1話
「───ん!───さん!」
「お兄さん!!」
「うおっ…!」
少年に揺すられ、青年は目を覚ます。
「あ、よかった。やっと起きたね、大丈夫?どこか痛い所とかない?」
少年は心配そうに青年を見つめる。
「ああ、多分大丈夫そうだ。それよりここは?どうして俺はここに?」
青年は辺りを見回す。本棚や窓、自分のいるベッドからここが誰かの部屋であることはすぐ理解出来た。
「ここは僕の部屋だよ。お兄さんが森に続く小道で倒れていたから、僕とお父さんで運んできたんだよ。後はお母さんが看病してくれたんだ」
「そうか。すまないな、ありがとう」
青年は深々と頭を下げた。
「いいよいいよ。ところでお兄さん名前は?どこから来たの?」
「俺の名前は御影優人。どこからって言われたら、東京?」
その青年──優人は頭の中でプチパニック状態だった。目を開けたらどこの国の人か分からない少年がいるし、自称:神の女性から聞いた話も到底信じれる内容ではなかった。今どこにいるのかも分からない状況で、名前と出身を答えれただけ奇跡である。
「トーキョー? 聞いたことないなぁ。
で、優人さんはあんな所で何やっ──」
と、少年が言いかけた所で部屋のドアが開いた。
「あら、起きられたのですね。お気分はどうですか?」
多分この少年の母親であろう女性が、桶とタオルを持ったまま話しかけてくる。
「母さん!この人優人さんっていうんだよ!」
「あらそう。ルティ、優人さんにお水持ってきてあげて頂戴」
「うん!わかった!」
そう言うと少年は小走りで部屋を出て言った。
「ごめんなさいね。ルティったら村の外から人が来たらいつもこうなの」
「大丈夫です」
「ありがとうね。ところでこの後はどうなさる予定ですか?」
優人はすこし考えて、
「とりあえず、これ以上お世話になる訳には行かないので、すぐ出ていこうと思います」
と答えた。優人は早く一人になりたかった。自分の置かれている状況を確認しようにも、他人がいるとどうにもやりづらい。
「そうですか。出来れば今晩だけでも泊まっていきませんか?
ルティも優人さんともっとお話したいみたいですから」
「いいんですか?」
「ええ、もちろんですよ」
そこで、少年がコップを持って部屋に入ってくる。
「優人さん、はいお水!」
「ルティ、優人さんが今晩泊まっていくそうよ?」
「本当!?やったー!!」
「ああ、今晩だけな」
「まぁ、ルティったら」
コップ片手に大はしゃぎする少年を横目に、母親は小さく微笑みを浮かべる。
「あ、それと優人さん。荷物は扉の所にまとめてありますので」
そう言って、母親は少年を連れて部屋を後にした。
優人はコップを受け取った後、まとめられた荷物の元によった。壁にロングソードと短剣が1本ずつ立てかけられ、その横に袋が置いてあった。
「袋の中には――手紙と本だけか?まあ、とりあえず手紙でも読んでみるか」
コップの水を飲み干し、優人は手紙に目を通し始める。
次話は説明回になる予定です!
次回投稿10/27(木)0:00