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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈閑章 移りゆく年と変わらない日常〉
76/180

婚約!?(前編)




「久しぶりだな、フーガ」


「ああ、良く来てくれたよユート村長。

………何だ、今日はエルフの子だけしか

連れてきていないのか?」




もうすぐ年越しを迎えようという時期、

優人はイリスを連れてハォの村に来ていた。

正確には、呼ばれて来たのだ。




「あー、ナナもリアも楽しそうに料理しててさ、

声掛けづらかったんだよ」


「で、私だけ来た」


「そうだったのか。

………早速だが本題に入ってもいいか?」


「ああ、もちろんだ。緊急事態なんだろ?」



以前呼びに来た少女がまた朝早くに呼びに来たので、

また何かトラブルが発生したと察した優人は、

手の空いていたイリスにだけ声を掛けてすぐに

ここの村に向かった。

そのため、何があったのかを全く知らされていない。



「まあ、緊急事態っちゃぁ緊急事態だな。

あの精霊様のお陰で、うちの村の農産物が

王国や街に飛ぶように売れるようになったんだ。

それで村全体が豊かになって、生活に困る事は

まず無くなった。この事は先に感謝させてくれ、

ありがとうな」




へぇそんな事が、と優人は村全体が裕福になるぐらいに

しっかりと働いているソイの事を意外に思った。

何せ数百年も眠りこけた挙句、村の作物を知らずの

うちに食べ荒らした間抜けな奴だ、どこかでドジを

するだろうと踏んでいたのだ。



そんな事を感心していると、フーガはさらに続ける。



「だが、豊かになって作物も良く取れるようになると、

王国や街からそれなりの量の作物を要求されるよう

になってな、圧倒的に人手が足りなくなったんだ」


「まあ、そうなるよな。何か手は打ったのか?」


「一応、日雇いのバイトとして各冒険者ギルドに

掲示してもらったんだが、こんな中途半端な土地だ、

日雇いのバイトをするためにわざわざ来る奴なんて

いないんだよ」


「なるほど、それで俺に何か案がないか聞きたい、

って事でいいんだよな?」


「その通りだ。すまないが考えてもらえないか?」


「そうだな………少し時間をくれないか?」



考えろ、と言われてすぐに出るものではないと思った

優人は対策を練るためにフーガにそう要求する。

フーガもそうなる事は分かっていたようで、

首を縦に振る。




「じゃあ、集会所で考えるから何かあったら

声掛けに来てくれ。行こう、イリス」


「ん、わかった」


「すまんが村長、頼んだ」


「ああ」



フーガに軽く手を振り、イリスを連れて集会所の

ある方に足を進めるのだった。














―――――――――――――――――――――――




集会所は割と人で賑わっていた。

王国とラルの街との中間地点ということもあり、

村人以外も数多くいた。


集会所の一角に腰を下ろすまでに、

優人のことに気が付いた村人が挨拶をしてきてくれた。




「さて、引き受けたのはいいものの、

特に何かいい案がある訳でもないんだよなぁ」




向かい側に座っているイリスに、

愚痴をこぼすような雰囲気で優人はそう呟く。

イリスは特に表情を変える訳ではなく、

淡々と言葉を発していく。



「師匠、農業ギルドに行く、のは?」


「農業ギルドか?あれはダメだ。

前にソフィアから聞いたけど、

あそこは作物の苗の販売や肥料の開発、

土壌の劣化を防ぐ連合が中心で人の手配とかは

全くしてないらしい」


「そっか、難しい」



ううむ、と手を頬に当てて考え込むイリス。

超可愛い、写真撮ってスマホの待ち受にしたいぐらい。

今はスマホなんて持ってないけどな…………。



と、脳内ひとりツッコミをしているとイリスが

何かを思いついたようで、バッと顔を上げ優人を

見つめてくる。



「師匠、いい案が」


「おお、どんな?」


「『魔力接続機』、使えばもしかしたら、

上手くいくかも」


「魔力接続機?どうやって使うんだ?」



神の説明を受けた時にはあまり使えないアイテムだと

思っていたが一応イクスチェンジャーと一緒に

説明をしていたため、イリスはそれの名前を

すっと言葉にする事が出来た。

そんなアイテムの名前を耳にした優人は、

イリスの考えが気になって仕方なかった。




「多分、やってみた方が、早い。

ソイの所に、行こ?」


「ソイ?…………まあ、イリスの考えだしな。

じゃあ早速行くか」



優人とイリスはすぐに席を立ち、

ソイのいるであろう農場に向かった。













―――――――――――――――――――――――




畑に着くと、ソイが何やら忙しそうにしていた。



「そっちの作物はそろそろ収穫できるっちゃ!!

―――あ、待つっちゃ、半分は残しておくっちゃ!!」



ソイの指示に従い、多くの村人が作物を収穫していく。

先程の指示で一段落終え、落ち着いたのか

優人達に気が付き近付いてくる。



「おーソフィアの相方っちゃ。

久しぶりっちゃね〜」


「御影優人だ、ソイ。

………かなり忙しいみたいだな」


「そうっちゃね〜、この村には働き手となる男が

少し少ないっちゃ。

ユートも良かったら手伝っていって欲しいっちゃ」


「あー、今日はその人手不足を解消する方法を

考えに来たんだ」


「おお、そうだったっちゃか!!

