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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈2章 海上都市セイルペイス編〉
58/180

10話

お陰様でユニーク数10000人超えました!!

これからもよろしくお願いしますm(_ _)m




「────はい。これで2勝2敗ですね」



 ディーラーとの勝負はかなりの接戦だった。最初の二ゲームを優人が連勝してかなりの余裕が出来ていたはずなのだが、気がつけば二敗して後が無くなっていた。



「では、最終ゲーム行きましょうか」


「ああ、数字を決めるのは俺だったな。少し考えてもいいか?」


「もちろん。じっくり考えてください」


「じゃあ、お言葉に甘えて」



 ディーラーから視線を外し、優人は考え込む姿勢に入る。



(ここで勝ちか引き分けなら総合的に俺の勝ち、なら数字はあまり攻めず、ある程度低い方がいいかもな。しかし、それは相手も同じことだし────)


「(ユート~!! 向こうで何かトラブってるよ~)」



 上空の方からソフィアが戻って来て、優人の肩に乗る。あまり怪しまれないように、ソフィアにだけ聞こえるぐらいの小声で返事をする。



「(トラブル? 具体的に)」


「(トリノくんだっけ? あのひ弱そうな男の子がどうやら詐欺られたらしいよ~)」


「(トリノって、あの海棲族の?)」


「(そうみたい。しかも相手はユートに何かした人間の男達だし、なんか嫌な感じ~!!)」


「(落ち着け……それは後回しだ、先にこっちを片付ける)」


「(ん、りょーかい~)」



 手早くソフィアとの会話を切り上げ、ディーラーの方に向く。



「数字は10でいこう。じゃあ俺から引くぞ」


「10ですか。分かりました」



 優人が一枚引く、ディーラーが一枚引く。二枚目を引いたところで優人はストップを宣言し、ディーラーは三枚目でストップを宣言した。



「俺のカードは7、2だから9だな」


「私の方は1、1、6なので8ですね。

……私の負けですね」


「おお、何とか勝てた……こんなに体力使うと思わなかった」


「どうですか? このゲームには慣れましたか?」


「ああ、ルールはだいたい把握出来たし、慣れたっていえば慣れた方だと思う」


「それは良かった。では賭け金の金貨1枚は2倍になります」



 そう言ってディーラーはさっと金貨二枚を渡す。



「どうしますか? このまま続けますか?」


「あーいや、悪いがここまでにしておくよ」


「そうですか。ではまたの機会を楽しみにしております」


「ああ(ソフィア、トラブル現場に案内しろ)」


「(りょーかい~)」



 優人は席を立ち、ソフィアに先導されトリノがいるらしい場所に向かうのだった。

















────────────────────




 優人が現場に駆けつけた時には、既に多くの客がざわついていた。



「で、どうするんだよ? 金貨60枚払うのか? それとも俺らの奴隷になるのか?」



 そんな客の集まりの中心の方から、雑音をかき消すほどの太い声が聞こえて来る。



「で、ですからあれはあなた達の不正が……」


「だからその証拠はどこにあるんだよ? 出せよ、出してみろよ証拠を!!」


「ひいっ!!」



 ドンッ、と人間の男は持っていた剣の先で地面を強く叩く。さすがにその行動を見過ごすわけにはいかなかったのか、店員が慌てて駆けつけてきた。



「お、お客様、そのような乱暴な行為は店内では……」


「ああすまんな、じゃあ外に出ようか。おいお前ら、こいつを外に運ぶぞ」


「(ちょ、ユートこのままだったら連れていかれちゃうよ~?

どうするの? 助けるの?)」


「(いや、ここでは助けない……俺に考えがある)」


「(なら、アタシは黙ってついていくわ~)」


(これだから人間は嫌いなんだよ。私利私欲にまみれやがって………)



 優人はカジノドームから出ようとする男達とトリノを見ながら、垣間見える悪意に嫌悪感を抱く。何度も抱いてきた感情だが、何度抱いても慣れない嫌な感覚だと再認識する。


 男達にバレないように後をつけ、優人達もまたドームの外に出る。出たタイミングで男の一人が口を開き、低い声を出す。



「でだ、ガキ。このままじゃ埒が明かないからお前をこのまま奴隷商店に連れていく。奴隷商の奴に知り合いがいるからな、そいつに頼めばお前もすぐに奴隷の仲間入りだ」


「そ、それは困ります!!」


「だったら金貨60枚払えよ。それが無理なら証拠でも出してみろ。まあ、無いものを出すのは無理だろうがな」


「そ、そんな……」



 男達はトリノを連れ、左の方へ歩いて行く。優人も通行人に紛れながら後を追う。

 暫く道なりに進むと、他の店とは雰囲気の異なる洋館に男達はトリノを連れて向っているのが分かった。



「さあ着いたぞ、ここが俺の知り合いの奴隷商店だ」



 目の前にある洋館を見て、男が言葉を発する。



「さ、もうここまで来ちまったら逃げられねーぜ?

