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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈番外編 その後の話〉
179/180

とある家庭のクリスマスパーティー

 皆さんお久し振りですっ(*^^*)

唐突かも知れませんが、今日と明日の二日、2話分を投稿してこの作品を完結としたいと思いますm(_ _)m






 フリスト大陸には、クリスマスという概念は存在しない。全国で信仰しているのは唯一神であるウルシアでありその彼女の誕生日を祝う習慣など無く、そもそも一年十ヶ月の時点で地球の常識が通じないのは明白だろう。

 しかし、そんな中でも一人、御影優人だけは違っていた。




「ん~~~~~っ、それっだっちゃ!!」


「おおっ、凄いな」




 二月二十五日。森林地帯の傍に建てられた、屋敷の様な広さの一軒家の庭では優人と『土』を司る大精霊のソイが、地面から突如生え出た一本杉の前で何やら話し合いをしていた。




「こんなもんだっちゃか?」


「そう、だな……これって結構丈夫か?」


「それはもう大丈夫っちゃよ。ここら辺は緑豊かだから、たとえ魔法で植物を生成しても丈夫に育つっちゃ」


「そっか、それは何とも有り難い話だな」


「じゃあ、ボクは戻るっちゃね。

また夜になったら来るっちゃ」


「おう、また後でな」




 ふよふよと宙に浮きながらハォの村のある方へ飛んで帰っていく大精霊を見送った優人は、この後の自分の予定についてもう一度確認した。




(次は飾り付けだけど、流石に一人でこれに飾り付けるのは骨が折れるな……

ナナ達は皆料理に忙しいだろうし、それにそろそろアレを取りに行く時間だしな)




 自分の中で優先順位を振り直した優人は、近くの木陰で昼寝をしていた二匹の大精霊を呼び起こした。




「おい起きろソフィア、ズィナミ」


「ん、ん~……」


「……ふぁぁ~っ。あぁキミおはよう……」


「まだ昼間だぞシャキッとしろよ。

……取り敢えずズィナミはナナ達に『出掛けて来る』って言って戻って来てくれ」


「ん、りょ~かい……」




 まだ半分しか開いていない目を擦りながら、光の身体を持つ『力』を司る大精霊のズィナミは家の方へよろよろ飛んで行く。その間に、優人はもう一人の寝坊助の傍までやって来る。




「起きたか、ソフィア?」


「ん、ん~」


「おい……」


「ん、ん~」


「……アクアボール」


「ん、ん~────ぶべっ!?」




 声を掛けても一向に起きる気配の無い『知』を司る大精霊に、優人は初級の水属性魔法を当てる。サイズをうまく調節し、水風船ほどの大きさの水の塊がソフィアの顔にぶつかると、何とも情けない声を出してしまう。




「ケホッ、コホッ……ってユート!?

何でこんなサイテーな起こし方するのよ!!」


「さっさと起きない奴が悪いんだろ。

それよりも今から出掛けるから俺に保護魔法をかけてくれ」


「え~っ、ソフィアちゃん誰かのせいでビショビショに濡れちゃったからお風呂入りた~いっ」


「……へぇ」


「あっいえウソデスワカリマシタ……」


















─────────────────────────






 その日の夜、優人の家の庭には各地から大勢の者が集った。この日の為だけに大急ぎで用意された巨大な円形テーブルが幾つも庭に置かれ、その上には豪勢な料理が所狭しと並べられている。また、それとは別に方形テーブルにはボトルに入れられた高級そうなワインから子供達の間で人気のフルーツオレまで、多彩な飲み物も用意されていた。

 中でも一際目立つ、電飾やオーナメントで綺麗に飾られた一本杉の真下では、優人がワイングラス片手に皆の視線を一心に集めていた。





「皆飲み物は持ったか?」




 優人のその掛け声に、それぞれが声を上げた。




「じゃあ、乾杯の音頭はセシリアさん、お願いします」


「わ、私か? 頼まれたのなら仕方ないか……コホン。

 えー、本日は優人主催のパーティーに集まって頂き感謝する。日頃溜め込んだ物は一旦忘れ、今日ぐらいは飲んで食べて楽しもうではないか、という彼の粋な計らいに感謝するとしよう。

皆、今夜ぐらいは思う存分楽しんでいってくれ、乾杯っ!!」



「「「「「「「乾杯っ!!!!」」」」」」」




 唐突に指名されてもしっかりと司会をこなすセシリアに満足げな表情をする優人。そうして始まったパーティーは、レイやルル、ブラス等のアドゴン国の者達やカノン、フルガ等のハォの村の者達、更にはイルギスやナナの両親など、優人や優人の身の回りに居る者達の関係者が数多く招かれていた。




「……うん、たまにはこういうパーティーも悪くは無いかな」




 自分が主催したパーティーで、多くの者が楽しげに談笑し自分の愛する者達が丹精込めて作った料理を美味しそうに頬張る、それが優人には堪らなく幸福だった。こんな自分でも、これだけの人数を幸せに出来るんだ、その事だけで十分に満足を得ていた。それだけでも、今日のパーティーを開いた事には価値があるだろう。




「……四人も、後で喜んでくれるといいな」




 そんな意味深な言葉を呟き、優人は自分の元へ駆け寄って来るナナ達四人に微笑んだ。


















────────────────────────






「やっぱ、後片付けがしんどいよな……」


「アハハ……」




 テーブルに残った皿を一枚一枚割らない様に丁寧に重ね、それを両手で持つ優人。彼の嘆きに同意しつつ苦笑いを浮かべるナナも両手で皿を抱えると、食器洗い担当のニレとイリスの所まで運ぶ。

