魔王は決める
今回も短めです。
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「待て。」
ころされるぅぅぅ!!と思った瞬間、救世主が現れた。ルシアだ。ありがとう、心の友よ……!(出会ったのはついさっき)
「……ここの生徒ではないな、誰だ?」
「ルシアと言う。それより、その少年……ミカはミスリルスパイダーに襲われていた。だから遅れた。緊急事態だ、許してやってくれないか。」
本当にありがとう、ルシア……。
ちょっと上から目線な気がするけど。
「ミスリルスパイダーだと……?そんな魔物がこの付近にいるはずがない。それに貴様には関係ないだろう。関係があると言いたいのなら、この学校に入学してから言え。」
女性の言葉に俺は驚く……が、ルシアはそうでもないように目を伏せた。それが考え事をしているのだと理解したときには、ルシアは顔を上げ、頷いていた。
「なに……?本当に入学するというのか?」
「そうだ。しかしこちらにも都合がある。少し待ってほしい。」
「構わん、だが逃げたときにはこの生徒に罰を与える。」
え、ぇぇぇ。俺のよくわからないところで取り引き進んでる~。しかも物騒な単語聞こえた~。
ってか、ルシアどこ行くんだ!?
「ルシア!」
名前を呼ぶと、ゆっくりと振り返り、男の俺でも見とれるような微笑みを見せた。
「すぐ戻る。」
そう言われてしまえば、確証もなにもないのに、大丈夫だという安堵に満たされた。
――――――――★――――――――
「ダンタリオン」
名前を呼べば、優秀な彼はすぐに姿を現す。
今度は声だけでない。姿を見せた。
長い黒髪。それを伸ばしっぱなしにしているにも関わらず、ダンタリオンの髪はとても美しい。昔そう言えば、「そういうことは、女性に言ってあげてください」と言われた。確かにそれもそうだと納得したものだ。
「……どうされましたか、魔王様。」
ダンタリオンの黒い眼がオレを見つめる。そこに映っているオレは微かに笑っていた。
「ダンタリオン。オレは学校へ通ってみようと思う。」
「……はっ?が、学校って、あれですよね?」
ダンタリオンが指差す先に、ミカが通っている学校。そうだ、と頷く。
「ま、魔王様。やめてください、お願いしますから。」
「なぜだ?あの学校に年齢制限や、ヒト以外がはいってはいけない、というルールなどないだろう。」
「いや、暗黙のルールというものがありまして……。って、それよりあの学校の奴らは、私の大切な眷属を二人も殺したんですよ!?」
ダンタリオンの言うことは最もだと思う。なにも魔物全てが悪いことをするわけではないのだ。しかし、ヒトは関係なく我が眷属を狩っていく。
「第一、なぜあの人間にそこまで拘るのですか。人間がほしいなら、力ずくで人形にしてしまえば良いのに。」
彼は心底めんどくさい、という顔をした。オレもそう思う。だが、それでは意味がないのだ。
「仕方がない。」
オレが呟くと、ダンタリオンは今度こそ溜め息をついた。
「命令だ、ダンタリオン。オレの通学を許可し、――――――君も、学校へ通え。」
「……………………は??」
おそらく、オレの通学だけと思っていたダンタリオンはさぞ驚いただろう。持っていた書物が彼の手から滑り落ち、ドサリと音がする。
「ルシファー様、今、なんと???」
「君も学校に通え。君にとってヒトを真似ることなど簡単だろう。」
「しかし――」
「それに、君が抱いている眷属を殺され、ヒトを憎む気持ちはヒトに似ているだろう?」
ダンタリオンが息を飲む。少し意地悪な問いかけをしてしまったかもしれない。
しばらくの沈黙のあと、諦めたようにダンタリオンは頷いた。
「わかりました……ですが、危なくなったらお逃げください。いいですね?」
「わかっている。それと、ダンタリオン。オレはルシファーではない、ルシアだ。当然、魔王様も言ってはいけない」
「では、妥協点で、ルシア様と」
呼び捨てでも構わないのだが、彼は生真面目だ。
しかし、これで少しは心細くなくなった。ダンタリオンが居てくれるならいろいろと楽になるだろう。
さあ、ミカを待たせてしまった。
「行こうか」
「本当に趣味の悪いお方だ……」
目を細めて笑みを顔に張り付けたオレを見て、ダンタリオンが呟いた。
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