表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/69

見えない選択肢

1/7 8:06 二重投稿申し訳ありませんでした。修正しました。

「俺は朋夏を見捨てたくない。

 でも、朋夏の重りにだってなりたくない。

 小さい頃から、朋夏は俺を好きになるように仕向けられた。

 あなたにね。

 俺は朋夏に沢山の選択肢を持ってほしい。

 その選択肢がうまく行かなかった時に、

 『朋夏の魅力が分からない男が悪いんだよ』って言ってあげたい。

 そして、もっと朋夏にふさわしい男を見つける手助けをしてあげたい。

 どうして俺と朋夏を婚約なんてさせたんです?

 いつまでも続かないってことくらい、

 父さんだって分かってたはずでしょ?」


 義父の視線が横に逸れた。


「ねえ。

 俺には選択肢なんて元から用意されてなかったんだ。

 俺と朋夏には血縁関係はない。いわば他人だ。

 朋夏を選ばなかったら、俺と朋夏はどうなるんです?

 千秋はどうなるんですか?

 元に戻るんですか?

 でも、俺たちには戻る場所だって、もう残っちゃいない。

 俺が朋夏を選んだら、朋夏はどうなるんですか?

 答えなんて、どっかにあるんですか?

 俺には選択肢なんて、どこにも見えない」


「すまない」


 押し殺したような声が、義父の方から聞こえた。


「俺はあなたを攻めたい訳じゃないんだ。

 感謝だってしてます。

 ここまで大きくなれたのだって、父さんのおかげだと思ってる。

 朋夏も千秋も立派に大きくなった。

 感謝はしてるんですよ」


 でも、と俺は続ける。


「でも、わざわざこんな機会を設ける為に賞まで貰っちゃって。

 俺たちこの劇を作るのに色々あったけど、

 でも真面目に取り組んだんですよ。

 それをこんな形で賞をくれるなんて、なんていうか、残念ですよ」


「いや、それは違う。

 話だったら、この場じゃなくたって出来た。

 身内びいきや、原作が私の作品だから選んだ訳じゃない。

 劇として、凄くよかったんだ。

 ……私が作ったよりもずっと、な」


 言いたい反論は沢山あった。

 けど、どうにも噛み合わない。


 俺は言葉通り、父さんに感謝はしている。

 恨んでいる訳でもない。


 朋夏と千秋との生活に満足しているし、学園での生活だってそうだ。

 ただ、こと朋夏のこととなると、俺には考えることが多すぎる。

 それに、考えた後で、結局は思考停止しなければならなくなるだけだ。

 俺に選択肢はない。


 俺の選択で、朋夏の人生を多少なりとも変えてしまうことは、

 俺にはしたくない。


「もう、良いですか。みんなも待ってると思うので」

「ああ。すまなかった。

 最後に、これだけ受け取ってくれ」

 便箋を渡される。

 部屋の明かりに透かしてみると、中には手紙が入っていた。


「私の口から直接言うべきなんだが、……やっぱり話せなかった。

 すまない。私には文章を書く方が得意でね。

 いや……得意でもないかもしれないな。

 そこに書いたことは私の本心だ。

 どうなっても、私に出来ることはさせてもらう。

 いつからか、私には思い出せないが、ずっと後悔してたんだ。

 すまなかった」


「さっきも言った通りですけど、感謝してるんですよ。父さん」

「いや、いいんだ。私は父親にはなれていない」


 義父が俺の言葉を拒絶している以上、もうかける言葉は俺にはなかった。

 便箋を持って、部屋を後にする。



 俺は自分たちが使っていた楽屋に戻った。

 中には、みんなが揃っていた。

 朋夏が心配そうな顔を俺に向ける。


「まだちょっと時間かかりそうだから、先に帰ってて」

 とみんなに言って、自分の荷物を取り上げて楽屋を出る。


 俺は楽屋から少し遠いトイレの個室に入った。

 渡された便箋の端を破ると、中には3枚の手紙が入っていた。

 それぞれを3回ずつ丁寧に読んで、俺はそれを破った便箋に戻す。

 カバンの中からクリアファイルを取り出して、便箋を中に入れて、仕舞った。


 劇をやった体育館から出ると、辺りはもう薄暗くなっていた。


 出店は既に人がいない所が多かった。

 明日1日片付け日になっているから、

 出しっぱなしにされている出店が多い。


 友達に頼んでいた、

 出店の食べ物は朋夏と千秋が持って帰ってくれているはずだ。

 俺は帰路についた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載 『転生勇者は魔王の手先!? -チーレム勇者の異世界無双-』 開始しました!

気に入った方は 評価お気に入り感想などをいただけると嬉しいです。

▼こちらの投票もよろしくお願いします▼
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