ナナの日記③
閑章はこれで最後です。
それではお楽しみ下さいm(__)m
ただいまナナの家ー!!
ちょっと前まで王宮に居たのが嘘みたいだね~。
というか、こんな生活になるなんて全然予想してなかったよ~
今はリアさんとユートが夕食の買い出しに出掛けてて、ニレちゃんは家中に溜まったホコリを掃除して回ってるみたい。本当にマジメだよね~?
…………思うんだけど、ユートって何かあるとすぐにリアさんやイリスちゃんとか、ナナ以外の誰かを頼ろうとするよね。そんなにナナの事信用ならないのかな?
ううん、多分ユートの事だからナナの事を心配してくれてるんだよね?
でももうちょっと頼ってほしいよね?せっかく今日告白したのにっ!!
あっそうだ、大事な思い出としてここにも書いておかないとね!!
この度、ナナはユートと結婚する事になりました!!
ようやくだよ?ここまで長かったぁ~
しかもだよ?ナナから告白するつもりだったのに何とユートから告白してくれたんだ!!
もう嬉しすぎて泣きまくっちゃったよ~
一生分泣いた気がするね、うん!
って事で今日からもうイチャイチャして良い仲になったはずなのに、ユートってば「恥ずかしい」だの「近すぎる」だの言って中々抱き着かせてくれないんだよ?酷くない!?
でもまぁ告白してくれただけでも大きな前進だよね。
そうだね、今日はユートの意外な事について書こうかな。
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「好きな事?」
「うん」
ちーちゃんの上で風を切る優人達。
どうやらナナが何か優人に質問をしているらしい。
「ユートってあんまり自分から何かやりたいって言わないじゃん?
ナナは料理とか買い物とか好きだけど、ユートはどうなのかなって」
「散歩は好きだぞ?後は温泉とか………ああ、後は読書とかかな」
「普段からしてる事ばかりじゃんっ!
それ以外は?」
「難しい事言うなよ………
うーん、何かあったかなぁ」
「ユート様、あれはどうですか?
以前お暇な時に聞かせてくれた………」
「ああ、そう言えばそれがあったか」
「えっ何々?」
背後から聞こえて来るリアの声に言葉を返す優人。
その内容に全く心当たりのないナナは興味深そうに彼の袖を引っ張っていた。
「ああ、昔から一人でする遊びは好きだったんだよ。
本を読んだり絵をかいたり、とかな。そんな時によくしていたのが『自分で怖い話を考える』ってやつだったんだ」
「こ、怖い話……?」
「そう言えばナナには一度も話した事無かったっけ。
…………よし、試しに一つ聞いてみるか?」
「え、ええっ?………怖い話苦手なんだけどなぁ」
「私とニレは結構好きですよ。ソフィアとズィナミは…………寝てますね」
「まぁ、だろうと思ってたよ。じゃあ早速……………
昔、物凄く貧乏な老人が居ました」
「ほ、本当にするの……?」
「嫌なら耳塞いでおけ。
…………その老人は村はずれの山小屋に一人寂しく暮らしていました。もちろん山には様々な山菜があるので飢える事はありません、けど老人は体力が無いためにそれすら取りに行く事が困難でした」
「お爺さん、可哀想………」
事ある毎に横から言葉を発してくるナナに冷ややかな視線を送りつつ、優人は話し続ける。
「老人の噂は村まで届いていました。しかし自分達の事で精一杯だった村人達は『わざわざ山まで行って老人の介抱などしていられない』として、誰一人としてその老人の元を訪れようとはしませんでした。
そんなある日の朝、老人の家の玄関を叩く音がしました。初めは風のいたずらだろうと思い無視していたのですが、扉の向こうから『おじいさーん』と言う声が聞こえてきた事で漸く誰かが来たのだと分かり、老人は急いで玄関に向かいました。
玄関扉を開けるとそこにいたのは十歳ぐらいの少年で、米や野菜や生肉が入った竹籠を両手で大事そうに抱えていました。もちろん、老人はこの少年の事を知りません。
『坊や、一体何の用事でここに来たんだい?』と掠れた声で尋ねると『これをお爺さんに渡しに来た!』と言い、竹籠を老人に強引に持たせ、そそくさと帰っていきました。きっと裕福な家庭が善意でくださっているんだろう、老人はそう思うと涙が止まりませんでした。少年は昼も夜も同じ様にして竹籠に食材を詰め込み持ってきました。
次の日も、その次の日も少年は竹籠を持って来てはそそくさと帰る、そのような日が続き老人は困惑しながらも少しずつ暮らしぶりが良くなっていきました。
何日そんな日が続くと、少年の持ってくる食材の量が少しづつ減っている事に気が付きました。『無理して持ってくることはないと親に言いなさい』そう老人が告げると、少年は『これは僕が持って来ているんだよ』と言って、また帰っていきました。
老人はさすがに少年の事が怪しくなって、一度村まで降りました。すると村では赤ん坊が栄養不足で亡くなる、つまり餓死する家族が後を絶えない状態になっていました。『一体何が起きているんだ』老人がそう呟くと背後から一言、『人に悪さはしてはいけないよね』。
老人はそれで全てを悟り、自らの行いを後悔するのでした」
「…………えっと、それでおしまい?」
「ああ、これで終わりだ」
どうやらナナには優人の話が難しかった様で、首を傾げていた。
きっとこちらの世界では『意味が分かると怖い話』と言うのが存在しないのだろう。
「リアとニレはどうだ?分かったか?」
「ええ、何となくは」「残酷な話ですね……」
「えっえっ、何で2人共そんな顔してるの?
