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鈍感系の無力さ

 ガヤついていた室内が一瞬で静まり返る。

 ガターン、と何かが倒れる音がした。

 やけに近いな、と思ったら俺が座っていた椅子だった。

 知らないうちに立ち上がっていたらしい。


「あ、あはは、すみません。

 収集つかなそうだったので、ちょっと止めようと思いまして。

 大きな声を出し過ぎました」

 ピストルを突き付けられた俳優のように、

 降参のポーズをとっておどけて見せる。


「もー春人くん、うるさすぎー。びっくりしちゃったよー」

「悪い悪い。俺も自分で自分の声に驚いたよ」

「ばっかじゃないの、アンタ。良いから座りなさいよ」

 唯が倒れた椅子を直してくれた。腕を引っ張られて着席させられる。

 唯は気まずそうに俺と朋夏を見た。


「ごめんなさい。やり過ぎました」

 朋夏は、消え入りそうな声で呟いて、

 操り人形の糸が切れたように、すとんと椅子に腰を下ろした。


「にゃはは。凄かったねー、2人とも。

 本当の修羅場ってあんな感じなのかなー」

 気の抜けた笑い声を発しながら、薫がテーブルに身を乗り出す。


「ボクもあそこまで出来るかなー」

「あ、あたしも頑張って入っていけるようにしないと……」

 唯が俯く。


 余計ややこしくなるから遠慮したい。


「なんであんな止め方したの? 桐原くん。

 鈍感系ってハーレムものが多いんでしょ?

 ちゃーんと私と妹ちゃんを止めないといけないんじゃないの?」


 不真面目なはずの八代に叱られてしまった。

 けれど、まったくもってその通りだ。


「ああうん。おっしゃる通りなんだけどさ。

 色々頭で考えてみたけど、ごめん何も思いつかなくてさ。

 次はちゃんと考えておくよ」

「ただ、ああいう状況になったら春人はどうすりゃいいんだろうな。

 女の子側がヒートアップしすぎちゃった場合ってさ、

 鈍感系主人公はどこまでやっていいんだろう。私にも分からんわ」

 紅音部長がフォローを入れてくれる。


「どうすりゃいいんでしょうね。

 ちょっとすぐには考え付きませんよ」

「まぁ、自分一人で悩む必要もないだろ。

 作者様と相談でもすればいいんじゃないか? ほら、噂をすれば、だ」


 紅音先輩が右手でさした先、

 結太がテーブルのすぐ傍まで歩いてきていた。

 椅子を引き寄せて、座る。

「全員揃ってるなんて、珍しいですね。んで、何の話です?」


「面倒だから、カメラの映像あとで見といて。

 1週間以内、自動消去される前にね。

 あ、でも演技良かったからDVDに焼き直した方がいいか」


「紅音先輩、勘弁してくださいよ。

 俺の恥が一生残っちゃうじゃないですか」

「自分が悪いんだろ? 自分が。

 大体お前はいつもどこか飄々としてい過ぎてだな、…………」

 目をつむって口だけを動かす紅音先輩。


 キャラクターたるものいついかなる状況に陥っても、

 適切な行動や言動をすべし、とかなんとか言っている。

 自分の世界に入っている紅音先輩を無視して、

 部活に来ることが珍しい八代が口を開く。


「ねぇねぇ、仲里くん。今度の作品、私も出してよ。

 桐原くんと恋人役がいいんだけど」

「たまに来たと思ったら、いきなりそれかよ。

 あのね、僕は真面目にやってるヤツしか撮らないの」


「えー、私だってちゃんとやってるよ。

 私なりに。それに私は不真面目キャラでしょ?」

「主観評価じゃなくて客観評価で語ってくれ。

 不真面目を真面目にやってくれって言ってるんだ。

 お前の演技ってなんか適当なんだよ」


 結太はそういうが、先ほどの八代と朋夏のやりとりを見れば、

 そんな事も言っていられないだろう。


「まぁまぁ、そう邪険にするなって。

 どっちにしろ、そろそろ文化祭の準備はじめないとだろ。

 うちの部活ではグループで演劇披露することになるから、

 嫌でもそれで出る必要がある」

 サボることは許さないからな、と部長は釘をさす。


「あ、じゃぁ私それでヒロインやりたい!」

「あのなぁ……八代、お前は脇役だろうが。

 そもそもうちのグループはヒロインばっかりだし。

 ……っと言いたい所なんだが、

 文化祭の発表はハーレムで行く予定だから八代もヒロインだよ」


「やったー」

「ねぇねぇ仲里くん、ボクは、ボクは?」

「……逆に早乙女って男役できるの?」


「は?」


「ああうん、……無理だよな。もちろん、ヒロインだよ」

「やったー」

 先に喜んでいた八代と合流して、2人でハイタッチをし始める。


「どんなのにするつもりなんだよ、結太」

「何にも決めてないよ。まだまだ先の話だろ?」


 その後は特に話すこともなくなったので、適当にだべるだけだった。

 うちの部は部名のごとくライトノベル研究会であるから、

 どの原作にしたらいいんじゃないかと言うことを話あったりした。


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