15話
話は優人達が街についた時に遡る。
「ちょ、ユート速すぎだってー!」
優人の少し後ろを走ってついて来ていたナナが、息を切らしながら訴えてくる。優人はイリスの誘拐の事を聞くと、ナナを連れて街まで全力疾走していた。
「まだそんなに走ってないだろ」
「ナナは女の子なんだよ!?
何かもうちょっと労わる事出来ないかな!?」
はいはい、と何だかんだ元気そうなナナを彼は軽くあしらう。そんなやり取りをしていても、街の人々が口々に噂をしているのが聞こえてくる。
「ねぇ、聞いた?女の子の誘拐の件」
「聞いたよ、何でも街の中で誘拐されたから、冒険者ギルドで緊急クエストに指定されたらしいわね」
「誘拐なんて、かなり久々じゃない?
この街も、いよいよ物騒になってきたわね」
「大丈夫よ、この街だって優秀な冒険者はいるんだし、何よりセイン様がいるじゃない!」
「ええ、そうね!
セイン様なら何でもすぐ解決してくれるわね」
――――――セイン。
この名前が発せられた時、優人は少し顔を歪ませた。
「ユート? どうかしたの?」
表情が急変した事に気付き、ナナが聞いてくる。
「ナナ、聞いてくれ。あくまでこれは俺の予想なんだがな」
そう言って、優人はナナにセインが犯人の可能性がある事を話し始めた。
「まず、俺達が初めてセインと会って、過去の記憶がフラッシュバックした時のセインの反応だ。お前が言うには、その時の俺は恐ろしかったんだろ?
ならセインの反応は変なんだ。あいつは俺の事を恐怖するのではなく、何か忌み嫌うような対応をしてきた。
そして次に、イリスが森で会った三人組、あれがセイン達だと思う。爽やかな声とかまさにセインだろ?
それに、セインのパーティは男三人だったはずだし、あの時にイリスに目を付けていたなら、誘拐してもおかしくは無い。
最後に、あの森の奥地は別称で『魔の森』と呼ばれるほど、魔物が強く危険な場所だ。セインがその事を知らないはずがない、あいつは確かBランクなんだからな。
だとすれば、あいつはなぜそこに行ったと思う?
あそこには封印の祠という、凶悪な魔族が封印されている祠しかない。
つまりだ、セインは―――――――――」
目を大きく見開くナナに、一度呼吸を整えはっきり言う。
「セインは―――――――――魔族だ」
――――――――――――――――――――――――
「へぇ、よく僕が犯人だってわかったね」
「まあ、色々ヒントはあったからな。というより、お前って結構アホなんだな。普通、誘拐した奴を自分の家に連れ去るかよ。そんなの一瞬で特定されるだろ」
「いいだろ、別に。
ここじゃないとお楽しみが出来ないんだよ」
そう、セインはイリスを誘拐し、自分の家に連れ去っていた。セインは小貴族並に金銭を持っていたため、軽い屋敷のような家に住んでいた。
「で、僕の仲間がここの家の中を警備してたはずなんだけど、どうしたの?」
「ああ、庭でお昼寝でもしてるよ」
そう、優人達はセインのいる部屋に辿り着くまでに、襲いかかってきた者を全て倒し庭に投げ捨てていたのだ。
「そうかそうか、あいつらじゃ役に立たなかったのか。なら、僕が相手をするしかないね」
「そんな言い方の割には、随分と嬉しそうじゃないか」
「そりゃあ、君になら全力を出せそうだからね」
「そうかよ………ナナ、イリスを解放してやってくれ。俺はこいつの相手をする。
解放したらすぐにこの家から出ろ」
そう言って、優人は隣にいるナナに収納から取り出した短剣と毛布を渡す。
「わかった! 無茶、しないでね?」
「ああ、任せろ」
軽いやりとりの後、ナナがイリスに向けて飛び出していく。それを止めると思っていたが、セインは意外にも動こうとはしなかった。
「意外だな、止めないのか?」
するとセインは爽やかに笑い、
「止める必要ないさ。どうせ君達はここから出られないからね」
と、自信たっぷりに告げる。
「余裕だな………じゃあ、始めるか」
「そうだね、始めよう」
優人は腰の剣に手をあてる。すると、セインが怪しい黒い霧に覆われ始めた。
「………ふう、やはり元の姿の方が戦いやすい」
黒い霧が消え去るとそこには、黒い翼を生やした人ならざる者が立っていた。
(やっぱり魔族か、少し確認しよう)
そう思い、優人はセインに真理眼の効果を用いる。
――――――――――――――――――――――――
名前:ユベル
種族:魔族
性別:男
年齢:372歳
職業:冒険者
職種:剣士、武闘家
LV:80
HP:2540/2540
MP:2860/2860
腕力:1744
脚力:1366
頑丈:1366
知力:1744
運:560
特性:言語理解、隷属
スキル:剣術Lv5、体術Lv5、隷属魔法Lv5、
闇魔法Lv5
――――――――――――――――――――――――
(セインって名前じゃねーのかよ!?
