18話
「…………ん」
「ユート!!ユートぉっ!!!!」
「…………」
長いフラッシュバックから優人が目を覚ますと、それに気が付いたナナが涙で濡れた顔を胸に押し付けている。
泣きじゃくる彼女の頭を擦りながら周囲を確認すると、どうやら元のブロック部屋に戻って来たらしい。
暫く泣いていたナナも、普段と様子の違う事に気が付いたのか涙をグイっと拭いて優人の顔を見つめる。
「ユート?」
「……ごめん」
「えっ———きゃあっ!?ユート!?」
優人は無意識の内にナナの胸の中に顔を埋めていた。
幸か不幸か、いつの間にか胸当てを外していた彼女の柔らかい双丘に沈み込んだ顔は少しだけだが震えているように見えた。
ナナは特に何も言わず、自分がされたように頭を撫でた。
そのお陰で気持ちが落ち着いたようで、優人はその体勢のまま話し始める。
「……ナナ」
「うん」
「俺さ、夢の中で姉さんとまた会えたんだ」
「うん」
「なのにさぁっ……何でもう会えないんだよぉっ!!
やっと、やっと会えたって言うのにっ!!
幾ら何でもあんまりじゃねーかよ!!」
「うん」
「しかもさ、フラッシュバックを起こしてたのも姉さんでさ、俺にハォの村の人やイルギスさんやレイ、ルル、ニレにリアの様子を見せるんだ。
……皆俺に感謝しようとしてるんだ、それが嬉しくてっ……!!」
「うん、うんっ」
「ズルいんだよ姉さんはぁっ!!
与えるだけ与えておいて、何で恩返しさせてくれないんだよっ!!」
「うん、うんっ」
抑えきれなくなって吐き出された感情を全て受け止めるナナ。
もちろん優人もそれがただの八つ当たりの様になってしまっている事は分かっている、だが自分を抱き締めてくれているナナの優しさについ甘えてしまう。
「ユート。お姉さんだってユートと同じ気持ちだったと思うよ。
もっとユートと一緒にいたかったと思う」
「ナナ……」
「だからさ、お姉さんの為にも笑っていようよ」
「っ……」
「戦いを終わらせてさ、家に帰ってニレちゃんに怒られてソフィアちゃんをユートがいじって、イリスちゃんにからかわれてリアさんに慰められてさ。それでアクエリアスちゃんやズィナミちゃんも一緒に皆でご飯を食べよう?」
「……ああ、そうだな」
(姉さん、どうやら俺は幸せにされる側みたいだ)
心の中でそう呟いた優人はナナの胸元から顔を上げ、真っ直ぐ彼女の瞳を見つめて言葉にする。
「ナナ、ごめん、ありがとう。
……行こうか、この戦いを終わらせに」
「うん、行こう!!」
立ち上がった二人は銀次の亡骸を回収し、手を取り合い、視線の先にある扉に向けて一歩を踏み出していった。
後悔や憎しみ、迷いや葛藤は全てこの部屋に置いて。
愛しい姉との別れに打ちひしがれるも、今は昔と違って慰め受け止めてくれる者がいる。
次回、感動のフィナーレとなります!!
次回投稿は10月26日(木)13:00予定です。
※誤字脱字、感想等何でもお待ちしています(*^^*)




