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ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
103/180

19話

※お知らせ


2作目「死神が死神をやめるまで」執筆し始めました!!

興味ある方は読んでみてくださいm(_ _)m





『キミ、まだ悔やんでるの?』



人とは思えない速度で野を駆ける優人の脳内に、ふとそんな声が響く。



「うるせぇよ」


『キミは強情だなぁ。

いいかい、人は死ぬべくして死ぬんだ、それを他人が背負い込むのはお門違いってやつさ。

だからあの人間の死はキミのせいじゃない、いいね?』


「それで割り切ってしまったら、昔の俺に殺される。

それに、あれは俺のせいでもあるだろ」


『あぁなるほど、自分が遅く行ったせいで彼らは死んだと思ってるのかぁ。

それはもう強情じゃなくて傲慢だ、あと彼女たちにも失礼じゃないか?』


「…………もうすぐ王国だ」


『はぁ、キミもまだまだ子供だねぇ』


「うるせぇよ」
























─────────────────────────











ルークラート王国の王城の一室では怒声や嘆声が飛び交い、人という人が目まぐるしく出入りしていた。

その中で中心となっていたのがセシリアだ。



「隊長!!報告致します!!

現在、東西南北の四ケ所の門で交戦は継続中、城壁外にもう住人は見受けられないそうです!!」


「そうか、報告ありがとう。

早めに住人を非難させておいた甲斐があったな。

戦況についてはどうだ?」


「はっ、各門共魔法や投擲系武器、弓等を用いて迎撃していますが敵の数が多すぎるため、効果は薄いと思われます。

さらにこちら側では魔力切れや武器の不足から、門を突破されるのは時間の問題かと」


「やはりそうなるか。

仕方ない、すぐに騎士隊に招集をかけ、四班に分けて防衛に当たらせる。

私もすぐに出ると伝えてくれ」




セシリアの発言により、その場にいた者たちの間でどよめきが起きる。




「今隊長にここを抜けられると困ります!」




セシリアに報告を上げていた男が声を上げる。



「ライゼ、君の言い分はよく分かる。

だが私は王国第三騎士隊隊長、この国を守り導く義務がある。

その私が前線に出ないなんて情けないこと出来まい」


「で、ですが全体の指揮を執る隊長に居なくなられるのは」


「分かってる、だから私の代わりに指揮を執ってくれる者に頼もうと思う。母上」




セシリアが目を向けた先、その部屋の隅の椅子に腰掛けていた女性に皆の視線が集まる。




「お、王女様が……?」


「ああ、母は凄いぞ?

私なんか足元にも及ばない程だ」


「あら嬉しいわ。

可愛い娘の頼み、私も張り切らないとね」




うふふ、と笑う王女の姿は美しく、それでいて底知れない何かを感じさせる。

そう直感したようで皆の目に活力が漲ってくる。




「では、私が行った後の指揮を頼む。

よし、ここが正念場だ!気合い入れ───」


「し、失礼します!!!」




これからセシリアが士気を高めようというそのタイミングで、部屋の扉が荒々しく開けられる。

1人の男が飛び込んできたと思えば、その青ざめた表情から緊急事態だと窺える。




「そんなに慌ててどうした?

何か不味い事でもあったか?」


「い、いえその逆です!!

南門の敵が全滅しました!!」


「な、何!?どういう事だ!?何があった!?」


「わ、分かりません、ですが何名かの者が英雄様の姿を一瞬だけ見たとか」


「優人を見た?

いや、まだ奴が消えてから三ヶ月は経っていない、それにもし仮にも優人だとしてもそんな一瞬であの大軍を────」


「し、失礼します!!!」


「今度は何があった!?」




再び自分の部下が慌てて部屋に飛び込んで来たので、驚いた表情のままセシリアは反応してしまう。




「ほ、報告します!!

西門にいた敵が全滅いたしました!!」


「ま、またか………

一体何が起きているんだ……

ほ、他に何か報告はあるか?」


「はい、何名かが敵の中に英雄様の姿が見えたと騒いでいるようです」


「そ、そうか分かった………

とりあえず、南門と西門にいる兵士、冒険者達を別の門────」


「し、失礼します!!!」


「もう何なんだ!?!?

今度はどこだ!?北門が全滅か!?」


「セシル、落ち着いて」




次から次へと起こる異常事態のせいで、さすがのセシリアもプチパニック状態に陥ってしまう。

母に宥められながら、まだ平常心とは言えない状態だがとりあえず話を聞く。




「東門にいた敵が北門に向けて移動を開始しました!!」


「移動?なぜそんな事をする?」



セシリアの額から水滴が流れ落ちた気がした。

そもそも、モンスターは龍など一部を除いては知能が圧倒的に低い。

例えば目の前の壁を壊す方法として、ひたすら壊れるまで攻撃を仕掛けるの一択しか選べないほどの知能である。

そんな奴らがわざわざ目の前の門を無視して別の所に行くなど、セシリアの中では有り得ない状況なのだ。


つまり、考えうる可能性は1つ。

セシリアは冷静さを取り戻した頭でその可能性を口にする。




「誰かに操られていたのか、あの敵は全て」


「し、しかしあれほどの数を操るなど聞いたことがありません!!」


「私もあり得ないとは思う、だがそれが可能な種族がいるだろう?」




反感の意を唱える男は黙り考え込み、その顔をみるみる青白く染め上げながら答えに行きつく。



「………ま、魔族」


「ああ、恐らくな。

しかし何が目的────」


「し、失礼します!!!」


「…………何だ?何があった?」




短時間でもう何度も同じ状況を味わったセシリアは、驚いた気配を見せず何やら手紙らしきものを持って入って来た男に尋ねる。




「はっ、順に報告させてもらいます!!!

まず、北門の敵が全滅いたしました!!

それとほぼ同時刻、東門から北門へ移動していた敵も全滅したとの報告がありました!!」


「そんな事だろうと思ってたよ………

あれだろ、優人を見た者が数名いたんだろ?」


「あ、その英雄様からお手紙を預かってます」


「優人からか?」



セシリアは手紙を受け取り、早速中身に目を通す。



「えっとなになに………

『セシリアさんへ


とりあえず敵は全部片付けたから後始末は任せた。

言いたい事とか色々あるだろうから、そっちが片付いたらまた俺の家まで来てくれ、暫くどこかに出かける予定も無いからいつ来てくれても構わないぞ。


優人より』


…………人騒がせな奴だ」




はぁ、とセシリアは気が抜けたように天井を見つめる。


こうして、王国の危機はたった一人によって救われたのだった。












想像を絶する強さで敵を瞬殺する優人。

セシリアが慌てるのも何だか分かる気が(笑)

次回で3章前半が終了します。


次回投稿は4/25(火)13:00予定です


※誤字脱字、感想等ありましたら何でもお申し出下さいm(_ _)m

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