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桐原家の事情

 俺たち桐原家の両親は、養子を得る為に偽装結婚をした。


 インターネット上で要望を募り、互いの意見が合致して結婚したのだ。

 養子を得るためには、結婚をしていなければならない。

 それは法律で定められている。

 それを済ませてしまえば、後は雑多な手続きが残るまでだ。


 3人の子供が養子になった。

 そして、両親は事前の約束だった通りに離婚した。

 そして、俺たちは兄妹は桐原の家に残されて、

 監視カメラの前で生活をしている。


 なんでそんな事をになったのかと聞かれると、

 かなり時間をさかのぼる事になる。


 当時学校を幾つも経営していた義祖父は、

 義父の勧めでとある学校にある学科を作った。

 それが「キャラクター学科」。

 当時はキャラ科と創作科が一緒にその学科に入っていた。

 義父は、自分の思惑通りその中で創作を学んで幾つもの作品を作った。


 義父は小説家だったが、小説を書き、演じさせ、

 そしてそれをアニメ化やらドラマ化やら映画化した。

 義父や学科の生徒・卒業生が成功する度に、

 キャラクター学科は規模を大きくしていく。

 そこそこ順風満帆だったようだけれど、

 義父はそれでは飽き足らずにさらに進めたくなったらしい。


 自分の考えが正しい事を証明する為に、

 養子をとり、俺ら子供たちにキャラ付けをした。

 家中に監視カメラを設置して、俺らには盗聴器を持たせた。

 それが桐原家だ。


 俺が中学生の頃に出した俺たち姉妹を題材にした義父の作品は、

 それまでと比べものにならないくらいの人に読まれ見られ消費された。

 空前の大ヒットだ。


 それだけじゃなく、相乗効果で今まで作品も売れに売れた。


 もうその頃には、単なる学科でしかなかったキャラクター学科は、

 一つの学園になっていて数々のクリエイターを吐き出していた。


 ちなみに。

 父親の意向で俺と朋夏は婚約している。

 そういう事情が、桐原家にはある。



 放課後。

 怒ったままの唯を宥めながら、帰ろうとする八代を引きとめて部活へ。

 まだ時間はあるとはいえ、演劇の練習を詰めていかないといけない。

 結太が物語の改変を最後まで書き上げるためにも

 俺たちキャラ科の人間は、それを手伝わなければならない。


 少しごたごたがあったせいで出遅れた。

 部室には、既にグループのみんなは集まっている。

 朋夏は両手に華の俺をちらりと見たけれど、

 少し表情を崩して不満げな顔を見せるだけで、やっかんでは来ない。


「おーい、おせーぞ」と紅音部長先輩。

 すいません、と頭を下げつつ輪に近づく。

 グループのみんなが立ち上がって、演劇スペースに赴く。


 先週の分に加筆が加わった台本を読みながら、演劇の合わせを行う。

 出遅れた俺と唯と八代は台本ガン見だ。

 他の人は覚えた部分は見ないようにして喋る。

 紅音先輩は開始からまったく台本を見ずに演劇をしている。

 やっぱすげーわ、この人。


 土日を挟んだ事もあって、台本の分量は結構増えていた。

 けれど、……ちょっとペースが遅い。


 結太としては何か思う所があるのだろう。

 このままのペースだと文化祭に間に合わない恐れもある。

 キャラ科一同が頑張って、

 結太のインスピレーションに寄与しなければならない。


***


カナエ

「春人くん、優柔不断なのも良いけど。

 でも、それってみんなを傷つけてるんだよ。

 その自覚はしてる?」


アカネ

「私もそろそろ卒業だし。

 結論が出ないままいなくなるのは、ちょっと嫌かも……。

 可能性がないなら、きちんと断って欲しい」


カオル

 悲しそうに微笑んでいる(自分が選ばれる事はないという確信)。


ユイ

 胸の前で腕を組んだままハルヒトをちらちらを見る。

 膨らませた頬は上気している。


トモカ

「私、お兄ちゃんのこと、信じてるから」


カナエ

「誰を選ぶにしても、誰も選ばないにしても。

 アカネ先輩が卒業する前に決めてあげないと、可哀想だよ」


ハルヒト

 (誰を選ぶにしても選ばないにしても。一つの選択として、それは残る)


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