覚悟は出来たか、ガキ?」


「…………」



 トリノはもう反論する元気すら失っていた。そんな事を気にも止めず、男はさらに言葉を続ける。



「そういやお前には一つ下の妹さんがいるんだって?

ついでだ、そいつも可愛がってやるよ」


「っ!? それだけはやめて下さい!!」


「あ˝ぁ!? 奴隷が口出ししてんじゃねぇよ!!」



 トリノの言動に苛立ちを覚えたのか、男はトリノを力一杯に殴りつける。鈍い音とともに、トリノが地に伏したのが優人達の目に移りこんだ。



「(ねぇユート~? そろそろ止めに入った方が……)」


「(ああ、そうするか)

……おい、こんな所で喧嘩か?」


「ああ? こっちの勝手だろ────ってさっきの兄ちゃんじゃねーかよ」


「あっ……この間のお兄さん」


「いや、普通に店前で暴れられたら他の客が困るだろ。大人ならそれぐらいの常識持てよ」


「言うじゃねぇか、兄ちゃん。何だ? お前はこの店に用があるのか?」


「それがさ、新しく雇う用に若い男のメイド奴隷が欲しかったんだけど、中々いい奴がいなくてな。そんな時にあんたらが騒ぎ起こしてるし、聞けばそいつ奴隷なんだって?」


「ん? こいつか? ……ああ、そうだが?」


「ちょ、まだ奴隷じゃないですよ!!」


「なら話があるんだが、その奴隷を俺に売ってくれないか?」


「こいつをか? 兄ちゃん、相当な変わり者だな。

……そうだな、金貨60枚でどうだ?」


「(なっ、こいつ喧嘩売ってんの!?

普通の奴隷でも金貨15枚だって~!!)」



 男の馬鹿げた金額を耳にして、ソフィアがジタバタする。だが、優人からすれば丁度いい強さのマッサージとしか思えなかった。



「さすがに高くないか?

普通の奴隷でも金貨15枚だと思うが」


「細かいことは気にするなよ、兄ちゃん。他人から奴隷を買い取るんだ、値が張るのは当然だろ?」


「しかしなぁ……そうだ、ゲームをしないか?」



 法外な金額を要求してくる男に対し、優人はある提案をする。



「あ? ゲームだぁ?」


「ああ、『ストップ』で1ゲーム勝負して、もしあんたらが勝ったら金貨120枚でそいつを買う。俺が勝ったら金貨は1枚たりとも払わない」


「き、金貨120枚だと!? そんな大金、本当に用意出来るのか?」


「ああ、俺はこう見えても割と金は持ってるんだ」



 優人は金貨を数枚収納から取り出し、男達に見せつける。



「こんな風に収納に金貨を入れてるんだ。

……で、どうする?」


「ちょ、ちょっと話し合いをさせてくれ」



 男達は慌ただしく集まり、ヒソヒソと話し合いを始めていく。トリノは事態の急展開についていけてないようで、ただ呆然としていた。


 少ししてどうやら話し合いが終わったらしく、男が優人に目を向ける。



「そのゲーム受けてやる」


「そうか。なら今日は疲れたから明日の昼12時頃にここに集合でどうだ?」


「ああ、それでいいぞ。ビビって逃げるなよ?」


「まさか」


「あと、このガキは俺達が預からせてもらう。逃げられたりしたら迷惑だからな」


「まあ、それは仕方ないか」


「じゃあな兄ちゃん!! 明日が楽しみだぜ!!」



 男はまるで既に勝ちが決まったかのように豪快に笑い、トリノを連れて街の中へ消えていった。



「(ユート!! どうするの? 勝てるの?)」



 話の内容を聞いていて不安になったのだろう、ソフィアがいつもより真面目な表情で問いかけてくる。



「まあ、なるようにはなるし、秘策ならある」


「(秘策? 何それ?)」


「まあ、ここで話すのも何だし、とりあえず帰ろう。思っているより時間もたってるだろ?」


「(あ、そういえばそうだね~)」



 街の外に建てられている巨大な柱時計が夜の十一時を指していた。出かけてくると告げてからかなりの時間が経過しているため、部屋で心配しているであろうナナ達の元へと優人達は急いで帰るのだった。




優人の考えている策とは………………?

次回投稿12/6(火)13:00予定です

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