21話
お陰様で総PV1万超えました\(⊃‐^)/
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「久しぶりだな、優人」
「ええ、数ヶ月ぶりですね」
優人は思いもよらない人の登場により、攻撃の手を完全に止めてしまっていた。
「なあ優人、何があった?
お前がそこまでするのにも、理由があるんだろ?」
セシリアは真剣な眼差しを向け、優人に語りかけていく。
「こいつらは、俺の大事なものを汚した」
「…………そうか」
床にうずくまって倒れていたナナやイリスをちらりと見、セシリアはおおよその状況を理解する。
「優人、出来ればこいつは私に任せてもらえないか?
私の方でも厳罰に処すつもりだし、ここは私の顔に免じて頼む」
そう言って、深く頭を下げる。
「…………セシリアさん」
一度見たことのある光景により、優人は少し冷静さを取り戻しつつあった。
「わかりました、その男は預けます」
魔法を解除し、血塗れのボス男を地面に寝かせる。
「それと、簡単に頭下げ過ぎですよ」
優人が悪戯っぽく微笑むと、それにセシリアも笑って返した。
「そうか、やはりまだ不慣れでな」
そこに、セシリアの部下の騎士団員が現れ、ボス男を捕縛し連れ去っていく。
「じゃあ、私はこれで仕事に戻るとする。
優人、何かあったら王城の門番に私の名前を伝えてくれ。出来る限りは手助けするつもりだ」
きっと、あの村での出来事を知っているからこその配慮なのだろう。そう捉えた優人を他所にセシリアはそう言い残すと、部下と共に店の外へゆっくり足を運んでいった。そしてその直後、
「ユート!!!」
「うぉっ!?」
ナナが真正面から飛び付いてきた。どうやら回復魔法で痛みを治す事が出来たらしい。
「ナナ、落ち着けって」
「ユートのバカ!! アホ!! ボケ!!」
(ナナに言われると割とガチで凹むんだけどなぁ……)
そんな優人の気持ちと裏腹に、ナナはさらに強く抱きしめる。
「ナナ達のために怒ってくれるのは嬉しいけど、やりすぎは良くないよ!!!
優人が別人みたいになっちゃって、遠くに行っちゃったみたいで怖かったんだから………」
「師匠、今回は、師匠が悪い」
目の前で涙を流すナナを見ていると、優人の背中に暖かい感触が広がる。そして、優人の顔のすぐ横からイリスが顔を出す。
「師匠、あんまりやりすぎたら、いけない。
こんな事繰り返してると、危ない事になる。
だから、だから…………」
珍しくイリスが涙声になりながら言葉を紡いでいく。
「だから約束、二度と、こんな事はしないで」
少女の心からの声は、今度こそ確かに青年の耳に届いた。
「…………二人共、ごめんな」
優人はこの世界で最も大切な2人に抱き締められながら、「こいつらを泣かせる事はもうしない」と心に誓うのだった。
「優人の奴、見つけたんだな、大事なものを」
初めてあった時の光の無い目を知っているセシリアは、優人達の光景を遠くから優しい目で見守り、意味深な言葉を誰にも聞こえない声で呟いた。
―――――――――――――――――――――――
「家を買おう」
飲食店での一件の後、優人達は街をぶらついていた。そんな時に優人はこんな事を発言したのである。
「え、突然何よ、急すぎない?」
「師匠、説明を」
「いや、今回の事があったからさ、この国の宿で泊まると何があるか分かったもんじゃないだろ?
それならいっその事、家を買って住めばいいと思ってな」
「なるほどねー、確かにその方がいいかも」
「でも師匠、いくつか問題が」
「イリスちゃん、どういうこと?」
「ああ、俺が説明していこう。まずは不動産屋を探さないといけない点だが、それは問題ない、さっき聞いておいた」
優人は店を出る前、戻ってきた店員に不動産屋の位置を確認していた。かなり怪訝な顔をされながらではあったが、丁寧に対応して貰えたようだ。
「そして次に、家具なんかは別に今日用意しなくていい。明日みんなで見て回ればいいだろ?
あと、もし家がこの国の外れにある場合だが、その時は帰りに地竜を買っていけばいい」
「地竜?」
「なるほど」
首を傾げるナナと、縦に振るイリス。あまりにも対照的すぎる行動をとる二人に、優人は思わず笑ってしまう。
「まあ、地竜ってのは馬車の強化版みたいなもんだ。
乗り心地もいいし、頑丈で体力あるから重い荷物を長距離運ぶ時に使われるペットの一種らしいぞ?」
優人は王国に入る前に外壁の門前に止まっていた地竜を発見し、運転手にある程度の情報を得ていた。
「それいいね!ペットかぁ〜」
可愛いのを選ばないとな〜、とナナが浮かれた表情をする。
「師匠、まだあと一個、残ってる」
「ああ、家の大きさにもよるが、この中で家の掃除とか得意なのって多分イリスだけだろ?
