表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
132/180

48話






翌日、レインハートの王宮の門前には大勢の衆人が群がっていた。

どうやら昨日の件を聞いたらしく、皆口々に不満や暴言を吐き出している。


その衆人の最後列に優人達の姿はあった。




「朝から人多いなぁ」


「そりゃそうだよ、だって自分の国の王様が捕まったなんて聞いたらじっとしてられないじゃん!!」


「それもそうか」




衆人達の騒ぎがどんどん加速しつつあったその時、門越しに見える王宮の玄関扉が開き、中からルルと数人の重臣が向かってきた。




「市民の皆様、えっと、この度は身内が───」



───そんな事より、この都市はどうなるんだよ!

───そうよ!私達は何を信じればいいのよ!

───そうだそうだ!どうせお前らも───



「えっと、あの、その……………」




ルルが話し始めようとすると、それに被せるように多くの野次が返って来る。

予想外の事に慌てふためくルルに、野次はとどまる事を知らない。




───どうなんだ!お前も魔族と手を組んでるんだろ?

───いやそうに決まっている!この売国奴が!

───龍人族を愚弄するのか!恥知らず!



(酷いな、相手は子供だっていうのに………)


群衆から浴びせられる心無い言葉に、流石の優人達も同情していた。

その中でも特にナナは




「みんな酷い………

こんなの、いじめと一緒じゃんっ………」




と嘆いていた。

しかしいつものナナなら所構わず騒ぎ立てていそうなのに、今日はそんな素振りを見せていなかった。

ナナの成長を少しだけ垣間見る事が出来た優人は、無意識に感心していた。




「えっと、その…………すいませんでした」




鳴り止まない罵声を無視し、ルルは取り敢えずペコリと頭を下げ、そそくさと王宮に戻って行ってしまった。

これによって、市民はさらに憤怒していた。




───ふざけるな!市民を何だと思ってるんだ!

───ちゃんと政治をしろ!!

───やっぱり子供に国王なんて無理でしょ!




こんな状態での面会など無理だろうと、優人達はその場を去っていった。

背中から聞こえて来る痛々しい言葉に、優人は耳を塞ぎたくなっていた。




























────────────────────────








「セバス様、どうやら例のものが溜まったようです」


「分かりました。

ではあの龍人族の者達には内密に、例の準備に取り掛かって下さい」


「かしこまりました」




その場から、影が一つ消える。




「さて、どう動きますか?───御影優人」




















────────────────────────










「一つ提案なのだが」




自室に戻ってすぐに、ブラスがそう切り出した。




「どうした?」


「ルル様に会うのは困難だが、衛兵の警備を切り抜ければレイ様に会えるんじゃないかと思ったんだが」


「ブラスさん、しかしそれは………」




話を聞いていたリアが困った表情を浮かべる。

ブラスを除けば誰も地下牢獄の場所を知らないし、あるにしても王宮内だろうから、どうやってもたどりつける方法が無い、リアの不安は当然である。


しかし優人はまるで何ともないかのように言葉を発する。




「いや、行く分にはズィナミの力で───」


「「それはダメ!!」」「「ダメです!!」」




ブラス以外の周囲の女子全員に拒否された。

彼女達からすると、これ以上犯罪じみたことは禁止なようだ。




「冗談だよ、そもそもズィナミの力は一日一回だけ、行っても帰って来れなきゃ意味無いだろ?


………まぁ、冗談は置いといて実際どうするんだ?

ブラスは場所知ってるんだろうけど、入り口が王宮の中だけじゃ行けないだろ」


「いや、別ルートで行けばいいだろ?」




当たり前の様にそんな事を言うブラス。

だからこそ彼女は気付かない、その言葉の重大さを。




「おい、それがあるなら最初っから言えよっ!!!!」


「す、すまない。

何せ、元々その事は共通認識の場所に居た身だからな」





とりあえず、と言ってブラスは地下牢獄に続く抜け道を説明し始めた。

話し始めるまで冷ややかな視線を浴び続けたせいだろうか、ブラスの表情は完全に引きつっていたが誰も気に止めはしない。





「抜け道の入り口はレインハートを横切る川に架かっている橋の下にある。

その扉を潜って一本道を進めば少し開けた空間に出る。

そこまでに衛兵は配置されていないはずだが、問題は次なんだ。


その空間から牢獄までは近くの階段を降りればすぐなんだが、レイ様の牢獄の前には衛兵が複数いてるはずだ。

奴らは異常事態があると他の衛兵を招集する道具を持っている。

そいつらをどうにかしないと近づけないどころか、私達全員罪人扱いだ。

優人は、これをどうやって切り抜ける?」



「まぁ、それならイリスという適任者がいるからな」


「ん?どういう事だ?

アイリスには、他人を攪乱するような魔法が使えるのか?」




まさか、と言わんばかりに肩を竦める優人。

そしてイリスの方に体を向け、真剣な眼差しで諭し始めた。




「イリス、頭のいいお前なら分かってくれてると思うけど、俺の魔法じゃ威力が高すぎて相手を殺しかねない。

だからこそ、遠距離から魔法で相手の意識を奪えるイリスにお願いしたいんだ、やってくれるか?」


「もちろん、師匠の命令なら、何でもやる」




握り拳を作ってやる気をアピールしているイリスに、優人は思わず笑みがこぼれてしまう。

それを悪い方向に勘違いしたのか、イリスがむぅっと愛らしく頬を膨らませる。




「師匠、馬鹿にした」


「まさか、俺がイリスの事を馬鹿にするわけないだろ?

嬉しくてつい笑っちゃったんだよ」


「そっか、ならいい。

師匠は、私の事、大事だもんね?」


「当り前だろ?世界で────」





と、いつもの調子でイリスの口車に乗せられ別世界に飛び立とうとする優人。

しかしここにはそれを阻める者がいる事を、2人は完全に失念していた。




「……………ユートさん?」


「に、ニレ?何でそんなに笑顔が怖いんだ?」


「ニレ、怒ってる?」


「怒ってません、怒ってませんよ?」




揺らめきながら立ち上がり、ふらついた足取りで横並びに座っている2人の傍までやって来たニレはそこで一喝。






「怒ってないですけど、お説教ですっ!!」






たとえどんなに不味い状況でも、ニレの30分にも渡るお説教はいつもの様にエネルギッシュに行われたのだった。
























「…ユート達は本当にどんな関係なんだ………?」

シリアス展開をぶち壊してくれるのはやっぱりイリスでしたね笑


レイの元に行くことを決めた優人達、これが意外な結果をもたらして……?


次回投稿は6/18(日)13:00予定です



※誤字脱字、感想等何でもお待ちしておりますm(_ _)m


同時掲載小説もありますので、もし良かったらプロフィールから読んでみてください(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