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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈閑章 移りゆく年と変わらない日常〉
82/180

イリスの日記②




日記書くのも何だかすごく久しぶりな気がします。


つい先日まで、セイルペイスという海の上に浮かぶ

街に滞在していました。


セイルペイスでは本当に色んな事があったし、

色んな姿の師匠が見れました。



セイルペイスの話をしても多分面白くないだろうから、

今日は最近の私の話でも書こうかな、と思います。


実は、ついに私も精霊と契約する事が出来たんです。

しかも、相手の精霊は大精霊でした。



















_____________________________________________





新年を迎えてすぐの頃、まだまだ厳しい寒さを抱える

夜の森を1人、迷いの無い足取りでどんどん進むイリスを

優人とリアはこっそり後をつけていた。





「…………(あの、本当にこんな事するんですか?)」


「…………(当たり前だろ、リアは気にならないのか?)」


「…………(確かに気にはなりますよ?

でもこうコソコソやるのは気が引けると言いますか)」


「…………(しーっ、何か動きがあったみたいだぞ。

────は?何だよあれ………精霊?)」




木陰や茂みなどに上手く隠れる優人とリア。

優人の目に映っていたのは全身が青色の液体で出来ている、何者なのか分からないモノと会話をするイリスだった。



『あら来たのね。じゃあ今日も?』


『もちろん。今日こそ、成功させる』




そう口にしたイリスは、自分の周囲に数多くの

アクアボールを出現させる。



「…………(何、何が始まるんだ!?)」


「…………(ゆ、ユート様!落ち着いてください!!

あまり興奮するとバレますよ!?)」


「…………(あ、ああ。悪い)」



なぜ2人がこんな事をしているのかと言うと、

最近イリスが1人で外出する回数が増え、

過保護な優人が気が気でならなくなった為である。


ナナとニレはどうやらイリスの外出について何か

知っているらしく、「放っておいてあげてよ」と

言われたが残念ながら優人は聞く耳を持たなかった。




『へぇ、数増えたんじゃない?

じゃあ、見せてもらおうかしら』


『………ん、見てて』




イリス目を閉じ、すっと右手を高く挙げる。




『…………回れ』




呟くのと同時に、勢いよく右手を振り下ろす。

すると周囲に浮かんでいたアクアボールがイリスを

中心に右回転をし始めた。しかも互いにぶつかることなく。




「…………(す、すげぇイリスいつの間に…………)」


「…………(イリスが風呂場でよく水魔法の特訓をしているのは知っていたんですけど、こんな事が出来るなんて……)」




目の前で起こっている事に、2人は唖然してしまう。

イリスは目を閉じたままもう一度右手を挙げ、

その動作に呼応したアクアボールがピタリと動きを止める。



『………鳥』



その呟きと同時にアクアボールは鳥に形を変え、

上空へと真っ直ぐに飛んでいってしまう。



『…………水虎、水竜、水鷲』



イリスは発動したアクアウォールから水で出来た

虎、竜、鷲を順に出現させる。


そして、アクアウォールが消えるのと同時に

出した3体の水生物を別々に動かしていく。



『………最後っ、水仙花……』



立て続けに魔法を使いそれを維持し続けたため

MPがかなり減ったのだろう、イリスがかなり

苦しげな表情を見せる。


そんなイリスを他所に、バラバラの場所にいた

3体がイリスの目の前に駆け寄り、3体共同時にぶつかり

弾けた水飛沫が花びらのように広がる。


そうして水で形作られた大きな薔薇の花が空中に出現した。



『へぇ、やるじゃない。いいわ、合格よ』


『………はぁ、はぁ。ありがと…………』



──バタン。バシャッ。




どうやらMPが切れたらしく、イリスが疲れ切った

表情のままその場に倒れ込んでしまう。



「イリス!!」


「あっ、ちょっユート様!?」



そこに過保護な優人が急いで駆けつける。

倒れたイリスの身体を抱き抱え、目の前にいた

例の全身が青い液体のモノに話し掛ける。



「お前、何者だ?

………いや、その感じからしてソフィアと同じ魔法を

使っているのか、精霊なのか?」


「あら、ソフィアなんて懐かしい名前。

それに反照(リフレ)が効かない人間なんて初めて見たわ。

あなたこそ何者なの?ソフィアのお知り合い?」


「俺はただの冒険者だよ。

ついでに言えばイリス─こいつの…………親だ」


「ちょっとユート様!!

さらっと嘘をつかないでください下さい!!

─あ、えーっとそこに精霊がいるんですよね?

私はリア、この人のメイドです。

この人はユート様で、イリスが住んでいる家の家主ですよ」


「リア、ペラペラ喋り過ぎだろ………」


「随分と仲良さげね。

そこのお兄さん、えっとユートさんだったかしら?

