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ハーレム主人公の下校

「で、なんで唯さんまでいるんですか?」

 朋夏は俺に腕をからめてぐいっと引っ張った。

 帰路では、いつものように朋夏と唯が口喧嘩を始める。


「べ、別に朋夏ちゃんには関係ないでしょ。

 幼馴染だし家が隣だから一緒に帰ってるだけよ!」

「隣を歩く必要はないですよね。ついてこないでください。

 それとも唯さんが先に行きますか?

 ともかく、お兄ちゃんと朋夏の邪魔しないでください!」


「あなたねぇ! ただの妹でしょ!

 あたしと春人が一緒にいたってあたし達の勝手じゃない。

 それに、なんなのその口のきき方は。

 あたしの方がお姉さんなんだから、少しはまともな口をききなさいよ!」

「唯さんが朋夏のお姉ちゃんになるなんて、絶対認めないから!」


「今の話の展開は、ちょっと無理があるよね。

 唯の言った『お姉ちゃん』を朋夏が義姉ちゃんだと聞き間違える下り」

 俺は思ったことを口にしてみた。


「お兄ちゃん(あんた)は黙ってて」

 あ、うん。ああ、はいはい。分かりました。


 俺とのやりとりはなかったことにされて、寸劇は進む。


「大体、あなた妹ってだけなのに春人にデレデレし過ぎなのよ」

「幼馴染ってだけでまとわりつくよりはマシです」

「なによ、生意気ね!」「唯さんだって、図々しすぎです!」

 ばちばちと擬音でも鳴りそうな感じで睨みあう。


 別に構わないんだけども、俺を間に挟むのはやめてくれないかなぁ。

 これ以上に発展すると結局、俺が被害をこうむって、ちゃんちゃん!

 みたいな終わり方になるんじゃないか、という考えがよぎる。

 っていうか、そういう経験が思い出される。

 しかし、腕を朋夏に絡め取られているので逃げることもできない。


「2人とも、もう下校してるんだからキャラ磨きも、そこまでにしようよ」

 とでも言いたいのだが、真剣に演技している所に

 メタっぽい発言を浴びせるとさっきみたいに怒られてしまう。


 (主に俺に対する)暴力行為に発展しませんように

 ……と祈りながら、歩を進める。


「春人はどっちを選ぶの!」「お兄ちゃん、どっちって聞いてるでしょ?」

 自分が呼ばれたのに気付いて驚いて意識を戻すと、

 睨みあっていた2人は俺の方へ視線を移動させていた。


「え、え、なに? どうしたの?」

「もう……いっつも聞いてないんだからっ!」

「正直に言うと唯さんに失礼だから、華を持たせてあげたんだよね?

 ねーお兄ちゃん?」


 急にいっぺんに捲し立てられて何がなんだか分からない。

 茫然とするより他はない。


「なによ!」「なんなんですか!」「「ふんっ」」

 ツクリモノめいてるけれど、非常に綺麗にまとまった感じになった。


 どうやらお芝居の練習もお仕舞のようで、2人も肩の力を抜く。


「ねぇねぇ、春人! 今日の下校はどうだった?」

 先ほどまでと違って、

 唯は友好的な笑みを浮かべて落ち着いた調子で聞いてくる。


「ちょっと大げさだったけど、よかったよね? お兄ちゃん」

 朋夏の方も視線を崩している。

 俺にまとわりつけていた腕も今は解いていた。

 ちょっと残念。


「少し強引過ぎるし、やり過ぎ感はあるけど、

 まぁ見栄えとかの問題もあるからね。よかったんじゃないかな。多分」

 春人はいつも煮え切らないわねー、

 なんて言いながら朋夏ときゃーとか言いながらハイタッチをする。


 俺は不満があると自分が考えていることを語り始める人間なので、

 文句がないというのはそれだけで凄い褒めているということになるのだ。

 幼馴染と妹はその事をよく分かっている。


「それにしても、相変わらず惚けるのがうまいよね、春人。

 まるで本当に話を聞いてなかったみたいに思えるもん。

 あんたの演技」

「え、ああ、そ、そうかな。

 まぁ俺も鈍感系演じるのも長いからね。あはははは」

 本当に聞いてなかっただけなのだけれど、

 俺は日本人特有の苦笑いで乗り切ることにした。


「ほんとお兄ちゃん、そういうのうまいよね。

 言いたくても言えない! でも、やっぱり伝えたいよ!

 って頑張ってるのを一気に無下にしちゃうの」

「わかる、わかる。じれったいよねー」


 結局、いつものように俺のキャラクター性をバッシングする話になる。

 ひとしきり罵詈雑言を聞き終えて、

 げんなりしてきた頃に我が家に到着した。

 唯の家もすぐ隣だ。


 大きな家が立ち並ぶ住宅街で、学校へも徒歩で通える距離にある。

 料理の買い出しなどもすぐ近くで済ませられる。

 非常にいい立地条件だ。


 唯に別れを言って、朋夏と一緒に門をくぐって玄関を開く。

「ただいまー」


 後ろ手に閉まる玄関の音に負けないように、

 大きな声で帰宅の挨拶を済ます。

 土間には1足の運動靴が置かれていた。

 向かって右のリビングの方からイスが引かれたような音が聞こえた。

 しかし、返ってくる声はない。


 靴を脱ぐと朋夏が勝手に俺の分まで揃えてくれる。

 それが終わると、俺の腕に抱きついてきた。


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新連載 『転生勇者は魔王の手先!? -チーレム勇者の異世界無双-』 開始しました!

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