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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
136/180

52話

※活動報告を更新しましたので、良ければ読んでくださいm(_ _)m






「ま、待って下さいルル様っ!!」




近付いていく2人の間に割って入るようにして、ベザライトが困った表情のまま悲鳴のような声を上げた。




「な、なにベザライト?」


「騙されてはなりません!

レイ様はこの国を裏切ったのですよ!?」


「っ………!?」




ベザライトの過ぎる発言に、優人は反論しようと身体を前のめりにしていた。

しかし袖に何か引っかかった感触を覚え、そこへ目を向けるとナナが引っ張っていた。

────見てろって事か。


優人はナナの意を汲んで黙る事にした。




「ベザライト………」




ルルは戸惑ったような、少し悲しんだような声で重臣の名を呟く。

そして意を決したように、目元を引き締めて言葉を紡ぎ始めた。




「もう、こんな事はやめませんか……?」


「る、ルル様!?

何を急に言い出すのかと思えば、そんな世迷い事をっ!?」




目の前の少女、ルルの言葉の意味にべザライトは冷や汗が止まらなかった。

しかも無意識の内に、幼い子から向けられる純粋な気持ちに自分の心のどこかにある罪悪感が疼いてしまっていたのだ。


苦悶する男にルルの言葉は更に続けられる。




「ベザライト、貴方も、その、分かってるんじゃないんですか?

こんな事をしても意味が無いって」


「なっ、そんな訳無いっ!!

第一、レイ様は反逆罪で────」


「それ、嘘じゃないですか。

その策を私に教えてくれたの、ベザライトさんじゃないですか」


「…………」


「それに、さっきから気になっていたんですけど、どうしてお姉ちゃんに『様』ってつけるんですか?

本当に罪人だって切り捨てるなら、呼び捨てでもいいはずですよね?」


「そ、それは……………」




予想外の猛攻に、ベザライトやその他の重臣、そしてレイまでもが目を丸くしていた。

しかも全員が同じ考え────────目の前の少女がこんな堂々とした物言いをする子だったか、という事に驚いていたので、すぐにルルに表情を読み取られて気付かれた。




「その、私だってただ居るだけじゃないんです。

………ねえ、お姉ちゃん」




ルルは立ち塞がっていたベザライトの横を通り、レイのすぐ傍に寄る。


そして、頭を下げた。




「お姉ちゃん、ごめんなさい………。

あの時、あんなに酷い事言っちゃって」


「ルル………」


「まさかお姉ちゃんがそこまで私の事を思っていてくれたなんて知らなくて………

ずっと、お姉ちゃんは私の事嫌いなんだって思ってて、それで、それでっ…………!!」


「ごめんなさい、本当にごめんなさいっ…………

私が間違ってた、こんな事なら最初っからちゃんと話せば良かった………

お姉ちゃん、本当にごめんなさいっ………」


「っ………」





話している途中で感極まったようで、ルルの目に溜まり始めていた涙が頬を伝う。

その涙に感化されたレイまで貰い泣きし、暫くの間2人は言葉を交わさず泣いていた。


さすがにこんな感動的な状況に水を差すほど空気を読めない人は周囲にいなかった。

優人も、ナナ達も、重臣達でさえも口をつぐんで見守っていた。





しかし、残念ながらその場で空気を読めたのは人だけ(・・・)だったようだ。




「(ユ~ト~、外見て来たよ~………ってどういう状況?)」


『全く、ソフィアは本当にバカだね~。

そんなの見たら………………ケンカでもしたのかな?』


「(それより、外の様子はどうだった?)」




優人の肩に2体の契約精霊が飛んでくる。

どうやらルルが出てきた辺りから精霊達3人組は地下を抜け出して、爆音の鳴り止まない外の様子を確認していたようだ。


幾ら小声だとしても長話をするとKY男(空気読めない男)認定されかねないので、優人は手短に質問だけを繰り出した。

その質問にはソフィアが答えた。




「(うーん、一言で言うと『鬼ヤバッ!!』って感じかな?

ちゃんと言うと~、アクエリアスみたいなねちっこい巨大な化け物が町の中を荒らしまわってるって感じかな?

どうやら山の方に向かってるみたいだけど)」


「(……………山、か)」




少し思考を巡らせた後、優人は一歩前に出た。

その頃にはある程度涙も引いてきたようで、レイやルルたちを含む全員が青年に視線を集めていた。




「今入った情報だと、どうやら上では恐ろしい化け物が暴れ回ってるらしい。

俺はすぐに向かうつもりだ、皆はここに残っていてくれ」




それだけを言い伝え、階段のある方へ歩もうとするが、




「…………話聞いてか?」




優人の行く手を、ナナとイリスが既に阻んでいた。

2人共かなり機嫌が悪いらしく、頬っぺたを限界まで膨らませてお怒り状態だったのだが、その原因が分からない優人は苦笑いを浮かべるしかなかった。


怒っている理由を聞こうとする優人よりも前に、ナナの口が動く。




「ナナも行く!!」


「いや、だから全員ここに残れって───」


「師匠」




優人を遮って、今度はイリスが口を開く。




「私も行く。

師匠、今更そんな事、言うのは、お門違い」


「いや、今回は今まで以上に危険なんだぞ?

そんな場所にお前らを連れて行けるわけないだろ?」




それは、至極当然の発言だった。

知能レベルはどうであれ、あの大精霊達が危険だと判断した怪物の元に、まだ自分より年の若い少女を連れて行きたくは無いのだ。





しかし、そんな優人の気持ちを一蹴してナナは言い放った。


──────違う、と。




「ユート、本当に危険だからこそ一緒に行くんじゃないの?

もし敵が強すぎたら、そんなのどこにも安全な場所なんか無いじゃん!

だからさ、1人で行くとか言わないで?」


「ナナ…………」




ナナの瞳には強い意志が宿っていた。

それは普段の彼女からは想像もつかないぐらいの気持ちが表れていた。

さすがの優人でもその気持ちを無下にすることは出来なかった。




「…………分かったよ。

でも本当に危ないと思ったらすぐに遠くに逃げるんだぞ?」


「うん!!」


「分かった」




2人の少女の和解、歳をとるとこういうのに涙腺やられる人多いんじゃないでしょうか?

もちろん心が年寄りの私は涙腺崩壊です(笑)


次回投稿は6/27(火)13:00予定です



※誤字脱字、感想等何でもお待ちしておりますm(_ _)m


同時掲載小説もありますので、もし良かったらプロフィールから読んでみてください(*^^*)



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