はんまー
「少し待っているのである。」
クリフさんは仮設テントっぽいところに向かっていった。そこでなにやら布で包まれた大きな物体をもってこちらに戻ってくる。
「これがレッドボアを倒した自分の武器である。」
クリフさんはそう言うと、包みをはずし地面にどすんとその物体を立てた。置いただけで地面がへこんでいる。
「これは・・・、巨大スレッジハンマー?」
その武器は巨大なスレッジハンマーだった。オール金属で柄も太ければ円筒状の槌頭もでかい。これは重そう。
「その通り、スレッジハンマーなのである。銘は『ひゃくとんはんまー』なのである。」
ちょいとまてや。昔の漫画であった100tハンマーなんかい。そーいや、ネタ武器で作ってた友人がいたな。重量数値1で与ダメージ0エフェクトだけがギャグ漫画的に効果があるやつを。槌頭の側面に『100t』って文字まで入れて。何気なくそんなことを思い、クリフさんのひゃくとんはんまーを見ていると・・・そこには『ひゃくとんはんまー』って日本語の文字が・・・。ちょっと頭痛がしてきたよ。でもこれがあるってことは、僕以外のプレイヤーが存在するってことじゃないか。これはどうして手に入れたか聞かないとね。
「これは友人に譲り受けたのである。友人もまた異邦人なのである。」
どうやって入手したかを質問したらそう答えてくれた。やっぱり中央ってとこにはプレイヤーがいる。やはり、中央と言われる場所にいかないと。とりあえず目標ができた。『中央に行って僕以外のプレイヤーに会う』という目的が。
「その人に会うために、中央ってところに連れて行ってくれませんか?」
僕はクリフさんにお願いをした。この人なら連れてってくれるんじゃないだろうか、そんな期待はもろくも彼の返答で崩れ去った。
「すまないが連れていけないのである。ここから中央には、1年に1度しか通行が許可されてないのである。これは途中の魔獣の生息域が変わってしまった為、安全を期す為しかたないのである。」
ということは強引にでも向かう、若しくはあと半年ここで待つという二通りしかないってことだけど、自分がどうなっているかの把握もできていない現状では、それを待つ以外に道はなさそうだ。あと半年の生活もどうにかしないといけない。そんなことを考えていると、なにやら怒った声が聞こえてきた。はて、どっかで聞いたことがある声のような・・・。
「クリフ、なに持ち出してるの。メンテも終わってないのに。」
ハンマーが置いてあったテントから、一人の女性が文句を言いながら近づいてきた。
「彼女がこれを譲ってくれた友人『リン=スプリングフィールド』嬢である。」