 これを何度も繰り返して漸く食器類を全て運び終わり、テーブルも庭の隅へ運び終えた優人達は未だ綺麗な装飾の施された一本杉の真下に集合した。




「いやーお疲れ様。何とかパーティーも乗り切れたよ」


「お疲れ様!! いやー、楽しかったね!!」


「そう、だね。思ってたより、楽しかった」


「そうですね。久し振りにブラスさんとも話せましたし」


「私も、ブラスさんと話せたのは嬉しかったです」




 それぞれが今日の感想を述べ、皆が皆満足した事を聞いた優人は頷くと大事な話を切り出した。




「俺の元いた世界では十二月二十五日は大切な人達と過ごす日なんだよ。でもこっちの世界には十二月は無いから、一年と二ヶ月って事で今日をその日にしたんだ。だからこうして、今まで世話になった人達を呼んでパーティーを開けて良かった」


「ユート……」


「で、本当はその日は最も大切な人にはプレゼントを贈る日なんだ。

……だから、四人には俺からプレゼントを送ろうと思う」


「「「「ええっ!?」」」」




 優人のその発言に、四人は同じくして声を上げてしまった。こんな話は聞かされていなかったのだろう、彼なりのサプライズ演出と言う訳である。

 驚く四人に構うことなく、優人は収納から大小様々な、赤いリボンでラッピングされた緑の箱を四つ取り出した。




「ニレにはこれだな」


「あ、ありがとうございます」


「リアにはこれだ」


「ありがとうございます」


「イリスにはこれ」


「ありがとう」


「そしてナナにはこれだ」


「ありが……ってナナのだけ何か小っちゃくない!?」




 ナナ以外の三人が両手で持つほどのサイズに対し、彼女のは手のひらサイズである。流石のナナもこれには驚き声を上げてしまう。




「大丈夫だって。取り敢えず皆、開けて中身を確認してみてくれ」




 彼のその言葉に合わせ、四人はリボンを丁寧に解き包装紙を剥がしたり箱の蓋を取ったりする。




「……あっ、私のは新しいメイド服です」


「私のは最近流行りの高級櫛に手鏡、それとハンドクリームですか」


「私のは、杖。しかもこれ、結構上質」


「…………」


「な、ナナ? 何を貰ったの?」




 それぞれがプレゼントの中身を確認する中、一人確認したまま固まってしまったナナにリアが声を掛ける。するとそれを待っていたかのように突然喚き始めた。




「見て!! ナナの!! 指輪だった!!」


「ゆ、指輪?」


「さ、全員見たところで一人ずつ説明しようかな。

まずニレ。ニレのそれは特注品だ。海棲族特有のヒレや鱗でもメイド服が傷つかない様になっている。ニレがよくそれで悩んでたのを思い出してな」


「あ、有難うございますっ」


「次にリア。まぁ、うちで一番家事を頑張ってくれてるのはリアだからな。髪の毛とか手とか傷むのはやっぱり俺としても申し訳ないと言うかなんと言うか……ま、まぁそういう事だ」


「ユート様……」


「で、イリスのは前の魔王幹部と戦った時に杖結構ボロボロになってただろ?

だから、こないだ新しく作ってみたんだ。前のを参考にしてるから使いやすいと思うぞ」


「師匠、ありがとう」


「そして最後にナナだけど、まぁ、その、何だ。

……何て言ったらいいんだろうなぁ」


「何かナナだけ酷くない!?」


「い、いや違うんだ。その……あれだ、お揃いのって今まで殆ど無かっただろ?

だから、ほら」


「あっ……」




 照れ臭そうに自分の左手を見せる優人。その薬指にはナナの手の中にある箱の中身と同じ、何の彫刻も無いシンプルだが白い輝きを放つ指輪が嵌められていた。

 こちらの世界には結婚した際に指輪を薬指に嵌めるという習慣はないが、その事を以前に優人自身から聞いていた為、ナナもそれが何を意味しているのかは理解出来た。




「その、一応俺達も結婚してるわけだし。こういうのもアリかな、って……」


「…………」




 彼のその言葉を受け、ナナは無言でそれを自分の左手の薬指に嵌める。そしてそれを彼に見えるように持ち上げると、はにかんだ。




「えへへ、これでお揃いだねっ!!」


「あ、あぁ。うんそうだな。似合ってるよ」


「っ!! ゆ、ユートそれは卑怯だよ~っ!!」


「……何でしょう、このスイーツより甘い感じは」


「ニレ、慣れましょう。これからもっと続くでしょうし……」


「「「はぁ……」」」




 いきなり始まる二人だけの桃色空間に、取り巻き三人は思わずため息をシンクロさせてしまう。

 と、そんな超羨まし空間から帰ってきた優人は、四人を見渡して、そして自分に言い聞かせるように呟いた。




「その、さ。皆も知ってるように俺は前の戦いで力を失ってる。

だから前以上に皆に迷惑がかかるかもしれない」


「そ、それは」


「分かってる。だから、俺が言いたいのはその、つまり、だ。

これからもよろしく頼むな」



「うんっ!!」「「はいっ」」「うん」




 四人から飛び切りの笑顔を貰い、優人も思わず穏やかな表情になってしまう。そんな五人を見守る様に聳え立つ一本杉は、珍しく空気を読んでいる精霊達によって煌びやかに光を放つのだった。




ほんのりとしたクリスマス、これこそクリスマスだよ(´-ω-)ウム




次話投稿は12月26日(火)13:00予定です。



今まで読んできた中で、面白かったシーンとかあればお聞かせ下さい(*^^*)

感想等、待ってま〜す(ノ*°▽°)ノ

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