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あいまいガールフレンド

 3人が去って、唯が俺の傍に歩いてくる。

 俺は倒れたままの姿勢で、唯を見上げる。


「ほんと、ばっかみたい。

 誰か一人でも選べば、こんなことにならなかったのに。

 紅音先輩が卒業するまでの時間だって、

 いつも通りに過ごせたかもしれないのに」


 そこで唯は言葉を切った。

 けれど、俺には返せる言葉がなかった。


「ずっと、そうやって悩んでるつもりなの?

 それとも、自分だけが波風立てないようにしてるつもりなの?

 あたしたちだって壊したいなんて、思ってなかった。

 思って……なかったんだからっ!」


 言い終わる前に、唯の言葉が揺れ、涙が流れ始めた。

 それを隠すように、唯は後ろに振り返って、駆け足で去って行った。


 呆然と唯を見送って、たった一人残っている朋夏を見やる。


 たった一人の妹。

 たった一人の肉親。


「俺、何やってるんだろうね。

 自分で自分が嫌になるよ。なっさけない。

 朋夏も、お兄ちゃんがこんな愚図でごめんね。

 まったく、恥晒しのお兄ちゃんで、……ごめん」


わたしは、お兄ちゃんのこと、慰めないよ」

「……うん」

「朋夏をお兄ちゃんの恋人にはしてもらえないんでしょ?」

「うん、当たり前だろ? 俺たちは『血の繋がった』兄妹なんだから」

「うん、そうだね」


 言って、朋夏が俺に近寄ってくる。

 俺は朋夏を呆然と目で追う。


「お兄ちゃん。朋夏は家族だから。

 お兄ちゃんの恋人になれなくても、

 でも、朋夏はずっと一緒にいるからね。

 お兄ちゃん、朋夏は、ずっと傍にいるから。

 もう苦しまなくていいんだよ」


 言って、朋夏は俺を抱き寄せた。


わたしとお兄ちゃんは、家族だから。

 お兄ちゃんはお兄ちゃんだから。

 それは一生変わらないんだよ。

 お兄ちゃんの気持ちみたいに、曖昧なものじゃ、ないんだよ」


 5秒、4秒、3秒、2秒、1秒。

 0。


 俺も朋夏も、何も言わなかった。


 劇は終わった。


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新連載 『転生勇者は魔王の手先!? -チーレム勇者の異世界無双-』 開始しました!

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