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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
142/180

58話





───化け物はまだ倒せねえのか!?

───いつまでこんな事をしてればいいのよ!?

───早く家に帰らせろ!!






レインハートの中心に位置する広場は、普段とは全く違った賑わいを見せていた。

怪物の進路に通じる道を封鎖している衛兵に怒りの矛先を向ける者もいれば、訳が分からずただ泣いている者もいる。


怒声や罵声、泣き声までが響き渡るその場に優人達はやっとの思いで辿り着いていた。




「な、中々だな…………」


「ハハハ……………

と、取り敢えず宿に向かおう、話はそれからだな」















とある宿屋のとある一室に、優人達の運んで来た隊員は寝かされた。

隊員達は皆重傷では無かったが、看護に当たった皆の顔に現れていたのは、見て取れるほどの焦燥感。

これが指している事はただ一つ、原因不明(わからない)である。




「なぁユート、何があったか教えてくれないか?」




宿の受付付近の椅子に腰掛ける優人やその他の者の傍まで、先程まで隊員と連絡を取っていたラーダが近寄ってくる。




「教えろ、って言われてもなぁ。

俺達が向こうに着いた時にはああなってたんだ、それ以外と言われたら………

……………魔族か」


「また魔族………」


「しかも、メロウとか言うヤツだ。

確か魔族の幹部なんだろ?」


「…………」




ラーダの顔はどんどん険しくなっていく。

しかし優人は話を続けていく。




「それに、奴らは俺達の前から消えるときに『化け物は案外あっさり倒せる』って言ったんだ。

どういう事だと思う?」


「あっさり倒せる?あの化け物を?

─────ん?外が」




首を傾げるラーダの耳には、外の騒がしい音が入ってくる。

それがただの騒音ならよかったのだが、明らかに様子が違う。




「どうした?ラーダ」


「ああいや、何だか外の様子が変だ」


「……………そうみたいだな、見に行くか」




重い腰をゆっくり上げた優人は、不敵な笑みを浮かべた。


まるで、何かを待ち続けていた(・・・・・・・・・・)かのように─────
























────────────────────────













広場には、避難民以外の住民まで集まっていた。

その騒ぎの中心にいたのは────




「あれは…………」


「レイ様に、ルル様?

それと重臣達も………」




そう、例の少女2人だった。

レイとルルは手を繋ぎ、騒ぎの中心へと勇み出ていたのだ。




「国王様っ!!

あの怪物は何なのですか!?

私達はどうなるんですか!?」


「いつまでこうして避難を続けていればいいんですか!?

何か知ってるんじゃないんですか!?」




衆人達の不満は、やはり2人に注がれてしまっていた。

どう考えてもあの怪物とこの少女達が関連しないだろうと思えるはずなのに、人々は寄ってたかって怒りをぶつけていく。

その様子はまさしく、




「…………イジメ、みたいだな」


「うん………みんな酷い……」


「……………」




目の前で行われている、少女達には酷であろう罵倒にナナ達から悲痛の声が出る。




「何だよ、何か言ってくれよ!?

俺達は何をしたらいいんだ!?」


「そうよ!!

指示してくれなきゃなにも動けないじゃない!!」


「やっぱりこんな子供に国王なんて無理だったんだよ!!

この2人が新国王になってから碌なことが起きやしないじゃないか!!」




それでも衆人の怒声や罵声は止むところを知らない。

仕方ないと言えば仕方ないのだろう、突然謎の怪物が現れたかと思えば何の説明もなく避難させられたのだ。

この状況で冷静にいる者の方がよっぽど異常者であろうから、ある意味ではこの反応が一番正しい反応なのかもしれない。



そんな中、ルルは何故か近くに居た重臣・ベザライトに耳打ちをし、彼の腰に差されていた小剣を引き抜いた。

小剣と言ってもまだ幼いルルの半分以上は全長がある為、少女は持つので精一杯である。




「ルルちゃん、一体何を…………?」




そう言葉にするナナの視線同様、ルルの近くを囲んでいた衆人達もその様子を訝し気に見ていたが、それ以外の者は少女が手に小剣を持っているなど思いもしないようで未だに心の無い言葉を投げていた。


ルルは小さくため息を落とし、姉のレイと目配せをした後その小さな足で力一杯地面を踏みしめて歩み出した。





(……………驚いた。

あの子がまさかここまで意志の強い子になるなんてな)




優人の目に映った少女は、昔の様なおどおどした様子は見られず堂々としていた。

普段のように長い髪を伸ばしっぱなしにせず紐で纏めているせいもあってか、どこか大人びた雰囲気さえ優人は感じ取れた。


知り合ってまだほんの僅かな時間しか経っていないが、2人の少女の内ルルの方を気にかけていた優人。

それはきっと過去の自分と重なる部分が多かったから。


そんな少女の成長は優人にとって喜ばしい事であったし、それと同時に、その当時の自分が出来なかった事をやってのけたという羨ましい事でもあった。





(あんな子供に嫉妬なんて、情けないな俺は…………

でもルルの奴、一体何を…………っ!?)





さらに衆人の前に出る過去の自分の幻影を眺めていた優人だったが、突然例のフラッシュバックに襲われる。












────────────────────────





”ほら、また同じところ間違えてる”


…………すいません、先生。


”謝るぐらいなら同じところを間違えない様にして欲しいな”


はい………


”君は本当に進歩が無いな”


努力はしているんですが…………


”結果の伴わない努力なんて無に等しいんだよ?

はぁ、そんな見苦しい言い訳をするなんて、キミには失望したよ御影君”


そ、そんな………………








───────────────────────








「───と、ユート?」


「あ、あぁ大丈夫、何でもない」




(今回もまた変なタイミングで起きたな………

毎回毎回昔にあった嫌な事ばかり思い出すなんて……………

しかも段々と細かくなってるし、クソッ…………)






憂鬱な気を払うように優人は一度軽く頭を振ると、心配そうに覗き込んで来ていたナナと目が合う。

ナナも今回の様に突然フラッシュバックが起こる状況には何度か立ち会ってきたはずで、そろそろ慣れているはずである。

それでもやはり心配そうにしてくれるナナに、揺らいでいた優人の心は落ち着きを取り戻していた。





「っと、それよりは……………」


「うん、中々凄い事になってるね…………」






両社の視線の先にあったのは、この年齢では史上初かもしれない、2人の少女による名演説だった。










荒れる広場に降り立ったのは優人達だけではなく、ルルとレイ達もだった。

次話ではこの2人の女の子による演説をお楽しみください。


次回投稿は7/20(木)13:00予定です。



※誤字脱字、感想等何でもお待ちしておりますm(_ _)m


同時掲載小説もありますので、もし良かったらプロフィールから読んでみてください(*^^*)


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