で、何か案が見つかったっちゃか?」


「ああ、イリスが何か思い付いたらしくてな」


「イリス?………そのエルフの女の子っちゃね」



どうも、と軽く挨拶をするイリス。

すぐに優人の方を向き、手を差し出す。



「師匠、魔力接続機」


「あー、了解」



さっと収納から魔力接続機なる白い箱を取り出し、

両手を差し出しているイリスの手にそっと置いてやる。



「ん。……ソイ、これにMP込めて。

ゴーレム、作る」


「わかったっちゃ。

――――――これで、ってうわっちゃ!?」


「うぉっ!?マジかよ………」


「想像を、超えた」



ソイが魔力接続機に触れ、ゴーレムを錬成しようと

した途端、優人達にの周囲をぐるりと取り囲むように

土で出来たゴーレムが出現した。


一瞬で十数体のゴーレムを錬成した事に、

優人とイリスだけでなく当の本人のソイでさえも

驚愕を隠せなかった。



「す、凄いっちゃ…………。

一体だけ作ろうとしたらこんなにも出来たっちゃ」


「…………これなら、上手くいくんじゃないか?」


「うん、予想以上の結果」


「ソイ、ゴーレムはどのぐらい作れてどれぐらいの間

稼働していられる?」


「数に制限はないっちゃ。稼働も一度作ってしまえば

ずっと動かせるっちゃ」


「…………マジ?」



ソイの「無限に出せる」発言に、優人は目を見開く。



「マジっちゃよ。精霊はMPに制限ないっちゃ」


「あー、うんもう分かった。さっさとゴーレム

作ってしまえよクソ精霊」


「何か一気に扱い悪くなったっちゃね!?

もしかしてあれっちゃ?羨ましいとか―――」


「黙って働け」


「ごめんなさいっちゃ頑張るっちゃ!!」



力こぶを作り必死に頑張るアピールをするソイ。

冷や汗をかいてまでそうするのを見て、

優人とイリスは苦笑いしてしまう。



「………結構あっさり片付いたな。

というか最初っからソイがゴーレム作れば

解決したんじゃないのか?」


「それは無理っちゃ。ボクが一度に操れるのは

せいぜい3体までっちゃ。

でもこの装置のお陰で何体でも扱えるっちゃ」


「そうか。ならこれは置いていくから

村のためにしっかりと働いてやれよ?」


「もちろんだっちゃ」


「じゃ、俺はフーガのところに報告に行くから。

またな」


「バイバイ」


「ばいばいっちゃ〜」



ソイと別れ、2人はフーガの家に向かった。














―――――――――――――――――――――――





―――ドンドン。



「フーガ?俺だ、御影優人だ。いるか?」



―――バタバタッ。ガチャッ。



「村長さん!!良く来てくれました!!

ささ、上がってください」



フーガの家に着き、玄関扉を叩いて出て来たのは

優人を呼びに来た例の少女だった。



「あれ?ここってフーガの家じゃなかったっけ?」


「いえ、フーガさんの家ですよ。

私がお邪魔させてもらってるんですよ」



なるほど、と思い中に入ろうとした優人だったが、

少し気になる所があり尋ねる。



「もしかして、何か大事な話でもしてたか?

そうだったとしたら俺らはまた後でくるけど」


「いえいえ、大丈夫ですよ。

それにフーガさんが『多分ユート村長だろうから

中に入れてやってくれ』って言われてますから」


「そうか、なら遠慮なく」



少女に手招かれ、家の中に入る。



フーガの家は日本式だった。

いや、フーガの家だけでなく村の家は全て

日本のように玄関があり、通路を渡った先にリビングが

あると言った感じである。



玄関で靴を脱ぎ、少女のあとについて行く。

少女が連れて行った先は、庭と直接繋がっている

和室だった。

そしてフーガが1人、縁側でお茶をすすっていた。



「フーガ、いい家だな。風情を感じるよ」


「村長に褒めてもらえるなんて、ありがたいな」



フーガは2人の方に振り向き、軽く微笑む。

よっこらしょ、と立ち上がったかと思うと

和室の中央に置かれたテーブルに座り、

「とりあえずそちらに」と手で促してくる。



それに従って腰を下ろすと、少女はフーガの

隣に座っていた。



「さて、人手の方はどうなった?」


「ああ、ソイにゴーレムを作らせることで解決したよ」


「ゴーレム?無理だって本人が言ってたのにか?」




なるほど先にその手を思いついていたのか、

と優人はフーガの聡さに感心する。




「俺の持っていたアイテムで同時に複数のゴーレムを

作れるようにしたんだ」


「そういう事か、さすが村長だな」


「大したことは何もしていないし、

これはイリスの案だから褒めるならこいつだよ」



そう言って、優人はイリスの頭を撫でてやる。

それが嬉しかったようで、イリスは目を閉じて

撫でられるがままになっていた。




「とりあえず、人手不足はこれで解決だ。

俺達は帰らせてもらうぞ?」


「…………いや、もう一つ頼みたいことがあるんだ」



フーガが人手不足の事を頼む時よりも深刻な顔を

して、こう口にする。





「この娘、カノンを嫁に貰ってやってくれないか?」












久々のソイ登場、意外と働き者でしたね〜。

最後のフーガの発言の意味とは……?

次回投稿12/30(金)13:00予定です

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