【2】
【2】
あれから、何度呼びかけてみても彼が応答してくる事がなかった。
改めて自分の身体を手で触れてみると、筋肉質でかたくて本当に男子の身体である事を実感する事ができた。頭を触ると以外とサラサラの髪質していて羨ましいな、なんて思った。
「やっと起きましたか?」
「誰?」
そう言うと相手の青年は怪訝そうな表情を浮かべている。
「とうとうボケましたか?そんなに若いのに?」
「いえ、違うんです。私は…!」
「私?」
「僕は…!」
今の状況を説明しようとしたけれど、上手く言葉が出てこない。そのまま何も言わないでいると、じっと私を見つめてふぅとため息を吐き出す。
「それは災難ですね、いきなり知らない世界に飛ばれてしまったとはね。しかも、よりにもよって落ちこぼれの身体とは。元に戻るまで時間がかかりそうだ」
「?」
「あ、これは失礼。言葉が出てこないもので勝手に心の中をのぞかせていただきました」
「えぇー!? …エッチ!」
「ふむ、とりあえず…その古い返しには貴方は何歳ですか?とつっこみをいれておきます」
「12才よ」
「そうでしたか」
とりあえず名前を聞いていないので、エスなこの人の事をエスと呼ぼう心の中でだけで。
「ほほーう、私のような性格を向こうではエスというのですか。覚えておきましょう」
しまった。心の中でも覗かれる、このどエスに。
「どうせ見られて困る物なんてないでしょうに」
「部屋を見るように言わないでください!」
「私にとっては似たようなものです。それに貴方のガードが弱すぎるんです。少しはガードする事も覚えた方がいいと思いますよ」
「…そうします」
「そうそう、私はその身体の持ち主の兄ですが、呼び名が決まっているのなら特に名前を名乗る必要もありませんね。しばらくの間、よろしく」
この最悪な印象の意地の悪い笑みを浮かべている彼に、これからの生活が苦であろうと予想して、この世界から帰りたくなくなる事なんて想像していなかった。