その子をこちらに渡してもらえないかしら?」


「そう言われて素直に渡す人間がどこに──」


「んっ、…………師匠?」




精霊らしき相手と口論を交えていると、優人の手元で

意識を落としていたイリスがどうやら目を覚ましたらしく、2人の会話に割って入る。




「イリス!大丈夫なのか?」


「うん。…………アクエリアス、契約しよ」


「そうね、こっちに来てもらえる?

っと、その前に反照(リフレ)を解除しておかないとね」




アクエリアスと呼ばれた精霊が目を閉じ、

周囲に纏っていた白い光を徐々に消し去っていく。


全てを消し去り、優人達の方に向くとイリス、リアが

青い液体で出来た全身を見て驚く。




「じゃあ、契約を交わしましょうか」




アクエリアスはそう言い、目を閉じてじっとするイリスと

軽く口付けを交わす。

その瞬間、2人の間で光が弾けたように見えたが、

アクエリアスとイリスはそんな事お構い無しのようだ。




「ふぅ、これでおしまいみたいね。

契約結ぶのなんてものすごく久しぶりだから、

この感覚には中々慣れないわ」


「ありがとう、アクエリアス。これからよろしく」


「ええ、よろしくね。

私を失望させないように、努力するのよ?」


「もちろん。いつかアクエリアスに、勝つ」


「ふふっ、出来るといいわね。

でもあたしの見込んだ契約主ですもの、それぐらいすぐに出来るわ」


「盛り上がってるところ悪いんだけどさぁ、

イリス、色々と説明してくれないか?」




お互いに見つめ合って微笑み合う2人を他所に、

話の展開にほとんどついていけてない優人が口を出す。


イリスも聞かれることは予想済みだったようで、

落ち着いた態度のまま優人の方に振り返り言葉を発する。




「少し前、ここの森の中を、1人で散歩してたら、

川の所にいたアクエリアスを、発見した」


「あたしの事を発見できるのなんて限られた人だけなの。

それでこの子に興味が出たから、あたしと契約する代わりにある条件を出したのよ」


「それが、水魔法を上手く操る事。

アクエリアスは『水』を司る大精霊、

契約したかったから、すごい努力した」


「で、今に至るってわけか。

最近よく1人で外出してたのって……」


「うん、アクエリアスと、会うため」


「この子が毎日来てくれてたから、あたしも退屈しなかったしすごく楽しかったわ」


「そっか、イリスが危ない事に巻き込まれてるんじゃないかってすごく心配したんだぞ?」


「師匠、ごめん。でも、私も出来る所を見せたかった」


「………イリス」


「………師匠」


「あのー、2人で変な世界作らないでもらえませんか?

ユート様?イリス?──いい加減戻って来なさい!!」



1人だけ会話に全く入れていなかったリアが我慢の

限界に達したらしく、優人の肩を持って全力で揺らす。


3人にとっては日常のありふれた光景なのだが、

新たに仲間に入ったアクエリアスにとってそれは

微笑ましく、また面白可笑しいものだった。



「本当に仲がいいのね」


「ん、アクエリアスも、仲間」


「まあ、そうだな。

イリスの契約精霊なんだ、もうお前も見てる側じゃないぞ、いじられる側になるぞ」


「あら、どういじられるのかしら?」


「ど、どうってそれはだな、えーっと………」


「師匠、変態?」


「んなっ!?変態だと?イリス、俺がそう見えるのか?」


「ユート様、どれだけイリスに好かれたいんですか……」




静まり返った夜遅い森の中、そこに似合わない笑い声と

焦りが伝わる声が響き渡ったのだった。

















────────────────────────






こうして私はアクエリアスという水の大精霊と契約を結ぶことに成功したのです、とても嬉しかったです。



あの後家に帰ると珍しくソフィアが起きていて、アクエリアスにそれはもう酷いぐらいにいじられていました。面白かったです。




アクエリアスと生活し始めて、色々と驚く事が増えました。


なぜ女性の形を真似ているのかと聞くと

「前の契約主が

『何にでも形を変えれるのなら女が良い!!

それもスタイル抜群の!!』

って言うから仕方無くこれにして、それ以来変えるのが面倒になっちゃったのよ」

という事らしいです。何とも不健全な前契約主です。



アクエリアスは今私のベッドの所で寝ているのですが、不思議な事で水の体を持つのにベッドが濡れないんです。


それに寝ている時はかなり無防備で、体をつつくとものすごくえっちな反応をします。師匠には絶対に教えません。




そろそろ私も寝たいと思います。おやすみ。





次回投稿3/16(木)13:00予定です

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