11話
借部屋に戻ると、リビングで3人が寝ていた。
「(あら〜、完全に酔いつぶれたって感じだね〜)」
「(ああ、起こさないように寝室に運んでやるか)」
「(さすが優男〜)」
「(うるせぇ。そんな無駄口叩く暇あるなら
お前も手伝えよ)」
優人は玄関近くのソファで眠っていたイリスを担ぎ、
ソフィアに手伝う様に促す。
「(いや〜、アタシには運べないからね〜)」
「(いやいや、巨大化でも何でもして働けよ)」
「(アタシを何だと思ってんのよ…………
さすがにそんな事は出来ないから……)」
「(巨大化の魔法とか無いのか?)」
「(あるっちゃあるんだけどね〜。
あれ精霊には使えないのよ〜)」
「(ちっ、使えねぇな)」
「(ひっど〜い。まあ、アタシはここにいるからね〜)」
ふらふらと飛んでいくソフィアを無視して、
優人はイリス、ナナ、リアと順にベッドに運ぶ。
ナナは寝相が良くないので寝室にある2つの
キングベッドのうち片方に1人で寝かせ、
イリスとリアの2人を同じベッドで寝かせる。
「(…………ふぅ、これでよしっと)」
全員にしっかり布団を被せたのを確認し、
寝室を出てリビングに向かう。
「あ、ユートお疲れ〜」
リビングではソフィアが『反照』を解除し、
ソファでくつろいでいた。
優人は散らかっているゴミや酒などを片付けながら、
ソフィアに話をする。
「明日はお前に活躍してもらうからな、
今日は早めに寝ておいた方がいいぞ?」
「え〜、最近働いてばっかでしんどい〜」
「文句言うな、ちょっとは働けよ居候」
「いやアタシ居候扱いなの!?
てかさ〜、頑張ったら御褒美ちょ〜だいよ〜」
「御褒美か、あまり変な物じゃないならいいぞ?」
「え、ほんと!?」
ソフィアが文字通り飛び上がり、
優人の顔に突進しそうな勢いで近寄ってくる。
「近い近い。離れろって」
「御褒美アリならアタシ頑張っちゃおかな〜!!
…………で、アタシは何をすればいいの〜?」
「ああ、それなんだが―――――――――」
優人は考えている策を事細かに伝え、
明日に備えてソファで眠りについた。
―――――――――――――――――――――――
「…………ん」
「あ、起きた。おはようユート!!」
(近い近い!息かかっちゃってるから!)
目を開けるとそこには、ナナの顔がドアップされていた。
「……顔洗ってくるから」
「あ、ごめんごめん。ご飯出来てるから、
早くみんなで食べよう!!」
そう言われてテーブルの方を見ると、
サラダやパンが皿に乗せられ並べられている。
そしてイリス、リア、ソフィアがそれらを
囲むようにして座っていた。
「待たせて悪い、ちょい急ぐわ」
「うん!!」
ソファから立ち上がり、優人は洗面所に向かった。
―――――――――――――――――――――――
「みんなにちょっと報告というか、話があるんだけど」
朝食を食べ終え、皆が一息ついた所で
優人が話を切り出す。
「師匠、昨日何か、あった?」
「それはまあ、色々とな」
「アタシもユートに連れ回されてしんどかったよ〜」
「ソフィア………」
ソフィアがリアの胸元に倒れ込むようにして
もたれ掛かる。ホント仲いいですよね、お2人さん。
「昨日はソフィアとカジノに行ってきたんだ。
そこでトリノに出会った」
「トリノって…………ああ、あの男の子?」
「そう。で、そのトリノがちょっとしたトラブルに
巻き込まれたんで助ける事にした」
「そんな事があったんだー!!
で、トリノ君はどうなったの?」
「トラブルを起こしたヤツに今は捕まってる」
「えっ!?それ一大事じゃん!!
ユート早く助けに行こ――――――痛っ!?」
「ナナ、落ち着く。………師匠、何か考えあるの?」
思いっきり立ち上がろうとするナナの頭にイリスが
チョップを入れる。さすがイリス、良く分かってる。
「一応な。今日の昼12時頃にまた会う約束をしているから、そこにソフィアと2人で行ってトリノを取り返してくるつもりだ。
で、多分なんだけど俺の予想が正しければ
トリノともう1人がメイドになると思うから、
その事は頭に入れておいてくれ」
「メイドですか?ユート様、どういう事でしょう?」
「詳しい事は本人から聞いた方がいいだろ。
メイドの経験のない2人だと思うから、
メイド長としてリアが色々と教えてやってくれ」
「はぁ、かしこまりました」
「よし、じゃあ少ししたら出掛けるから
ナナ達3人は留守番頼むな?
出掛けるなら書き置きしておいてくれよ」
「うん!!ユート頑張ってね!!
トリノ君をちゃんと助けてあげてね?」
「ああ、分かってる。………早いけど出掛けてくるわ」
ソフィアを連れ、優人は玄関に向かって歩いていく。
―――――――――――――――――――――――
「何だ、先に来てたのか」
待ち合わせ場所である奴隷商店前に、
約束の時間きっかりに男達はやって来た。
トリノは眠れなかったのか、くまが出来ていた。
「お、お兄さん…………」
「大丈夫。
…………じゃあ、カジノドームに向かおうか」
「ああ、分かった」
「カードはディーラーに借りればいいだろう。
それ以外で何かあるか?」
「いや、特にねーよ。さっさと行こうぜ」
男達はトリノを引っ張りながらドームに向かう。
優人もそれに続く。
男達と優人は、初心者向けである右側のテーブル系
ゲームの席に腰をかけていた。
ディーラーには事情を説明し、カードを用意させて
席を外してもらってある。
「じゃあ早速始めようじゃねーか。
ああ、引き分けならどうする?」
「勝ち負けがつくまで続ける」
「そうか、分かった。
数字は俺が選んでいいんだよな?
昨日のうちから決めていたんだよ、22だ」
そう言いながら男は山札から1枚引く。
(…………22。
中途半端な数を言う事で引き分けに持ち込むつもりか。
ま、俺には関係ないけど)
「おい、早く引けよ。何もたもたしてんだよ」
「ああ、何枚引くか考えてたんだ。悪いな」
優人は膝に置いていた手を出し、カードを1枚引く
。
その後も交互に引いていき、
2人とも5枚引いたところで手を止めた。
「よし、じゃあめくるぞ。
…………3、1、8、6、5だから23か。
これは勝ったな」
男は勝利を確信したのか、優人に向かってほくそ笑む。
「おい兄ちゃん、お前はいくらだ?」
「俺か?俺は――――――――――」
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