でも今後はこの三人で一緒に動く事がほとんどだと思う。だけど家も放置してはおけないから、メイドを雇う必要がありそうだ、って言う事だ」
「でも、ただのメイドに、家は任せられない」
「え? そう?」
イリスの言う事は最もで、やはり赤の他人に家を任せるというのは少し危なっかしい所がある。だからこそナナの発言は危険だと優人は冷や汗をかいた。
「でだ、ここでイリスの出番だって訳」
「なるほど、奴隷商店で、奴隷を買えばいい」
「ご名答。だがこれも後回しだな。
とりあえずは家の場所と規模を確認してからだ」
「うん、さすが師匠、何でもお見通し」
そう言ってイリスは笑顔を優人に向ける。その姿はまさに天使そのものだった。
「…………っさ、さてそうと決まれば早速不動産屋に向かおう」
「ふふっ、師匠可愛い」
「ちょっとー? ナナもいるんだけどー?
何イチャついてるのかなー?」
「大丈夫、ナナも可愛い」
「うっ」
どうやら優人と同じ方法でナナもやられたらしい。少女の言葉は犯罪だという事を二人はしっかりと身に刻み込む。
「さ、さあユート早く行こっ」
「あ、おい引っ張るなって!!」
ナナは顔を少し赤らめ、優人を引っ張って早歩きで進んでいく。どうやら、この三人の中では最年少が最強らしい。もちろん、最弱はナナである。
数十分歩いて、目的地まで到着した。
「いらっしゃいませー。こちらにどうぞー」
建物に入ると中ではブース形式で店員が客に対応していた。優人達は呼ばれたところへ向かい、置かれていた椅子に腰をかけていく。
「本日はどのようなご要件でしょうか?」
担当の女性店員がありきたりなフレーズを口にする。
「家を購入したいんだが、一軒家で2階建て、庭付きでそこそこの大きさのもの、あるか?」
「なるほど、少々お待ちくださいねー」
そう言って店員は席を立ってどこかに歩いて行く。
「ユート、そういえばお金はあるの?」
「まあ、まだかなりあるから問題ないし、最悪この国の冒険者ギルドで有り余ってる素材を売り飛ばせばそこそこの額になる」
実際、優人の手元には金貨90枚近くが残っていた。
「お待たせしましたー。こちらの中からお選びください」
店員が戻ってきて、一つのファイルを差し出す。そこには優人の出した条件に当てはまる家がピックアップされていた。
三人は一つ一つ丁寧に見ていき、変わったものを見つけた。
「あの、これは?」
「あーそれですか、それはちょっとオススメ出来ませんね」
と、店員が嫌そうな顔をして答える。
「と、いうと?」
「いえ、この家を以前購入されたお方の情報によると何でも、出る、という事らしくて……」
「え!? 嘘っ!?」
「で、出る……」
店員の発言に、ナナは驚愕し、イリスは少し怯えていた。どうやら二人共、恐怖系には少し弱いらしい。
「じゃ、ここにしようか」
「は、はい!? ユート、本気で言ってるの!?
出るんだよ!? 出ちゃうんだよ!?」
「し、師匠、私も、その……」
「大丈夫だろ、幽霊なんざこっちから何かしない限り悪さもしてこないだろうし、こんな体験出来るなんて早々ないぞ?」
「そんな体験いらないから!!」
「幽、霊」
ナナは必死に抵抗し、イリスに至ってはかなり怯えだしていた。
「まあまあ、何とかなるから」
「むぅーーー。でも、家買うのはユートだから逆らえない」
「うん、師匠が大丈夫なら、私も頑張る」
「ほ、本当によろしいのですか?」
「ああ、問題ない。今日から住んでも問題ないか?」
「ええ、それはもちろんです」
「じゃ、決まりだな。いくらだ?」
「そうですね、一応事故物件となっておりますので金貨5枚でいいです」
彼の今までの経験から言うと銅貨1枚=100円なので、まさかの500万で一軒家が買えるという、何とも破格の金額である。
優人は収納から金貨5枚を取り出し、引換に家の鍵を受け取る。
「それでは、何かありましたらすぐにここにいらして下さい」
「ああ、ありがとう」
そう言って優人達はその建物を出た。
「ユート、この後どうする?」
日も落ちかかっていて、あまり色々出来ないことは明らかなので、優人は一つだけやる事にする。
「とりあえず、家に帰るまでの足が必要だし、先に地竜だけ買ってしまおう」
優人は教えられていた場所に向かって、足を進めていくのだった。
優人の買う家、どんな感じに仕上がっていくんでしょうね〜
次回投稿11/4(金)13:00予定です
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