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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
144/180

60話

※お知らせ

お題ボックスくんを設置しました、詳しくはプロフィールからご確認くださいm(_ _)m





(何だろ…………やたらルルに見られている気が………)



演説を聞き終えた優人達は、溢れんばかりの大歓声から少し遠ざかった位置に移動していた。

部外者なりの配慮なのだろう、ラーダもその事に了承し優人達と同様の行動をしていた。




「でも本当に凄かったね!!

あれでナナより年下とか信じられないよ!!」


「うん、信じたく、無い」


「…………イリスちゃん?

それ、何かちょっと意味違うよね?

絶対ナナの事バカにしてるよね!?」


「お前ら本当に元気だよな、この状況で」




ため息と頭痛を堪えた優人は、ラーダの下に駆け寄ってくる隊員に目がいく。




「ラーダ隊長、調査部隊からの報告です。

どうやらあの怪物には生物としての器官が全く無いみたいです。

目、鼻、口、臓器等、核までもが見当たらないとか」


「…………怪物だな、それでは倒しようが無いじゃないか」




そんな会話が優人の耳に入ってくる。

それと同時に、メロウの言葉も思い出していた。



(”案外あっさり倒せる”ね…………

臓器も核も何もない相手をどうあっさり倒せってんだ)



「それともう一つ、どうやら頭上に謎の固形物が引っ付いているとか」


「固形物?」


「はい、飛行能力のある者に確かめて貰ったので間違いないかと」


「ふむ………」



顎髭を擦るような行動を見せるラーダ。

何か物思いに耽っているようだが、その真意は測りかねない。

しかしこの状況下であの化け物に出来る事など一つしかない、そう考えた優人は早速ラーダに話を持ち掛ける。




「なぁラーダ、俺としてはその固形物が怪しいし、そこを攻めてみないか?」


「…………やはりユートもそう思うか?

しかし、そんな簡単に行くものなのか?」




やはり納得がいかない、そう言わんばかりに顔を渋くするラーダだったが、少し唸った後考えが変わったらしく優人の目を見て、その大きな口を開く。




「仕方ない、か。

しかしあの巨体の一部分、しかもかなり小さい部分を確実に攻撃するとなると、俺の所の隊員でもほとんどの者が動けないぞ?」




確かにその通り、自分達の何倍もの大きさを誇るあの怪物の頭上を攻撃など、容易では無いだろう。

しかもただ攻撃するのではなく、かなり小さい的を狙って攻撃するのだ、困難どころか不可能に近い。


確かにこの情報が与えられた所で不安は取り除けない。

もちろん、それはラーダだって同じだ。


しかし彼の前に居る青年は違う。




「そうだな、取り敢えず水魔法と氷魔法が使えるヤツを掻き集めてくれ。

出来るだけ沢山だ」


「あ、ああ分かったが……………

一体、何をするつもりだ?」




不安そうに尋ねるラーダに対して優人は悪戯な笑みを浮かべ、言い放つ。




「ただの子供の悪戯だよ」


















───────────────────






スライム型の例の怪物は未だに進路を変えずに直進し続けていた。

段差になる物や家など、障害になる物があってもそのまま直進を続けるせいで、既に何十件もの建物が瓦礫と化し、街の景観がどんどん崩れ去っていってしまう。



そんな怪物の進路上に集められた隊員達達は、今か今かと指示を待っていた。

────自分の身を守る為に。




「ユート、出来るだけ全員集めたがこれで足りるか?」


「ああ、足りない事は無いだろう。

今から言う事を皆に伝えてくれないか?」


「ああ、分かった。

…………直接ユートが言えばいいんじゃないのか?」


「そういうのに慣れてないんだ、それにあんたの口から聞いた方がスムーズに動けるだろ?」


「まぁ、ユートがそう言うのならそうさせて貰おう」


「じゃあ作戦を言うぞ。

まず、水魔法を使える者はあの怪物の進路上の地面を水魔法で、それも出来るだけ広範囲を濡らしてほしい。

その次に、氷魔法を使える者はその濡らした部分を凍らせる、以上だ」


「…………え、それだけか?」


「ああ、これだけでいい」




予想をはるかに下回る単純作業に、ラーダは間抜けな顔を晒してしまう。

しかしすぐに普段の顔に戻すと隊員達の方に向かって大声で叫び始める。




「今からお前たちに作戦を伝える。

まず水魔法を使える者は───────」




ラーダの的確な指示によって隊員達はすぐに行動を始めた。

優人やイリスの協力もあったお陰か、作戦の準備は予想を上回る勢いで捗り、そして完成したのが




「…………確かにこれは悪戯、だな」




怪物の進路上を完全に覆う氷の床、つまるところのスケートリンクである。




「なぁユート、お前が考えている事って『氷の床で滑って頭部の固形物を下に持ってくる』、でいいんだな?」


「ああ、単純でいいだろ?」


「い、いや確かに単純でありがたいが…………

本当にうまくいくのか?」


「それはまぁ、やってみてからのお楽しみで」


「師匠、意地悪い、から」


「………………」





そう言って不敵に笑う優人の姿に、ラーダは何とも言えない表情になるのだった。


















───────────────────






スイレン山の一件の後、メロウとセバスは一度魔王城に帰還していた。





「メロウ様、何かお飲み物は」


「今はいいわ。

それより、ねぇこれ見て頂戴?」




ベッドに腰掛け、立体映像(ホログラム)の様なものを覗き込むメロウの元に、セバスが近寄る。

そして彼が目にしたのは、例の青年の姿だった。




「これは、一体何をしようとしているのでしょうか?」


「さあ?でもきっとあの核もどき(・・・・)を壊そうとしてるんじゃないかしら?」


「…………骸をですか。しかしそれは…………」


「いいのいいの」




まるでおままごとをしている少女の様な屈託のない笑みを浮かべるメロウだったが、それは徐々に歪みはじめ─────




「彼には精一杯勘違いしてもらいましょ?」




酷く口角を吊り上げた顔で、そう呟いた。




優人にしては珍しく古典的な嫌がらせですね〜

次回、優人達が暴れます(笑)


次回投稿は7/30(日)13:00



※誤字脱字、感想等何でもお待ちしておりますm(_ _)m


同時掲載小説もありますので、もしよければプロフィールから読んでみてください(*^^*)


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