20話
とりあえず20話目突破ですね〜
この調子で書き進めていきたいと思いますので、
読者の皆様これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
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名称:村長
効果:自分の治める村の村人達と念話が出来る。
やり方は特定の者の顔を浮かべ、『念話』と念じる。
念話は脳内で行われるので、頭に浮かべた言葉が相手の頭に浮かぶ事になる。
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(はぁ、中々便利な能力ではあるな)
揺れる馬車の中で、優人は新しく習得した特性の効果を確認していた。
「兄ちゃん達、そろそろ王国につくからプレートの用意しておいてくれよ」
王国に入るには、身分証明になるプレートなどを提示する必要があるらしい。
収納からプレートを取り出し、遠くにそびえ立つ城壁へと目を向けながら、優人は今後の行動に思いをはせていた。
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ルークラート王国。
フリスト大陸最大の都市であり、獣人族が国民の過半分であるこの国では、四大ギルドの中でも特に冒険者ギルドが盛んである。ラルの街のおよそ4・5倍はあると思われるその都市では、常に活気に溢れた露店通りを初めとして多くの店がひしめき合い、街道は日夜人で溢れかえっている。しかし大都市なだけに、やはり貧富の差は際立ってしまう。大通りを少し逸れた裏道には、貧しいが故に家を持てない者の集まりができ、その者達による暴動が後を絶たない。
そんな典型的な大都市で、優人達がいたのは国一番の図書館だった。
「ユート、こっちには無かったよ」
「師匠、こちらも、無かった」
優人の元に駆け寄り、小声でそう言う二人。
「そっか。悪いな、探し物に付き合ってもらって」
「ユートの頼みだもん、断るわけないよ」
「師匠のためなら何でも、する」
そんな二人の返事に、優人はどうしても照れてしまう。
「でもさ、何で無いんだろうね?」
「私も、何か変な気がする」
優人達が探していたのは、この国の成り立ちや種族間の争いなどをまとめた書物である。
しかし、何故か一向に見つからない。
受付の人にも尋ねたのだが、
「すみません、私もここの書物を全て把握してはいないのでそれには答えることが出来ません。
申し訳ありません」
と言われ、自力で探していたのだった。
「まだ探していない所もあるし、全部探し終えてから考えよう」
「うん。じゃああっち探してくるね」
「私は、こっちの方を」
「なら俺は残りを探す」
そうして、三人はまた別々になって書物を探して回る。
そして数時間後。
「全然見つかんなかったぁーーー」
結局それらしきものは何一つ見つけられ無かったので、優人達は図書館の近くにある飲食店で休憩をとることにした。
「こんだけ探して無いとなると、きっと何か理由があるだろうな」
「見せられない事が、書いてある、とか?」
「ああ。それか単に誰も書いてないか、だな」
「そんな可能性ってあるの?」
「別に、ない事は無いだろ。可能性は低いが」
「色んな可能性を、考えるべき」
「イリスの言う通り、色々考えた方が良さそうだな」
注文を頼みながら、会話を薦めていると事件が起きた。
「おう嬢ちゃん達、可愛いじゃねーか。俺らと向こうで一緒に飲もーぜ?」
声をする方を見ると、狼の様な見た目をした男数人がナナとイリスの間に立っていた。
「あ、いえ結構です」
「私も、そういうのは、いい」
ナナとイリスが誘いを断ると、ボスらしき男がさらに言葉を発する。
「おいおい、つれないなぁ〜
そんなヒョロヒョロのガキより、俺といた方がイイ事いっぱいあるぜ?」
知恵の足りない言葉遣いをする者にバカにされ少しムッとした優人だったが、別に言い返す気にはならなかった。
しかし、当の本人より怒ったのがナナだった。
「ユートの事をバカにしないで!!
ユートはアンタなんかよりずっと凄いんだから!!」
会話の流れ的に別の解釈をされそうだと冷や汗を流した優人。ただ、そうはならず狼男は豪快に笑いだした。
「ぎゃははははは!!!
このガキがこの俺様より凄いだって!?
みんな聞いたか!? こりゃ傑作だわ!!」
男につられて、他の男達も笑い出す。
自分の事をバカにされたからか、はたまた優人の事をバカにされたからかは分からないが、ナナは目に涙をため、顔を真っ赤にして怒っていた。
「ユートの事をバカにするなぁぁぁぁ!!!!」
ナナは右の拳を握ってボス男に殴り掛かろうとする。
しかし、ボス男によってそれは軽くあしらわれた後、前から首を掴まれ持ち上げられてしまった。
「おいおい、あんまり調子に乗るなよ女が。ほら、あんまり調子に乗ってると、首折れちゃうぞ?
