結果発表
表彰は全学年で3位まで。賞を貰えれば、
外部から来ているスカウトの人間に覚えてもらう可能性が一気に高まる。
この学園では、
「(スカウトされて)中退しないやつは、才能がない」と言われたりもする。
年に1度の文化祭のここでの評価は、今後の人生を大きく左右する。
もちろん、受賞せずとも個人で目をつけてもらえることもあるけれど、
その可能性はずっと低い。
舞台では、司会がマイクを握って、進行を続けている。
「おっと、ここでようやく審査が終わったようです。
どんな作品が受賞するのか、みなさん楽しみですね。
では、発表していただきましょう!」
舞台が暗くなり、ドラムロールがなる。
照明がステージをなめるようにぐるぐるとあちこちを照らす。
「平均得点、3.7点。
第3位。
『首輪付きの奴隷』!
クリエイターのみなさんの登場です。
みなさん、拍手でお迎えください!」
3位で3.7点となると、例年よりも今年はシビアなのかもしれない。
冷静に考えるが、あまり意味がないな、と思い直す。
俺のせいで、俺たちの劇は物語としての流れをなしていない。
選ばれる可能性はないだろう。
俺の予想では、文化祭の最初を飾った『アイの軌跡』が1位だと思う。
この学園での状況に一石を投じるかも知れない、
という意味で審査員に好まれそうだ。
となると、次で俺たちの作品が来てくれないと受賞は厳しい。
「結太、さっきの作品どんなだった?」
全作品をカメラの映像でチェックしていた結太に聞いてみる
「アニメ。高校生が異能力で戦うバトルものだった。
アクションが多めだったかな」
「出来は?」
「僕の書きたい分野と違うから、判断できないよ」
そりゃそうか。
舞台に目をやると、
創作科とおぼしき冴えない恰好の監督がトロフィーを受け取っていた。
舞台に向かって3度、トロフィーを掲げた。
割れるような拍手の中、一礼をして舞台袖に返ってくる。
また、舞台が暗くなり、音と光が舞台を演出する。
「平均得点4.2点。
第2位」
司会がそこで言葉を区切る。
頼む、ここに入ってくれ。
なにも賞の為だけに、出し物をやっている訳じゃないが、
この数か月間の練習に価値がほしい。
「『アイの軌跡』!
制作者のみなさんに、登場していただきましょう。
みなさん拍手をお願いします!」
「あーあ」
と思いかけて、あれ行けるんじゃないか、と思い直す。
『アイの軌跡』!
物語性から、1位だと思っていたけれど、結果は2位なのか。
今日は文化祭であって、物語だけを審査する場所じゃない。
そもそも、ここはキャラクター文化研究学園であり、
何よりも重要視されるのはキャラクターなのだ。
物語に多少欠陥があっても、
それがキャラを引き立てる為のものなら減点にはならない。
結太も含めて、演じたみんなが言っていた通り、俺らのやった演劇は、
(俺のせいで)演技の枠を超えた
演技だったのだ。
3位もアニメ、2位もアニメ。
キャラ学では、例年、アニメよりも演劇が評価されることが多い。
やっぱり、人間がその場で会場内に声を響き渡らせる気迫、
のようなものが審査員の感情を打つかも知れない。
「おい、もしかしてこれ行けるんじゃないか?」隣の結太に小声で言う。
「あれ、2位なんだな。僕は1位かと思ってた」
「次演劇が来るぞ、多分」
「待ってれば結果が分かるよ」
結太の声は素っ気ないが、食い入るように表彰台を見ている。
首を少しだけ動かして周りのみんなを見てみると、
さっきまで楽屋で爆笑してふざけ合っていた人たちとは思えないくらい、
真剣な眼差しだった。
俺も同じような表情をしているのだろう。
視線を舞台に移す。




