26話
「とりあえず、前の席に座ってくれ」
「はい」
優人と部屋に入ったリアは、指示通り対面の椅子に座る。
「とりあえず、最初は俺が出すいくつかの質問に答えてほしい」
「わかりました」
今までの三人の候補が全員泣いて出てきたので、どれだけ恐ろしい事がされるのかと身構えていたが、予想外な事にただの質疑応答をすると言われリアは少し驚く。
「じゃ、まず自己紹介からだな」
「はい、まず名前は―――――」
と、リアが自己紹介を始めたところで優人は真理眼の効果を適用する。
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名前:リア・ダルクネス
種族:獣人族(犬人)
性別:女(B:93、W:62、H:74)
年齢:21歳
職業:なし
職種:剣士、武闘家、家政婦
LV:31
HP:1540/1540
MP:870/870
腕力:2100
脚力:2600
頑丈:1700
知力:2100
運:720
特性:言語理解、嗅覚強化
スキル:剣術Lv5、体術Lv5、回復魔法Lv5、強化魔法Lv5、索敵Lv5、生活魔法LvMAX
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(普通に強ぇ………三歳も年上なのか)
と、一通り見終わったと同時にリアも自己紹介が終わる。
「じゃ、次は得意な武器は何だ?」
「得意な、武器ですか? 短剣や細剣ですね」
「なるほど。戦闘経験は?」
「はい、以前はよく狩りに出かけていました。
…………これ、メイドと関係ありますか?」
「まあまあ、大事な話なんだ。
………そうだな、もし立場が上の者から『少し協力してほしい事があるんだが、手を貸してくれるか?』と頼まれたら、何て返事する?」
「そうですね、断ります」
「その心は?」
「まず、大事な頼み事をするなら対等な立場の者にするのが妥当でしょう。その時点で自分の事をこき使うのが丸見えです。
そして頼み方に悪意がありますね。この聞き方だと『はい』や『わかりました』と言ってしまいそうになりますから」
「ん、いい答えだな」
「………本当に、この質問メイドに必要ですか?」
「必要だ。………最後は質問とは少し違う。
今からあるものを見てもらうが、これは他言無用でお願いする。もちろんオーナーにも、だ」
「はぁ、わかりました」
優人は収納から木箱を取り出す。
「収納持ちなのですね。冒険者ですか」
「いい観察力だな。少し、惜しいけど」
「そうですか。で、この箱を開けて見ればいいんですか?」
「そういう事だ、早速見てみてくれ」
「わかりました」
リアはテーブルに置かれた木箱の上蓋を開け、中身を確認する。
「――――――っ!? こ、これは………?」
そこにあったのは、男の生首だった。
「さて、これを見てどう思う?」
「どう思う、ですか」
「ああ、思った事を言ってくれ」
そう言われてリアは顎に手を当てる。
(見た感じではこれはただの老人の首………でも、わざわざ見せるということは何かある。となれば………)
考えをまとめ、リアは優人の方に向き直り言葉を発する。
「犯罪者か、それに加担した者、ですか」
「なるほどな」
優人はそれだけを口にし、また木箱を収納する。
「これで審査終了だ。戻ろう」
「え、これで終わりなんですか?」
メイドらしい質問が何一つなかったことに、リアはかなり驚いてしまう。
「ああ、その代わりここであったことは絶対に内緒な?」
「わ、わかりました」
何を考えてるかわからない、リアはそう感じたがすぐに部屋を出た優人の後を急いで追うのだった。
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「リアを買うことに決めたから」
部屋から出てきた優人の一言目がこれだった。
「まあ、ユートが決めたなら反対はしないけどさ〜」
「師匠、私も、反対はしない」
「悪いな、勝手に決めて。二人にもその内ちゃんと話はするから」
言ってる事と裏腹に不満が見え隠れしている二人を宥めて、優人はオーナーの方に歩いていく。
「オーナー、リアを買うことに決めた。幾らだ?」
「そうですか、では金貨十五枚ですね」
(まさかの家の三倍かよ……ま、それぐらいはいいや)
意外な金額を提示され優人は少しだけ驚くが、すぐに収納から金貨を取り出す。
「今回は割と勝手な検査とかやらせてもらったからな。少しだけ色をつけさせてもらうわ」
そう言って、オーナーに金貨20枚を手渡す。
「いえ、流石にこんなに貰うわけには………」
額が額なだけに、オーナーは完全に恐縮してしまっていた。
「いいんだよ、こちらとしては優秀な人材が手に入った訳だし、ついでの先行投資だ。
次回も、よろしく頼むな?」
「………!! ええ、こちらこそ!!」
ちゃんと本意が伝わったようで、優人は内心安心する。
「では、奴隷契約を行いますのでお二人はこちらに来てください」
優人とリアは、オーナーに付いて行く。
「奴隷契約には、主となる方の血を必要としますので、用意してもらってもよろしいですか?」
「ああ、わかった」
優人は手持ちの剣で小指を軽く切る。
「では、それを彼女に飲ませてください」
「ご主人様、お手をお借りしますね」
オーナーが言うや否や、リアが優人の手を取り切った小指を口に咥える。
と、リアの足元に何か円形の模様が広がる。
「…………はい、これで契約完了ですね。奴隷契約について、説明は必要ですか?」
「いや、別にいい」
後でリアに聞けばいいしな、と思い、優人は説明は断る事にする。契約が完了したリアが咥えていた指を離し、彼に向き直る。
「ではご主人様、このリア・ダルクネスが一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞ宜しくお願い致します」
「ああ、俺は御影優人だ、これからよろしく頼む」
「それでは一度、部屋の方に戻りましょうか」
「そうだな」
三人は元の部屋の方に向けて歩き出した。
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「自己紹介をさせてもらいます。
新たにご主人様に買われました、リア・ダルクネスといいます。
これからは何卒宜しくお願い致します」
「えっと、年上だからリアさんだね!!
ナナはナナって言います、こちらこそよろしくお願いします!!」
「私は、アイリス・ミィス、イリスでいい。
ナナと違ってバカじゃないから、よろしく」
「ちょっとイリスちゃん!? サラッと酷くない!?」
と、いつものように二人のコントが始まると、リアは意外そうな表情を浮かべ、優人の方に向く。
「ご主人様、その………」
「あー、言いたい事は分かるから、その話は後にしよう。
それと、そんなに堅苦しくならなくていいし、俺の事もご主人様って呼ばなくていい。
そういうのは慣れてないし、リアの方が年上だからな」
「そうですか。しかし主ではあるのでユート様と呼ばせてもらいます、それでいいですか?」
「ま、ご主人様よりはマシか。それでいい」
「ではユート様、この後の予定は?」
「そうだな、とりあえず冒険者ギルドに向かいながら今日の予定について話をしようと思うから、リアは俺達に付いてきてくれ」
「かしこまりました」
まだ堅いなぁ、と思いながらも優人はまだコントを続けていた二人を呼び、店を後にしようとする。
が、そこであることに気がつく。
「おいイリス、ソフィアはどこだ?」
そう、今回付いてきていた筈のソフィアが見当たらない。居れば絶対騒がしくなる、と思っていたのに意外と大人しかったので、今の今まで存在を忘れていたのだ。
「多分、あそこ。気を感じる」
と、イリスが指を差した先には、部屋の隅っこで爆睡している精霊がいた。
(あいつ何しに来てるんだよ…………)
優人は寝ているソフィアの首を掴んだまま、三人を連れて店を出るのだった。
メイドとか超鉄板ですよね〜
もう少し日常にお付き合い下さいm(_ _)m
次回投稿11/6(日)21:00予定です




