台本制作中!
トモカ
「だから、トモカのお兄ちゃんに近づかないでください!」
ユイ
「そんなのあたしの勝手でしょ! 妹さんは、引っ込んでなさいよ」
ビッチ
「そうよ、あんたは黙ってなさい!」
アカネ
「あんたたち五月蠅いわよ。春人くんは私と付き合うの。
そうでしょ? 春人くん?」
カオル
「あーあー先輩まで。みんな落ち着いて。喧嘩はよくないよー」
ビッチ
「オトコオンナはうっさいのよ。入ってこないで!」
カオル
「ううっ……ひどいよ、カナエちゃん……」
泣き出してしまうカオルに近寄って慰めようとする春人。
ビッチ
「そうやって、すぐ桐原くんの気を惹こうとして……さもしいのよ!」
カオル
「ボク、そんなつもりないのに……。違うからね? 春人くん……」
ユイ
「あーあーあー。なんで、こんな事になってんの?
あたしが春人と一緒に帰るってだけだったのに。
それもこれも妹さんがでしゃばるからよ!」
トモカ
「あなたが図々しくお兄ちゃんを誘惑するからでしょ!」
***
結太による台本は鋭意製作中。
できた所から、俺たちは演じていく。
演技指導なども入りながら、結太の頭の中にある
物語の世界とのズレを埋めていく。
俺らが演じる様を見たりして、結太はインスピレーションを受けるらしい。
書く、演じる、フィードバック&リライト!
そうやって、物語が形作られていく。
現代の創作家はスピードが求められるようになった。
単に物語を紡ぐだけじゃない、
すぐさま各種メディアに展開することが求められてくる。
インターネットのSNSなどで広まる口コミは、
一瞬でも逃すとブームは過ぎ去ってしまい、見向きもされなくなる。
だから、小説やライトノベルが出て、
流行った傍からアニメ化やドラマ化、映画化を進めていく。
ゲームにもなったりする。
そういった後々の展開も含めた上でのスピードが求められ、
それを作るためのお金が動いていく。
それらは実を結ばずに無駄になっていくことが多い。
でも、1回の当たりが相乗効果を生んで、
やがて誰も想像しないような莫大なものになる。
……可能性を秘めている。
結太は「今はインスタント作家しか生き残れない」と言う。
大量生産されたインスタントラーメン。
沢山の種類の中から選んで、即調理、即食事、即満足。
即即即。
でも、それは仕方ない。
今の世の中は物語を作るのに酷くお金がかかるようになってしまった。
それは不景気で仕事がないせいだったり、
それから創作したがる人間が増えた影響だろう。
はるか昔は作家というのは特殊な人々がなる職業だった。
けれど、その特殊性みたいなのは時代と共に薄れていって、
本来あるべき「ありきたりさ」に注目されるようになった。
俺自身は、それを正しいと思う。
物語は、もっとありきたりであるべきだ。
そして、多くの人に気軽に消費されて、
支えられるようなモノであるべきだ。
インターネットが台頭して、ホームページが流行って、
ブログなんかが始まって、SNSでみんな繋がるようになった。
携帯電話の功績も大きいだろう。
電話やメールでいつでも会話できるようになったのは大きい。
みんながみんな、他人の書いた文章を異様に読み、
それから自分で文章を異様に書くようになった。
誰だって自分を表現できるし、それにその表現を見てもらいたい。
何かしらのカタチで、そういった表現に加わりたい。
需要と供給と潮流と、ついでにタイミングもマッチした。
特異な例が一般化され、
そういった経緯を経て私立キャラクター文化研究学園はできた。
キャラ学は物語を生む手段であり、
卒業生たちは異常なほどの量の作品を作り続けた。
キャラ学は自分の好きな創作家の母校に通うチャンスであったりもする。
チャンスを利用して、ファンと創作家が恋仲になった例も0ではない。
その特異な例は、また物語化・一般化されて、多くの物語を生産して、
消費されていく。
その生産とか消費とかの果て、というか最先端に今の俺らがいる。




