7話
な、なんと気が付けば総合PVが70万を突破していました!!
これだけの回数読まれていると思うと、作者の手は震えが止まりません(汗)
ここからは最終話までノンストップで行きたいと思いますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
一時間程枯れ森林地帯を歩いたが、結局何も無かった。
「む、先に海地連合精鋭隊が到着していたか」
「セシリア様、こちらの道には何もありませんでした。
ただ枯れ木と土のみです」
海地連合精鋭隊の指揮者と思われる黒銀の鎧姿の男性がセシリアに一通りの状況説明をしている内に、ブラスが率いていた隊も無事合流出来たようだ。
「遅くなって済まない。
アドゴン国衛兵隊、ここに無事到着した」
「どうだった?何かあったか?」
「いや、大したものは特にこれと言って何もなかったな。
枯れ木を調べたがただの枯れ木だった」
「そうか、報告ご苦労」
セシリアとブラスはどこか似た雰囲気があった。誰かがそう指摘した訳でもないのだが、少なくとも優人はそう感じていた。
目の前には異質な雰囲気を纏う、ぱっと見5~6階建ての宮殿の様なもの。
優人もナナも、その場にいた誰もが、目と鼻の先にあるそれから感じ取られる気にあてがわれ、息を呑み込んでしまう。
「ではこれより魔王城に突入する。
各自最大限に警戒し、武器を構えよ」
そう言ってセシリアは勢い良く、建物の玄関扉であろう大扉を押し開く。
するとその扉の先に広がっていたのは、外見通りの大広間。
「何も、ない……か?」
開け放たれた大扉から差す以外に明かりが存在しないために、セシリア達は扉付近の情報しか得る事が出来ない。
だが一人、最も有益な情報を与えた者がいた────優人だ。
「セシリアさん、この先に誰かいます、気を付けて下さい」
「それは本当か、ユート?」
「ええ、俺の索敵に一つだけ敵の反応がありました。
多分、この空間の先ですね」
「そうか。しかしここで足を止める訳には行けないからな……
総員、松明を用意し隊列を崩さずに建物内の探索を開始せよ」
「「「はっ!!」」」
セシリアの一声により、大扉前で構えいていた全隊員が収納の中から松明を取り出し、それに簡単な火魔法や火打石で火を灯した。
そうしてセシリア先導の下、魔王城の中に足を踏み入れていく隊員達だったが…………
────バンッ!!!
「だ、誰だ扉を閉めたのは!?」
全員が建物内に入ったその瞬間、何故か唐突に大扉が閉じてしまった。
勿論、このタイミングで扉を閉める様な馬鹿な判断をする隊員が居る筈も無く、そんな隊員が居れば誰かが止めるだろう。
だからこそ先導していたセシリアは振り返り、声を張り上げた。
……しかし、それに対する返事は彼女の予想とは違った方向から返って来た。
「───さて、誰でしょう?」
「っ!?」
空間の奥のその先、何かがいると優人が指摘していた方向から聞こえてきた、聞いた事も無い女性の声に周囲はザワつき、セシリアは嫌な汗をかいていた。
「その声……メロウだろ」
その中でもやはり、その声の主が誰かを知っていた優人だけは冷静に言葉を発していた。
「あら、簡単にバレてしまったみたいですね……仕方ありません」
声の主・メロウがそう言葉を漏らした途端、目を痛めそうになるほどの光が天井から降り注ぐ。
その光は優人達が居た空間全体を照らし、その場の様子を明るみにした。
赤色の絨毯が隙間なく敷かれ、天井に幾つもぶら下がっている豪華なシャンデリアが建物二階分ほどある空間を照らし、横壁には王宮で見られる様な美しくも複雑な模様が施されていた。
更に中央の左右には上の階へと続く階段があり、その先にはどちらにも扉があった。
そして部屋の中央付近で固まっていた優人達の前に現れたのは、大扉の向かいの壁に寄り掛かる深紅のドレスに身を包んだメロウ。
見た目だけで言えば人間なのだが、彼女から発せられるオーラ的な何かによってその考えは即座に切り捨てられた。
「そうね、取り敢えず自己紹介からでも始めましょうか。
私の名前はメロウ。魔王様の幹部の一人よ」
「……貴様がメロウか」
「あら、私の事を知ってるのね」
「それより、どうやって扉を閉めた」
「んー、そうねぇ。あなた達に分かりやすく─────」
「お前じゃないだろ?」
周囲に警戒をしつつ、ざわつく隊員達を代表してセシリアが問う。
メロウが頬に手を当て何かを話そうとするそのタイミングで割って入って来たのが、またしても優人だった。
「───へぇ、知ったような口を利くのね」
その事が意外だったのか、目を細めたメロウが優人をじっと見つめる。
「ああ、俺の索敵に引っかかってさっきから大量に増え続けている敵マークがあるからな。
どうせそいつらが閉めたんだろ、予めそう言う指示を出してたら良いだけの話だし」
「……つまらないわね、その通りよ。
ま、そんな話は置いといて、どうする?」
優人に指摘されたのが気に食わなかったのか、少し不機嫌になったメロウは凭れていた壁から体を離し、優人達の方に向かってゆっくりと歩き始めた。
「無論、ここでお前を倒し、先に進ませてもらう」
「私と戦う?なら相手してあげるけど……
両隣にあるあの扉は自由に行き来出来るわよ?」
「……それは、私達に背を向けて逃げろと?」
「それは好きに捉えて貰っていいわよ?」
「くっ、ふざけるな!!」
メロウにからかわれてか、セシリアは感情の趣くままに剣を握りしめる。
隊員達も不必要になった松明を収納に入れ、臨戦態勢に入っていた。
「元気があるのは良い事だと思うけど、些か血の気が多いんじゃない?」
「元よりお前達を倒す為に来たんだ、それぐらいの気が無いとやっていけないだろ」
「言われてみればそれもそうね。
じゃあ……始めましょうか?」
「……?」
「どうしたの?ユート」
各々が汗ばむ手で武器を構える中、優人だけは何故か大扉の方に目を向けていた。
変に思うも優人と同じ方向を見るナナだったが、十秒もしない内に彼の行動の理由を知ることになった。
─────バンッ!!
「な、何────え?」
「……へぇ、意外な所からお客さんが来たものね」
モンスターに囲まれていた筈の大扉を再び開け放ったのは、獅子顔の男だった。
不敵に笑うメロウの元にやって来たのは、復讐だけを求めたラーダだった。
彼は復讐を遂げることが出来るのか?
次回投稿は10月12日(木)13:00予定です。
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