もしかして、全然意味分かってないのナナだけ!?」
「みたいだな」「だね」「ですね」
三コンボ攻撃を食らい、頭上に「ガーン!!」という文字が浮かび上がりそうな程驚きを見せるナナ。
流石にそのままにしておくのは可哀想だと思い、優人が答え合わせを始めた。
「良いかナナ?この話の大事な所は『どうして少年は老人に食料を届けられたのか』って事だ」
「え、そりゃあお爺さんが可哀そうだと思ったから、でしょ?」
「ナナ、それは違う。それは理由だろ?しかも理由を聞いていたとしても間違ってるし」
「ええっ、そんなぁ~
じゃあナナには分からないっ!」
「分からない事をドヤ顔で語るな。
……ったく、俺が聞いてるのは目的じゃなくて方法だよ。
考えてみろ、村人は自分の生活で精一杯なはずなのにどうして少年は食材を持ってこれた?」
「え、えっとそれは………」
「ナナさん、それは”盗み”ですよ」
後ろから言葉を飛ばしてきたのはニレ。
「ぬ、盗みって………
でも、もしそうだとしても赤ん坊が死ぬ理由にはならないんじゃ………」
「なるさ、十分にな。
ギリギリで生活していた村人から朝昼晩の三回分食料を盗んでみろ、間違いなく食料不足に陥るだろ?」
「た、確かに……
あっ!それで餓死したんだ!」
「ここまで分かればあと一歩だ。最後の老人が後悔したのはどうしてだと思う?」
「ご、ごめん全く考えてなかった………」
「流石だな」
「ひ、酷いっ!?」
「事実を言ったまでだ。………リア、分かるか?」
「はい。恐らく老人は少年の持ってきた食料を食べてしまったから後悔したのだと思います」
「どうして食料を食べると後悔する事になる?」
「それは少年が持ってきた食料が、餓死した赤子達の家から盗み出されたものだと分かったからだと思います」
「うん、正解だな。ナナは分かったか?」
「ま、まぁ何とか…………
リアさん凄いね、何ですぐ分かったの?」
「うーん、何となく?」
「だろうな、そういうもんだし。
で、最後にどうして少年はそんな事をしたのか」
「…………あっ、それはナナも分かったよ!!
多分アレでしょ?『みんなお爺さんを助けようとしなかったから』でしょ?」
「おお、正解だ」
「えへへ~。でも、悲しい話だよね、これ」
「まぁな。村人がカツカツで生活しているなんて少年には分かりようもない事だし、老人も村から離れた所で生活していたせいで少年の真意に気付けなかった訳だからな」
「でも、面白い話でした。また聞きたいですね」
「そうか?ならまぁ、また今度時間できたらな」
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お話を考えるなんて、ユートらしい趣味、なのかな?
最初は怖い話かぁ、嫌だなぁ~、って思ってたけど意外と面白かったし、また今度聞きたいな!!
あーでも、今度は明るい話が良いな。
あっ、ユート達帰って来たみたい。
じゃあ今日はここまでだね。
別に怖くないとかいうメタ発言はどうか止めて下さい、作者が泣きます(笑)
たまにはこういう語り回があっても良いかなというちょっとした試みですのでご理解ください(^-^)
次回投稿は9月28日(木)13:00予定です。
※誤字脱字、感想等何でもお待ちしていますm(__)m




