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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈1章 ルークラート王国編〉
18/180

17話

お陰様で総PVが早くも5000を突破いたしました!

これからも、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m





「ほら!朝だよ!起きて!」


「あ、あと5分だけ………」


「早くしないと引きずってでも下に連れていくよ!」


「魔法の言葉、89・60・77」


「ちょ、何寝ぼけながら人のスリーサイズ暴露してんのよ!?

いい加減早く起きる!!」



―――ゴンッ。



「痛てぇ!!」


「はい起きた。

………ったく、どんだけ朝弱いのよ」


「うるせえ、お前は俺の親か」





 暖かい光が窓から射している優人の部屋では、朝から言い合う声が響いている。

昨日、ギルドから帰った後はナナの手料理を食べ、風呂に入って寝ることにした。その際、唐突にイリスが




「私、師匠と入る」




と言い出したのだ。

イリス曰く、ナナと入るとろくな事が無いらしい。

因みに何故か優人は師匠と呼ばれるようになってしまった。

これに対しナナが




「え!? そんなのずる……ゴホン、ダメに決まってるじゃない!!

イリスちゃんは女で、ユートは男なんだよ!?」




と猛反発した。最初の方は聞かなかった事にした。

するとイリスが




「問題ない、お爺さんとも、普通に入ってた。師匠とも、普通に入れる」




と言い返し、頑なに優人と入ろうとした。

 この後しばらく二人で討論が続き、結局全員別々で入る事になった。途中「三人で入る」という案が上がったが、唯一の異性である優人が全力で却下した。




「ほら早く〜王国に向かう馬車来ちゃうから!」


「ああ、そうだったな」




 ナナ曰く王国とラルの街との間には定期的に馬車が行き来しているらしい。彼の感覚に合わせればバスに近い。今日はそれに乗って王国へと向かう予定なのである。片道一日は掛かるが、十分な速度である。

 リビングに向かうと、先にイリスが椅子に座って待っていた。テーブルにはパンやサラダなどが並べられている。




「あ、師匠、おはよう」


「ああ、おはよう。あと、師匠はやめような」


「え、無理」


「反抗期かよ……」




 そんな些細な事でショックを受けている優人に、ナナが催促する。




「ほらほら!!

ユートもそんな所立ってないで早く食べるよ!!」




「はいはい」と、優人は空いた席に座り、朝食を取り始めるのだった―――




















―――――――――――――――――――――――








「ふぅーーー、風きもちいーーーー」




 ナナが馬車の窓から身を乗り出し、そう叫ぶ。

 朝食をとり、準備を終えた優人達は、王国へ向けて馬車に乗り込んでいた。




「ナナ、子供みたい」




 イリスがそう言って微笑む。この二人、精神年齢と実年齢が真逆である。




「お嬢ちゃん、危ないから戻ってな」


「はーい、ごめんなさいー」




 御者に怒られ、ナナはシュンとして馬車に戻る。





「おう兄ちゃん、もうそろそろ日が落ちるから今日は通り道にある村によるけど、それでもいいかい?」




 と、御者が提案をしてくる。




「ああ、頼む」


「あいよ」


「ちなみに、その村ってどんな感じなんですか?」




 ナナが御者に質問する。




「ああ、ハォの村つってなー、森や川が近いってこともあって中々いい所だぞ?

そういや、王国の偉いさんもお忍びで訪れているって噂だぞ」


「へぇー、凄いんですねー」




 ナナが御者と会話していると、優人の隣に座っていたイリスがずっと俯いていた。




「イリス、大丈夫か?」


「師匠、ちょっと、酔ったみたい」


「マジかよ、ちょ、どうしよ」




 優人は他人が酔ってる時の対処法を知らないので、見てわかるほどにオドオドしてしまう。




「師匠、落ち着いて。大丈夫だから、師匠はそのままでいて」




 そう言って、イリスは優人の太ももに頭を落とす。



(こ、これはいわゆる『膝枕』……)



 あまりに急な行動に、優人の心拍数が急上昇する。




「い、イリス?

しんどいのは分かるけど、この方がしんどくならないか?」


「大丈夫、ここ、落ち着く。だから、問題ない」




いや、ね、イリスさんや。

それ以上ヒットポイント削らないでくださいよ。

もう、俺倒れちゃいますよ?




 そんな事を思っていると、御者と話し終えたのか、ナナが会話に加わってくる。




「ちょ、イリスちゃん!?何やってるの!?」


「ナナ、うるさい、頭に響く」


「ナナ、イリスが酔っちゃったみたいで」


「だったら生活魔法かければいいじゃない!!」


「「あ」」




それは失念だった、てか知らなかった。

 優人は早速、絶賛膝枕中のイリスに向けて生活魔法をかける。




「イリスいくぞ―――『クリア』」


「…………あ、楽になった。師匠、ありがとう」




 そう言うとイリスはお腹に顔をグリグリしてくる。

ちょ、何でこの子まで積極的になっちゃってんの?




「イリスちゃん!! ユートから離れて!!」


「いや、ここが落ち着く」


「ダメ!! それはナナのものなの!!」




いや、ナナのでもないからね?

 と、そんな所で馬車が急停車する。




「ちょい兄ちゃん達!!

