第1位
「では、栄えある1位を発表させていただきましょう」
司会はわざとゆっくりと言葉を発音する。
「平均得点4.5点」
やっぱり例年よりも、得点が低い。
けど、そんなことはどうでもいい。
頼む……。
「第・1・位」
一語一語確かめるかのように司会は言う。
注意を惹きつけるためにわざとやっているのだろうが、
こちらとしては早く結果を知りたい。
早くしてくれ、そして、頼む!
「『転生勇者は魔王の手先!?』!
どうぞ、グループのみなさんはこちらに。
みなさま、拍手でお出迎えください!」
その場の、俺も含めた全員の空気が緩んだのが分かった。
「あーだめかー」
「そっかー3位にも入らなかったかー」
何とはなしに結太の方を見る。
すると、その視線を勘違いして作品の解説を始めた。
「ファンタジーものだね。アニメ。
やっていたゲームの中に取り込まれてしまうって話。
勇者として召喚されたのに魔王に捕まって、
魔王と一緒に戦うようになるって話」
上位入賞作品は、どうせ授業で取り上げて視聴会やるだろうから、
その時よく見て」
別に作品が気になっているというよりは、今の状況、
つまり、3位入賞ならずってことを
結太がどう思っているのか聞きたかったんだけど。
チームのみんなも、文化祭の緊張が解けながらも、
ちょっと不満そうな顔をしている。
「良い線行くと思ったんだがなぁ」
口を尖らせながら、紅音先輩が言った。
他のみんなも「そうですよね。
何がだめ、……足りなかったんでしょう」と言葉を選びながら、
落胆を隠しきれない。
「ごめん、やっぱ俺が」
「春人くんのせいじゃないってー。
即興劇として、凄くよかったよ」
薫が慰めてくれる。
こいつの底抜けの明るさにはいつも救われる。
「ま、審査するのは私たちじゃないんだから、仕方ないんじゃない」
と、八代は一人だけ、あまり気にしていない風だ。
唯と朋夏は、2人で不満そうに
「どうすればよかったのかなー」と話合っている。
「まーまー、僕も次さらに頑張りますから。
気持ち切り替えていきましょうよ」と結太。
「それでは、今一度1位入賞のみなさん。
それから、檀上に控えているクリエイターすべての
みなさんに拍手をお願いいたします!」
結太が拍手をする。
それにつられて俺たちに伝染し、
周りに控えている他のクリエイターのみんなもつられて手を叩いた。
「はい。みなさま盛大な拍手をありがとうございます。
では、これにて本文化祭の発表会を終わりにさせていただきます。
みなさま……」
そこで司会がいきなり黙った。
何だろう? と司会に視線が集まる。