しかし、余裕な素振りの通り、ステは中々高いな、俺よりはかなり低いけど。
変な特性とかスキル持ってるけど、まあ大丈夫だろ)
セイン改めてユベルのステを確認した優人は、あることを思いつき口元を緩める。
「おいユベル、俺の特訓にちょっと付き合ってもらうぞ」
「……何で僕の本名を知っているのかな?
だがまあ、面白そうだ、付き合ってあげるよ」
そう言い、戦闘態勢をとるユベル。優人は剣にあてていた手をユベルにかざし、ポツリと呟いた。
「合成魔法、『メテオ』」
「――――――は、はぁ!?」
ユベルが驚愕の表情を浮かべる。その目先には―――半径50センチ程の隕石が迫ってきていた。
「何だよその魔法!?聞いたことないぞ!?」
「そりゃ、作ったからな」
「意味っ、わからないぞ!!」
そう、優人は昼まで練習していた合成魔法を発動させたのだ。
Lv1魔法のボール系を8属性全て組み合わせて作った魔法『メテオ』。家の外で練習していた時には、ほんの少しのMPで作った小石程度の大きさなのに、地面にクレーターが出来るほどの威力を有していたのだった。
そんな魔法を、ユベルに対しては練習の5倍以上のMPを用いて発動した。だが、ユベルに対して使うには少し威力が足りなかったようで、持っていた漆黒の鎌で切り裂かれてしまう。
「は、見掛け倒しなのかな?
大層な魔法を使う割にはこの程度かい?」
ユベルが調子に乗って挑発してくるので、さらに魔法を使う。
「合成魔法、『グングニル』」
Lv3のランス系を全属性組み合わせた魔法を、ユベルに向って放つ。自身の何倍もの大きさの光り輝く槍先が何個も、ユベルに向かって飛んでいく。
「は、ちょ待っ――――――」
どうやらユベルもここまでの事態は予測していなかったようで、全力で回避し続ける。
「―――っ!!ぐあぁぁぁ!?」
最後の一つだけがユベルの左腕に直撃し、根本から吹き飛ばす。だがしかし、
(おいおい、マジかよ………)
ユベルは左腕を一瞬にして再生させた。
「はぁ、はぁ………」
しかし、再生させるのにかなりの体力を消費するのか、さっきよりも息が上がっている。
「よくも、やってくれたね……」
そう呟くと、左手にもう1本漆黒の鎌を出現させる。
「こうなったら僕の全力の技を使う事にするよ」
ユベルは、両手の鎌にありったけのMPをつぎ込み始める。
「ユート! イリスちゃんを無事に救出できたよ!」
と、このタイミングでナナと毛布に包まれたイリスが声をかけてくる。
「くっ、今からだとこの家を出るには時間がかかりすぎるっ!!
ナナ!! イリスを連れて俺の後ろにいろ!!」
「え、うん、わかった!」
ナナとイリスが自分の後ろについたことを確認し、優人は魔法を発動させる。
「合成魔法、『妖刀・無名』」
魔法名を呟いた優人の右手には、見た目はただの日本刀が現れていた。
「ナナ、イリス。今から使う技はかなり危険だし、周囲への被害が大きい。絶対に俺のそばから離れないでくれ」
そう二人に告げ、優人は刀を握る力を強くする。
「随分と余裕だね!!
くらえ、『デスサイクロン』!!」
ユベルが二つの鎌を交差させ、振り下ろす。そこから衝撃波のように黒い竜巻が優人目掛けて飛んでくる。
「『無』」
優人がそう言い、迫り来る竜巻に刀を振り下ろす。直後――――――竜巻が消え去った。
「―――!!? な、何をした!!?」
「『名』」
それだけ言い、優人は刀を一振りする。しかしその直後、特に何も起きはしなかった。ただただ、静寂が部屋全体を包み込んでしまう。
「ははっ、何だ見せかけ――――――ぁ」
その事に嘲笑を含んだ口を開いたユベルだったが、次の瞬間には細切れにされていた。ユベルだけでない。その部屋にあったものは全て、細切れにされていく。
そして、最後に家全体が細切れにされていた。
「―――えっ、ちょ、ユートやばいって!!
どうするのよ!?」
「そう騒ぐなって。脱出するぞ」
崩れ落ちる天井を避けながら、三人はひたすら家の外を目指して駆け出した。
(ユートさん、すごい、本当に何者?)
優人達が現れてから終始言葉を発せずにいたイリスは、あまりに圧倒的すぎる優人の力を目撃し、言葉を失ったままナナに引っ張られて家を脱出するのであった。
合成魔法連発してましたね〜(笑)
次話では事後処理回です!
次回投稿11/1(火)13:00予定です
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