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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈最終章 魔王城編〉
164/180

5話






「皆集まっているか?」




朝日がほんの少し顔を覗かせる大草原に、セシリアの良く通る声が響き渡る。




「王国第三騎士隊、全員揃っています」


「アドゴン国衛兵隊、全員揃っているぞ」


「魔法部隊第一、第二共に揃っている」


「海地連合精鋭隊、全員揃っているぞい」




腕を組み、堂々とした態度でいるセシリアに報告を上げるのは、五つ用意された飛空艇それぞれに乗り合わせる各部隊の最高責任者達。

その中にはマールやブラスなどの顔ぶれも存在している。

今回においてセシリアは優人達と別の小飛空艇に乗り、単騎行動を取るため第二騎士隊の最高責任者はマールになっている。ブラスは衛兵隊長に返り咲いていた。




「ではこれより、南の果てにあると言われている魔王城を目指し、各隊飛空艇に乗って行動してもらう。

……が、その間に少しだけ話をさせて貰う」


(演説か、さすがセシリアさんと言った所か)




第三騎士隊の集合している辺りの最後尾から見物していた優人は、隣で終始驚きっぱなしのナナをよそに彼女の演説に耳を傾ける。




「私が今まで生きてきた中で、魔王が我々人類種に行動を仕掛けてきた事は全くと言っていい程無かった。

しかし我が王国第二騎士隊を人体実験に利用し、魔物を操り国を滅ぼそうとし、アドゴン国の王宮で悪事を働き、アドゴーン山を噴火させ……

これ以上奴らの行動を放って置けば更なる被害に見舞われる事は、ここにいる者なら周知しているだろう。


だからこそ敢えて言わせて貰おう、我々は『正義』の名の下に奴らを、魔王を倒しに行く!!

犠牲を恐れるな、痛みを恐れるなら今すぐこの場から立ち去って貰いたい!!」




セシリアの呼びかけに応じる者は、もちろんただ一人もいない。



「……皆の覚悟、しかと受け取らせて貰った。

相手は人類では到底敵う相手ではない、その事は重々承知の上だ。

だが愛する者の為、民の為、自分の為……この戦い、是が非でも勝つぞ!!!」


「「「「ぅおおおおおぉぉぉぉっ!!!!!!」」」」




セシリアの掛け声と共に、周囲の者の士気が最高潮まで高まるのが身に染みて分かる。

それ程までに彼女の演説、言葉は人を動かす力があるのだ。



(いつ見てもあの人は本当に凄いな……

どれだけ力があっても、この差だけは埋まる気がしないよ……)




優人個人もその言葉に感情を揺さぶられながらも、乗船を開始する兵を避けながら手招きするセシリアの下に近付く。




「さすがですねセシリアさん、かっこ良かったですよ」


「ありがとう、あれで皆の士気が上がってくれるのなら何度だってやるさ。

それ程、今回の戦いは厳しいものになるだろうからな。

っと、私達もそろそろ乗ろう、この飛空艇の裏に小型があるからそこまで向かうぞ」




そう言って移動を開始するセシリアの背中は、太陽の光を受け普段よりも凛々しく優人達に魅せた。


















─────────────────────────







「…………上手く、乗り込めた」


「当たり前よ、あたしの能力で倉庫に潜入はすぐに出来るもの」


「…………セシリアさん、かっこ良かった。

師匠も、見惚れてた」


「そりゃあ、あんな大演説聞かされたら誰でも魅了されるわよ」


「……うん、気合、入った」


「そう、なら向こうでは精一杯見せ付けてやる事ね。

あたしは殆ど攻撃に参加できないから、指示だけださせてもらうわ」


「うん、ありがとう。頑張る」


「……大丈夫よ、何もかも上手くいく、あたしが保証する」


「……うん」


















─────────────────────────






飛空艇による移動から2、3時間が経過し、太陽もそこそこまで昇り始めた頃、一番先を進んでいた海地連合精鋭隊から連絡が来た。




『海地連合精鋭隊からの報告。

漸く大陸から抜け出し、海に差し掛かる。見えている島は三つ、その内の側近の二つは見た感じでは植物の生えていない平地だが、そこからずっと沖にある島は木々が鬱蒼としてる中、中心だけがぽっかり空いている様な見た目をしている』


「こちらセシリア、状況は了解した。

側近二つは無視し、上空を進んでもらって構わない。

しかし油断はせずに魔法第一部隊と並進するように」


『海地連合精鋭隊、了解した』


…………ブツン。




「ふぅ」


「お疲れ様です、状況は結構ハッキリしているみたいですね」




軽く息を吐くセシリアの背中側から声を掛けたのは、同乗している優人。




「ああ、魔王城らしきものは発見出来てないがこの様子だと時間の問題だろう。

奴らも昼間っから攻撃を受けるとは思ってもいないだろうし、良い奇襲になるはずだ」


「そうですね、このまま順調に行って貰いたいものです」




飛空艇のフォーメーションはセシリアの考えた独特な構造になっている。

先頭を先程述べた海地連合精鋭隊と魔法第一部隊、その二隻の間斜め上後方に魔法第二部隊、そこから真横斜め右下で先頭二隻よりも低位置に王国第三騎士隊、真逆にアドゴン国衛兵隊、といった感じである。

因みに優人達の乗っている小飛空艇は地上に近い辺りを進んでいる為、最も安全な場所だと言えよう。



ここまで優人の言う通り順調だったのだが、彼の余計な嫌な予感(フラグ)のせいで事態は唐突に一変する。




『こちら海地連合精鋭隊、報告、報告!!

前方より魔族の配下と思われるモンスターの軍隊を発見、こちらに向かって飛んできている!!

数は少なくとも500、いや下手すればその倍はいそうだ!!』


『こちらセシリア、了解した。

海地連合精鋭隊は半身下がれ。魔法第一部隊、第二部隊に交戦の通達を頼む。

残りの飛空艇は下方から速度を上げて切り抜けろ』


『こちら海地連合精鋭隊、了解した!』




最近セシリアさんが優秀過ぎてヒロイン候補に浮上しつつある……(汗)

全くそのつもりは無いのです(笑)



次回投稿は10月9日(月)13:00予定です。


※誤字脱字、感想等何でもお待ちしています(*^^*)

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