表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/69

悩むツンデレ娘

「創作学科は大変なのねー」

 結太の創作部屋から出て少し歩いたところで、唯が呟いた。

 言葉の割には力がなく、あまり真剣さは感じられない。


「課題、行き詰ってるみたいだね。

 やっぱり、同じ事をやっても評価はされにくいらしいし。

 俺たちがうまく演じて差異化してあげるのも大切なんじゃないのかな」


 私立キャラクター文化研究学園――通称キャラ学。

 学園は大きく分けて、キャラクター学科と創作学科がある。


 キャラクター学科の人間は、

 あらゆる創作物におけるキャラクターの特性を理解、

演技を磨く事を学業とする。


 そして、創作学科の人間はキャラ学科の人間を使って

 創作活動を行うことを目的としている。


 創作物の形式は問われない。

 実写でもいいし、先ほど見ていたような実写を

 アニメエンジンというフィルターリングソフトウェアに

 かけて自動でアニメ化したものでもいい。


 もちろん、文章化して小説にしても構わない。

 その場合、キャラ科の人間は己の知識を総動員して

 「キャラが立っているか」や「キャラにリアリティがあるか」を

 チェックすることで協力をする。


 結太はというと、創作学科で特にキャラクター小説の

 マルチメディア展開について研究している。

 俺と唯はキャラ学科で、それぞれ主人公、ヒロインの専攻だ。


「そんな事言ってもさー、あたしたちだって大変でしょ?

 それに、今だって春人はすっごく頑張ってると思うよ」

「ん? なに、ごめん聞いてなかった。考え事してた」


 あんたっていつもそうだよね、

 などと俺を貶しながら唯は言葉を繰り返す。


「ツンデレも大変だなーって言ったのっ!」

「そうかな? 簡単な部類だと思うけど」


「ツンデレだって、もうやり尽くされてるからね。

 やれ『今の流行がー』とか、『ツンとデレの配分がー』とか、

 『そもそもツンデレとはー』とか」


 誰かの真似なのか、妙に間延びした感じで言う。


「へー。唯的にはどこが難しいの?」

「あたしとしては、やっぱり配分かなー。

 近頃はツンデレなんてマジョリティだからさ。

 キャラクター性としては、突き抜けてなきゃならない!

 なんて言われてるのよ。

 楽だと思ってたんだけどなー」

「どんな配分でやろうとしてるの?」


「素直になれない系の、ツン4のデレ6かなー。

 やっぱデレてる方が演じてても楽しいしね。

 ツンってもうやりつくされてる感があるからさ。

 いっそデレデレっぽいツンデレをやろうかな、と」


 それってただの恥ずかしがり屋なんじゃないの?

 と思ったが率直には言わない事にする。


「それだとツンデレとしての要素が薄すぎるんじゃないかな。

 やっぱり、ツンデレで重要なのってデレを魅力的に見せる為の

 ツンの部分だろ?」


 そもそもツンデレとは――

 と語りだしそうになるのを、慌てて口を押えて噤む。


「あーそう思う? 教授にも言われたー。

 それじゃぁ単なる没個性だろ、って。

 でも、幾ら愛情表現の裏返しだなんて言われても、

 あたしは好きな人に暴力なんて振いたくないんだよね」


 暴力という表現で済むのかどうか怪しい作品も多い。


「見ていて不快だって思う人も結構増えてきてるみたいだね」


「そりゃそうでしょ。

 演じてる側のあたしだって不快だもん。

 それに、ツンデレキャラが暴力振るうのって大体が自分のせいだよね。

 素直になれないー馬鹿なー性格を男の子のせいにしてるわけ。

 他の女の子にデレデレしてる時に殴ったりね。


 でもこれって酷いよね。

 自分に魅力がなかったり、感情表現が苦手なのを

 棚にあげて暴力に訴えてるだけ。

 あたし、そんなのやりたくないよ」


「まーでもニーズってものもあるしなぁ。

 暴力表現は過剰であるほどに信頼の裏返しって事になってるらしいよ。

 ほら、仲がいい相手じゃないと気軽に叩いたりってできないだろ?」


「構ってほしいなら、『構って』って言えばいいじゃない。

 なんで叩くのよ。ばっかみたい」


 セリフの部分は猫なで声だった。

 確かに、これはこれで可愛いらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載 『転生勇者は魔王の手先!? -チーレム勇者の異世界無双-』 開始しました!

気に入った方は 評価お気に入り感想などをいただけると嬉しいです。

▼こちらの投票もよろしくお願いします▼
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