表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひねくれ者の異世界攻略  作者: FALSE
〈3章 アドゴーン山編〉
100/180

16話




「ナナしっかりして!!」


「リアさん………」


「ナナは私がオーガを引き付けてる間にリザードマンとフォレストイーターを1体ずつ、確実に倒していって!!

イリスは魔法でナナと私の援護、ニレはちーちゃんを連れて下がって家に近づく奴がいないか警戒して!!

イリス、後ろの森から敵の気配は?」


「多分、ない」


「ありがとう!!

何としてでもこの家だけは守ろう、みんな!!」


「「「うん!!」」」



4人の意志が1つにまとまり、迫りくるモンスターの群れとの壮絶な戦いが始まった。





















───────────────────────────────






─────ズパッ、ガンッ。



「グァァァァッ!!?」


「くっ……………

はぁ、はぁ、はぁ………」




オーガの振り下ろす棍棒を躱しながら、手に持つ短剣で片腕を切り落とす。


モンスターの軍勢と戦闘を始めてからもうそろそろ1時間が経過しようとしていた。


最初は優人がナナとリアに渡していたMR装備、イリス用に造られた杖の能力が圧倒していたが、どれだけ倒しても増えるため一向に終わりの見えない戦いに全員が疲弊し始めてきた。

それでも負けまいと歯を食いしばり、目の色を変えて力を振るう。



だが、その10分後には形勢が大きく傾く。




「がはぁっ!?」


「………もう、無理………」


「リアさん!!イリスちゃん!!」




体力の限界かオーガの棍棒を躱しきれず直撃し、後方に居たニレの所まで大きく吹き飛ぶ。

イリスは魔力切れらしく、その場の倒れ込み意識を失う。


吹き飛ばされたリアの元に居たニレはどうしていいかわからず、ただ茫然としていた。




「ニレ、ナナ…………逃げ、て………」


「メイド長!!しっかりしてください!!

ナナさん!!イリスちゃんを連れて逃げ─────あぁそんな………」




これ以上は戦えないと判断したニレはナナに撤退を告げようとするが、そこにあったのはリアが抑えていたオーガにも囲まれ八方塞がり状態のナナの姿。




「あ、あぁ、オーガ………」




背後にも別のモンスターが居るがナナの頭の中は目の前に迫りくるオーガの事しかなかった。

家一階分はありそうな体格に人では有り得ない筋肉の配置、手に持った棍棒は成人男性程。


そんな天敵・オーガを前にしてナナは両手で握っていた剣を手元から落としてしまう。



精神をオーガへの恐怖で完全に支配され立ち震えるナナに、棍棒を捨てたオーガが1匹近づきナナの腕を強引に掴み、宙に持ち上げる。




「痛っ!!

や、やめて離してぇっ………お願い…………」




苦悶と恐怖で表情を歪めるナナ。

そんな事お構いなしにオーガはナナを舐めまわすように見る。


元々特訓中だったナナは軽装だったため、衣類は所々破れ、下着はおろかもう少し傷が付けば衣類が完全に脱げ落ちるかもしれないような、ぼろ布を纏ったような状態だった。


そんなナナを見たオーガは多分、いや確実に───発情した。




「え────がはっ!?

………あ、や、やめてっ………」




ナナを勢いよく地面に叩きつけ、ぼろ布同然のシャツ、スパッツを力ずくで破るオーガ。

恐怖に負けているナナは抵抗する事も出来ず、下着姿になるまでされるがまま。

しかしオーガの手は止まらない。


他のモンスターはそれを一興とでも捉えているのだろうか、ただその光景を大人しく眺めていて手を出してこない。




オーガがナナの下着を剝ぎ取り終えるまでの間、ナナの脳の中ではあの幼き日の惨状が思い出されていた。


ただ鳴き声にもならない様な奇声を上げ発狂する友人、ピクリとも動かず生きているのか死んでいるのかわからない大人達、そしてオーガに押さえつけられている自分。


その光景からこみ上げてくるのは、絶望。絶望。絶望。絶望。




「あ、あぁ嫌、やめて…………」




枯れるほどに涙を流し、無意識に漏らしているナナを見るオーガの顔は、酷く醜いまでのニヤリ顔。



惨状を思い出すナナは、それと同時にある青年の背中も思い出す。

それは、自分にとっての英雄であり、愛する者でもある、希望そのもの。




「…………ぁ、ゆ、ユート、助けて、助けてよぉ…………」



今は姿のないその一縷の希望。

青年の名をナナはか細い声で、縋りつく幼子の様な声で、ただ祈るように助けを求めた。



その姿に少々イラついたのか、オーガは片方の手を振り上げ、ナナの顔目掛けて振り下ろす。



(あぁ、もうダメだ……ナナはここで終わるんだ………)



ナナは目を瞑り、拳の振り下ろされるその時を無抵抗で待つしかなかった。










─────ゴッ。











静寂が、続いた。



ナナの顔を激痛が襲うことは無かった。

それどころか、若干押さえつけられていた腕の感覚が弱まっているようにさえも感じた。



(…………死んだ、のかな。天国、なのかな)




恐る恐る目を開けると、そこにあったのはオーガの拳を受け止める剣。



そして──────祈りは届いていた。





水色と白を混ぜたような色合いのフード付きマントと、それと同色のガントレット、ベルト、靴で身を固めた青年。

これもまた同色の剣を大きく振るいオーガを吹き飛ばし、ナナを見つめて口を開く。




「悪い、待たせたな」



「……………ユートぉ」






青年・優人の顔を見たナナは先程とは全くの別人の様に明るい笑顔を見せる。



優人は収納から少し大きめの白布を取り出し、ナナに優しく掛けてやる。




「ここで待ってろ、すぐ終わらせるから」


「うん、待ってる」



言動一つ一つに恍惚しているナナに柔らかな笑顔を向けると、吹き飛んだオーガのほうに向き直り剣先を突き立て、声量は少ないものの濃いぐらいの怒気を孕んだ声で宣言する。




「よくも俺の女に手を出したな。

後悔なんてさせるかよ───────皆殺しだ」






英雄は本当の窮地に現れる。

帰って来た優人は何を魅せてくれるのか?


次回投稿は4/18(火)13:00予定です



※誤字脱字、感想等ありましたら何でもお申し出頂ければ幸いですm(_ _)m



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