村には着いたんだが様子が変なんだ、見てきてくれないか?」




 御者が少し慌てた様子で告げる為、優人達は馬車から降り、村の方に目をやる。

目線の先の村は――――――静かだった。静か、という単語では現せない程に、村を静寂が包んでいた。




「ユート、これなんかヤバそうだよ……」




 優人の横に立っていたナナがそっと腕に寄り添ってくる。




「師匠、この空気、菌が蔓延してる」




 怯えた様子のナナとは対照的に、イリスは自身の力を使い原因を究明していた。




「イリス、そんな事わかるのか?」


「エルフは、精霊と仲がいい。空気中にいる、精霊が教えてくれた。村の人は、この菌のせいで倒れてる、らしい」


「それ一大事じゃん!?

ユート、何とかならないかな?」


「何とかっていってもなぁ。イリス、この空気を殺菌と浄化できたら村人は助かるか?」


「うん、精霊が何とかするらしい」




イリス超できる子!!

 と優人は内心でイリスを褒め倒す。だが、実際すごいのは精霊である。




「しかし、この空気を殺菌か浄化するなんて、どうやるんだ?

そんな都合のいい魔法があればいいんだが……………あ、あるわ」


「え!?あるの!?ユート早くやって!!」


「使ったことはないから、どうなるか分からないぞ?

ちょっと待ってろ」




 そう言って、優人は村に向かって手を翳す。




「よし―――合成魔法(ユニゾン)、『神聖なる光(セイクリッド・オーラ)』」




 翳した手から仄かに光る光が溢れ、村全体を覆っていく。

神聖なる光(セイクリッド・オーラ)』―――LvMAXの光属性魔法『光粒子砲(フォトンレーザー)』とLvMAXの生活魔法『クリア』の合成魔法であるそれは、使用者が敵とみなしたものを徹底的に排除する。

 見た目の暖かな光とは裏腹に、あまりにも強力過ぎる威力を秘めていたため、優人は使うのを躊躇っていたのだった。

 光に包まれている状態を数分間維持すると、光がすうっと消える。




「………よし、多分殺菌完了だ」


「ええっ!? 本当!?」


「ナナ、驚きすぎ。

…………うん、菌は消えたみたい」


「じゃあ、村の人の様子確認してくるー!」




 返事も待たずに、ナナは村へ駆け出していく。




「師匠、私は菌の原因を、精霊と探ってみる」




 イリスはイリスで、一人村とは別の方へ歩いて行く。



(行動派のナナと頭脳派のイリス、

この2人かなりベストマッチなんじゃないか?)



 二人の相性の良さを感じ取った優人は御者に村の安全を報告した後、ナナの後を追って村へと歩いて行った。






















―――――――――――――――――――――――










「いやはや、本当に助かりました。なんとお礼を言ったらいいやら」


「いえ、俺達もここで一日お世話になるんです。これぐらいは何て事ないですよ」




 村の殺菌を終えた後、村人達は死者を出すことなく全員が無事だったらしく、是非ともお礼がしたいとの理由で村の集会場で宴会が開かれていた。

 村人は全員が人間だったので、優人は久々の異世界感の無さを感じた。




「しかし、見た所かなりお若いのに相当な腕前をお持ちなようで。尊敬いたしますぞ」


「俺なんてまだまだですよ」


「またまた、ご謙遜を」




 村の村長らしき老人が、優人に尊敬の眼差しを向ける。




「ところで、結局今回の件の原因は何なのでしょうか?」


「それについては、彼女(イリス)から聞いてください」




 優人はイリスに会話のバトンを渡す。




「えっと、まず、今回の直接の原因は―――――」




 と、イリスは少したどたどしくも説明をしてくれた。

 イリスの話によると、村が利用している川から菌が発見され、さらにその川の根元になっている湖にも菌が発見されたらしい。またこの菌は増殖力が強く、数日でまた今回の様になってしまう、精霊でさえも見たことのない種類の菌なのだとか。




「ということは、この周囲一帯の菌を全て殺菌し、さらに湖まで一匹残らず殺菌しないといけない。

そういう事ですか?」


「はい、おそらく」




「何てこった」と、村長が頭を抱える。そして、優人の方へ向き、土下座をしそうな勢いで頭を下げる。




「旅のお方、どうかこの村を救ってくだされ。

依頼に見合う報酬は用意出来ないが、この村にあるものならなんでも、何なら人でも差し上げるつもりですので、どうかよろしくお願い致します」



(重い重い重い!!!

なんなのこの村長、勝手に村人の物とか村人自身を

報酬扱いするとか、どこのジャイ〇ンだよ…)



 心の中で色々愚痴るものの、ここで無視するのも何とも心が痛むので、仕方なく引き受けることにする。




「分かりました、引き受けましょう」


「本当ですか!?」




 村長が目を輝かせて、聞き直してくる。しかしこの時、優人としては素直に助けるつもりは無かった。それはイリスも同じだったらしく、二人は視線を合わせて頷き合った。




「その代わり、一つ欲しいものがあるんですが」


「何でしょう?

あげれるものなら何でも差しあげますよ!」



「そうですか」と、優人は一息つくとニヤリと表情を変え、





「それでは―――――――――村長の座を下さい」







 そう、誰の耳にも届くようにはっきり伝えたのだった。










17話終了です\(⊃‐^)/

次話では、優人が村長に……!?

次回投稿11/2(水)13:00予定です

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