8話
何とか10月26日には本編完結させたい……っ
それはそれとして、かなりご都合展開になりますのでご了承くださいm(_ _)m
「ら、ラーダ、なのか?」
「久し振りだな、セシリア。
……で、その奥にいるのが魔族の幹部で間違いない、か?」
「ええ、初めまして。私は魔王幹部のメロウと言います」
「そうか」
大股でメロウの方に歩いていくラーダ。手には紅い片手剣のようなモノが握られている。
そしてセシリアの横までやって来た彼はメロウに向かって一つだけ質問した。
「一つだけ聞きたい、以前スイレン山に向かった俺の部下を行動不能にしたのは、お前か?」
「部下……?ああ、でも確かにスイレン山で武装した者達を一度倒した事はありましたね。
割と最近の話だったかしら、あの時は少しだけ楽しかったわね」
「……そうか」
そう頷いてラーダはセシリアの方に目を向ける。
「悪いがセシリア、こいつは俺に譲ってくれ。
もうすぐ魔法部隊の連中もここに駆けつけるだろうから、先に進んでいてくれ」
「ら、ラーダそれは───」
「頼む、お願いだ」
頭を下げるラーダを見て、セシリアは焦ってしまう。
彼女は今までの一度だって、こんな風にして頭を下げてくるラーダを見た事が無いのだ。
彼がどんな思いで頼んでいるのかは分からない、がその気持ちは汲んでやりたいと、そう考えたセシリアは彼にでは無く、他の隊員達に命令を出した。
「……海地連合精鋭隊、アドゴン国衛兵隊は右側の、王国第三騎士隊は左側の扉を行け」
「た、隊長っ!?」
「セシリア……感謝する」
「話は纏まった?
先に進むのは勝手だけど、せめて私を満足させてよね?」
微笑むメロウを視界から消さない様に細心の注意を払いながらも、隊員達は左右の階段を上っていく。
しんがりを務めていたセシリア、ブラス、優人、ナナ達も二階の扉の向こうへ消えた所でメロウが再びラーダに話しかける。
「一気に人が減ったからどうも寂しいわね」
「……戦う事には必要のない事だろ」
「せっかちね、こんな美女とお話しするのは嫌い?」
「……」
「あー、わかったわかった、戦えばいいんでしょう?
どうしてこう男は気性が荒いのかしら…………」
ブツブツ呟くメロウはパチンと指を鳴らした。するとまたしても大扉が閉じてしまう。
「また外にモンスター、か?」
「違うわ、さっき他の人間も来るって言ってたじゃない?
だからこうしてここに来ない様にしたの。
ああ心配ないわ、扉の前に上の階に続く階段を作っておいたから」
「……お前は敵か味方かどっちなんだ?」
「さぁ?私にも分からない。
魔王様の命令だからこうしてるだけだもの。
そんな事より……始めましょう?」
「─────っ!?」
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タッタッタと、枯れ木林の中を駆けて行く足音は乾いた地面に吸い込まれていく。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ったく、だから言ったじゃない。
さっきの道を左に行った方が良いって」
「はぁ、はぁ……だって、はぁ」
「まぁいいわ、そのお陰って訳では無いけど、皆に合流しなくて済んだんだから。
ただ、急がないと出番無くなっちゃうわよ?」
「はっ、はっ……分かって、る」
「そう、ならいいわ。
でもさっきより走る速度落ちてるわよ?」
「はぁ、はぁ……分かった」
「……あら?あれは……階段?
外にあるなんて珍しいわね、まるで私達を歓迎してるみたいじゃない。
まぁ、楽に上の階に行ける訳だから感謝しない事も無いけど」
「はっ、はっ……相変わらずの、ツンデレ?」
「そ、そんなんじゃないわよっ
……ほら、もう一息よ頑張りなさい」
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二階の扉を通る前、階段を上っている時にナナが小声で何やら質問していた。
「ねぇユート。ラーダさん、大丈夫かな?」
「俺に分かる訳無いだろ、そんなこと」
「で、でもだったらユートが一人でパパ―っと倒しちゃった方が……」
「そんな無粋な真似出来る訳無いだろ?
……ナナ、男にはどうしても戦わない時ってのがあるんだよ。
ラーダにとってのそれが今なんだろ」
「うーん、ナナ女だから分からないや」
「それでいいと思うぞ」
少し残念そうにするナナを宥めながら、優人はもうすぐ目の前に迫りくる扉の向こう側について思いを馳せる。
(一階入ってすぐの所にメロウがいたという事は、多分この扉の先にも幹部のどちらかがいるって事だよな。
入ってすぐに戦闘開始って事は恐らくないだろうけど、ある程度用心した方が良さそうだな)
そんな事を考えながら扉を開けると、そこは正方形だった一階の空間とは異なり、綺麗な円形の空間だった。
天井は高すぎて先が見えない、が所々にある燭台のお陰で空間は明るかった。
階によって部屋の構造が大きく異なる事にも驚きだが、優人が驚いたのは────
「ぶ、ブラス?」
「セ、セシリア……それに他の者まで……
一体、どうなってるんだ?」
真逆の方向に向かう筈の扉を通った両者が、同じ部屋に集っていた事。
何が起こったのかと慌てる隊員達を見て、誰一人として状況を理解できていない事だけが窺える。
「ゆ、ユートこれってどうなってるの……?」
「……多分、魔法陣だな」
「ああ正解だ!!」
「「「「!?」」」」
突然響く男の大声に、優人もナナも、他の者も皆声が聞こえてきた方向を一斉に見上げた。
そこにいたのは、壁から出た出っ張りに腰を下ろしていた悪魔そのもの。
見た目だけでなく、声、雰囲気までもがその異質さを示していた為、多くの隊員達が身震いしてしまう。
「御影優人って言ったか?
お前の推測で正しい、どっちの扉にもここの部屋に飛ぶように魔法陣が用意されていたのさ」
「ちっ、罠と言う訳か!!
総員、撤────」
「させる訳無いだろ?」
危険を予感したセシリアが一階へ引き返そうと指示を出したその瞬間、先程まで扉があった部分が壁と変わってしまった。
「なっ!?」
「おいおい、来てすぐ帰るなんてつれない事言うなよー
せっかくだ……楽しもうぜ?」
悪魔は、ニヤリと口角を上げた。
ラーダとメロウの一騎打ちが始まる中、優人達は新たなる刺客と遭遇して……!?
次回投稿は10月13日(金)13:00予定です。
※誤字脱字、感想等何でもお待ちしています(*^^*)