お前は大人しく俺らと一緒に来ればいいんだよ!」
直後、ボス男はナナを地面に投げ捨てる。
「がはっ―――」
打ちどころが悪かったらしく、ナナは脇腹を抱えて体をくの字に折る。
ボス男はそれを見て、不機嫌そうに口を出す。
「ったく、その程度でかかってくるなよザコ女が。積極的なのはベッドの上だけにしておけよ?
ま、後でその巨乳は嫌というほど使うがな!」
そして、優人の方へ向いて提案をしてくる。
「おいガキ、そこの嬢ちゃん二人とも置いて立ち去れ。そうしたらお前だけは見逃してやるよ。
ま、そこのエルフはどう見ても子供だし、幼女趣味のない俺にとっちゃあんま価値ないけど、娼館でも行って預けりゃそっちの趣味のやつの役には立つだろう。たっぷり身体で稼いでもらうからな。
そこの狐女は俺の愛玩奴隷にしてやるから感謝しろよ?」
ブチッ。優人の脳内で何かが完全に切れた音がした。優人はあまりにも冷酷な声でボス男に告げる。
「お前は俺の最も大切なものを傷つけた」
「あぁ? ……っと」
ボス男は優人の雰囲気の急変に、少し気を引き締める。
「ほう、いい顔するじゃねーか。
………で? だから何なんだよ?」
優人はその問いに答えるかのように魔法を口にする。
「合成魔法、『無名』」
聞き慣れたその魔法名に、イリスが声を出し訴える。
「師匠、やりすぎちゃ、ダメ。……戻れなくなる」
しかし、その訴えは優人には届かなかった。
「『名』」
優人はゆっくり、『無名』を振る。刹那、ボス男の仲間の一人が細切れになる。
「……………う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
肉片に変わり果てた仲間を見て、他の男が恐怖に震える叫び声をあげる。
「『名』、『名』、『名』―――」
優人が『無名』を振るたび、最初の男と同様に他の男も肉片へと変わっていく。
そして、遂に残ったのがボス男たった一人になってしまった。
周囲の客や店員は余りの残虐さに腰を抜かしながらその場を立ち去っていった。
「お、おいやめろ、やめてくれ!!!!」
仲間が細切れになる所を全部見せられていたボス男は、あまりの残酷さ、非情さに心の底から震え上がっていた。
「さっきまでの威勢と違って、無様だな」
さらに冷酷な声で、優人はボス男を罵る。が、ボス男は自分が生き延びるのに必死なようで、優人の声などまるで耳に入っていない。
「お願いだ!! 命、命だけは!!!」
優人はそんな言葉には耳を傾けず、周囲の肉片の方へ向かって手を翳す。
「合成魔法、『無間』」
直後、そこにあったはずの肉片や大量の血溜まりが綺麗さっぱり消え去っていた。
Lv.5魔法のシリンダー系を全属性組み合わせて作られたそれは、対象を亜空間に閉じ込める魔法だった。亜空間内部から強力な攻撃をし続けると元の場所に戻れるが、肉片となったそれが戻ってくる事は二度ととない。
優人はその魔法を放った後、腰を抜かして震え続けていたボス男の方へ向き直る。
「合成魔法、『鉄条網の処刑』」
突如、ボス男を鳥かごのようなものが閉じ込め、地面から突き出た鉄の触手がボス男の四肢を拘束し、空中で大の字を作る。
更に地面から鉄製の茨のようなものが2本突き出してきて、ボス男の前後に位置を構える。
あまりにも異常なその光景に、ナナもイリスも動けず、言葉すら発する事が出来なかった。
「――――――――――――やれ」
優人の低い声に応じ、その茨はボス男の体を鞭打っていく。
「ガァァァァッ!!!!!
痛いっ!!! 痛い!!! やめてくれぇ!!!!」
「殺すなんて甘い事はしない。生きて苦しみを味わい続けろ」
鞭打つ茨はボス男が着ていた鎧を全て粉々に壊し、インナーさえも引き裂く。
ボス男の足元に血溜まりが出来る頃には、既に全身真っ赤に染まりあがっていた。ボス男はあまりの激痛に失神していた。
「もういい!! もういいから!!
ユートお願い!! もうやめて!!」
「師匠、お願い、戻ってきて……」
二人の悲痛な心の叫びが飛ぶが、やはり優人に届かない。
「――――――――もっとやれ」
優人がそう言葉にし、さらに茨を強く打ち付けようとしたその時。
「――――――――――――その辺にしておけ」
店の入口の方から、騎士姿の人が一人歩いてくる。
久しく聞いたその声に、優人は動きを止め、その人に向かって名前を呟いた。
「―――――――――セシリアさん」
怒れる優人の凶行、中々なものですね〜
次話では優人が…………?
次回投稿11/3(木)21:00予定です




