。

あ、そういえばさっきユートと何話してたの?」


「実はユート様のシャツが1枚無くなっちゃって。

当のユート様が風で飛んでいったんだろう、って言うからそういうことになったんだけど、私の記憶が正しかったら元々シャツの枚数は干した前と後で変わって無いと思うんだよね。


まあ、終わった話だし私の記憶違いって事もあるから

別にどうこうするつもりは無いんだけどね」


「…………………………………………」



リアが先程の事を詳細に語ると、さっきまで軽快に喋っていたナナが急に黙り込んでしまった。


その様子にリアが不思議そうな表情を浮かべていると、突然ナナが立ち上がりリアの方に向いて頭を下げ始めたのだ。



「リアさんごめん!!」


「ちょ、ちょっとナナ!?

どうしたの急に!?」


「じ、実はね……………。

ユートのシャツ盗ったのナナなんだ…………」


「…………えっ、ナナが?どうして?」



リアの疑問に反応してなのか風呂に逆上せたのか、顔を赤らめたナナが普段とは違って弱々しい声で話し始める。



「そ、その、ね。

朝いつもユートとイリスちゃんと特訓してるじゃん?

一応ナナは獣人族だし鼻は利く方だから、その時にどうしてもユートの汗の匂いが鼻についちゃうんだよね。

ナナ、その匂いを嗅いでるとすごく安心しちゃってて、ずっと嗅いでいたいなーって、つい………………」


「……私や他の皆の目を盗んでユート様のシャツを洗濯物入れの中から持ち出した、と?」


「う、うん…………」



いつもはピンと張っている耳も今回ばかりはバツの悪そうに垂れ下がってしまい、ナナは俯いたままゆっくり腰を下ろし湯に浸かる。



「と、とりあえずユート様のシャツはちゃんと洗濯物入れの中に入れておく様に、いい?」



あまりに予想外な話を聞かされたリアは、とりあえずシャツを返すように告げる。


ナナも悪い事をしたと反省しているようで、その忠告は素直に受け入れ頷く。



「あ、あのね、リアさん」


「どうしたの?まだ何か盗ったの?」


「ち、違うよ!!

その、この事はユートには言わないでね?

さすがにナナも恥ずかしいから…………」


「…………ふふっ、わかってるよ。

ただし今回だけだよ?」


「ありがとうリアさん!!

はぁ、こんな事ユートに聞かれたらオシマイだよー」


「ナナはユート様の事が本当に好きなんだね」


「そうやってからかうのズルいよ!!」















─────────────────────────





その後、ナナは私より先に風呂を出ていきました。

風呂を出て洗濯物入れを覗くとちゃんとユート様のシャツが入ってあったので、ナナは素直でいい子だと思いました。



もちろん、この話は今でもユート様には内緒にしていますよ、女と女の約束です。

それに隠し事をしている時の女ほど良いように見えるって言いますから、これもナナのためですね。



……………ここだけの話、私は犬人ですから狐人よりも鼻が利くんですよね。

その、洗濯物を洗う前とかは、ね?



やっぱり恥ずかしいのでこれ以上は書きません、

乙女の秘め事です。







それではまた書くことがあれば、おやすみなさい。








個人的にはリアの立ち位置が気に入ってるので、こういう話もアリかなーって思います(笑)


次回投稿は3/17(金)13:00予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