42話
ブラスの願いを聞き受けた日の夜、精霊達含む女性陣は温泉に入っていた。
「いや~、今日も気持ちいいね~!!」
「ナナ、毎日それしか、言ってない」
「思った事を言ってるんだから仕方ないじゃん!!
あ、そう言えばブラスさんと入るのって初めてだよね?」
「ああ、皆には本当に世話になったな」
「いえいえ、私達に感謝するよりユート様に感謝してください。
実際に行動したのはユート様ですから」
「…………ずっと気になってたんだが、ここにいる皆はどんな関係なんだ?
リア殿がユートのメイドだという事は知っているのだが、皆もそうなのか?」
「ニレちゃんはメイドだけど、ナナとイリスちゃんは違う───」
「な、ナナっ!
ブラスさんが困った顔してるから!!
ええっと、海棲族のこの子、ニレはメイドです。
狐人のナナと森精族のイリスは居候の様なものです」
「…………居候?
何か深い訳でもあるのか?」
「私は、元々家族がいなくて、色々訳があって1人で暮らしていた所を、師匠に拾われた」
「師匠?」
「そう!
イリスちゃんはユートの事を師匠って呼んでるんだよ!!
───で、ナナはユートと一緒にいるって決めたから一緒に住んでるんだ!」
「すまない、全く意味が分からないんだが……………」
「聞き流してくれていいですよ?
ナナの言う事は8割ほど惚気話ですから」
「リアさんっ!?
そんなに酷くないから、5割ぐらいだから!!」
「自覚はあるんだな………
しかしユートは凄くモテるんだな、こんなに可愛い子達が身近に集まってくるんだから」
「何何?ブラスさんもユートの事好きになったの?」
「ユートの人柄は好きだよ、あそこまで人のために動いてくれる男はそう居ないだろう。
しかし恋愛感情は無いさ、今はそれどころでは無いからな」
「そっかぁ、良かったぁ~」
大きいため息が1つ、湯気と共に掻き消える。
それを見ていたブラスはリアの言っていたことは割と間違いでもないと感じてしまい、つい口元が緩んでしまう。
「さて、私はそろそろ上がらせてもらおうかな」
「あ、私もあがりたいので一緒に」
「ええっ!?
ブラスさんもニレちゃんも早すぎるよ~!!」
「ナナ、人の自由」
「わ、わかってるよー」
「済まないな。
私は龍人族なのだが温泉は苦手なんだ、すぐにのぼせてしまってね」
そう言ってブラスはニレを連れて更衣室に歩いて行った。
「………あの2人って、何だか感じ似てるよね?」
「言われて、みれば」
「ニレって根がすごく真面目な子だからね。
ブラスさんもそんな感じなんだろうね」
「…………ニレちゃん、大人になったらもっと口うるさくなりそうだなぁ」
「「あ~」」
3人の想像が、見事にシンクロするのだった。
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就任式の翌日の朝、予定通りの客がやって来た。
「ユート様ですね。
貴方様の功績はこの地にまで届いております」
「はぁ、それはどうも」
「それでですね、新国王様であるレイ様とルル様がぜひお会いしたいとの事。
ですので、お時間の都合上出来れば今から王宮までお越し頂きたいのですが宜しいでしょうか?」
(何が『宜しいでしょうか?』だよ。
どうせ強制だろうが、武装して来てるくせに)
目の前で腰に携えている細剣をちらちら見せつけて来る、王宮の専属兵数人に優人は思わず脳内で悪態をついてしまう。
しかしここで断るのは事態を悪化させるだけなので、ここは大人しく従うしかない。
「分かった。
でもさすがにここにいる全員で行くのは申し訳ないから、ナナとマールの2人だけ連れていく事にするけどいいよな?」
「ええ、別に全員で来て頂いても構いませんよ?
────特に」
兵の1人の視線がブラスに向き、それに続けて他の兵の目線もそこに向かう。
「そこの”元”兵長殿は来て頂けるのなら我々も嬉しい限りですけどねぇ」
「っ!?……………」
兵がそんな事を述べると、他の兵が大声で笑い声を上げ始めた。
ワザと過ぎる罵倒とその状況とが相俟ってか、赤く染まったブラスの顔が俯いていた。
ナナ達もそれが不快だったようで、普段見せない様な鋭い目線を兵に向けている。
「俺と話しているのに、他人の話を持ち出すのは無礼じゃないのか?」
「…………これは失礼。
では王宮に参りましょう、馬車を用意させて頂いていますのでこちらにどうぞ」
「ああ。
ナナ、マール、付いて来てくれ。
他の皆は自由に行動してくれてて構わないから」
優人がイリスやリア達に目を向けると、全員同意してくれたようで首を縦に振ってくれた。
「じゃ、新国王様と初対面といこうか」
こうして優人達5人は馬車へと乗り込んでいくのだった。
予定通りのお呼び出し!
優人は王国の企みにどこまで気付けるのか?
次回投稿は6/6(火)13:00予定です。
※誤字脱字、感想等何でもお待ちしておりますm(_ _)m
同時掲載小説もありますので、良ければプロフィールから探して読んでみてください(*^^*)




