表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/69

ぎゃっぷ萌え

 八代はキャラクターというものを全然分かってない。

 授業でヒロイン論とかやっているハズなんだけどな……。


 不良キャラみたいなもんだから、

 居眠りしていてまったく聞いてないのだろうか。

 それでいて、Aクラスって事は、

 やっぱりそっちの才能は凄くあるんだろうな。

 本人は分かっていないようだけれど……。


「この学校ってキャラクターを主軸においた作品の類が

 重視されているからね。

 この分野の一般通念を受け入れられなってことは、

 それだけで資質なしって断定されちゃうかな」


 いみふめい、いみふめい、いみふめい。

 と突っ伏したままうわごとを続ける八代。

 それがニーズなんだから仕方がない。

 それが嫌なら、新しいニーズを作り出すシーズにならないといけない。


「所で、八代さん経験人数は?」

 俺は聞いてみる。


 下世話な話が好きなのか、八代はぱっと顔をあげた。

 少し楽しそうだ。はい、危険信号。


「えーなにそれ。別にそんなに多くないよー」

 自分のもみあげの辺りを触る。ちょっと色っぽい感じ。

 少しだけたじろぐ俺に対して、唯が横っ腹をつついてくる。

 すごく痛い。


「はい、論外」

「えっ、なんで? 多くないって言ってんじゃん」


「そこは恥らって、

 『そ、そんなのあるわけないじゃない』とか言わなきゃ駄目だよ。

 他のキャラならね。八代さん、俺たちはキャラクターなんだ。

 建前で生きるべき存在なんだよね」


「そんなのおかしいよっ! おかしいでしょ、部長!」

「おかしくてもニーズに合わせないとダメなんだよ」

 紅音部長はよろよろと顔をあげた。


「えーでも、こういうの『ぎゃっぷもえ』っていうんでしょ、

 違うんですか?」

 部長と俺は深いため息をつく。

 唯は今までの流れがいまいち分かっていないようで、

 口に手をあてて眉根を寄せ、考え込む風な仕草をしている。


「何でもギャップにすればいいって訳じゃない。

 創作の世界にはね、タブーってもんがあんの。

 『ギャップ萌え』ってのはね、

 ある意味でテンプレートみたいなもんだから、

 そこから外れるのは萌えになり得ないんだ」


 部長の言葉に、俺はうんうんと頷く。

 多くの人に受け入れられるという事は、前例があるということだ。

 前例がないものは手放しでは受け入れてもらえない。


 受け入れてもらうためには、長い時間がかかる。

 特に登場人物であるキャラクターは読者が感情移入するための

 重要なファクターとして、どこか類型的でなければいけない。


 登場人物はキャラ化され、メタ化され、どこか既視感を伴いつつ、

 かつどこか新しさを「感じさせる」必要がある。

 テンプレートというのは、ある意味でマニュアルだ。

 そのマニュアルを使って、少しずついじっていく中で

 キャラクターが中身――心を持って動いているように見えてくる、

 ことがある。


「まぁでも」あまり追い詰めすぎるのも可哀想なので俺は口を開いた。


「そういう傾向が強すぎる反動で、

 アンチ処女性みたいな人も出てきてるからね。

 っていうか、実際にはそういう人の方が多いよ。

 だって、実体験としてそういう人の方が圧倒的に多くなるからね。

 単にこの界隈のニーズが逆行してるってだけ。

 だから、ある意味で八代さんも突き詰めていけば

 次世代のヒロインの先駆けになれるかもね」


 実際、清純キャラおよび暗にそれを匂わす

 キャラクターというのは枚挙に暇がない。

 だから、キャラ学の卒業生でもキャラの差異化に悩んで、

 この道を絶たれる人も多い。


 その点、現段階ではマイノリティである八代みたいなキャラクターは、

 その部分に関しては有利だ。

 ……誰も率先してはやりたがりはしないし。


「そうかなぁー」八代は半信半疑ながらも、わずかに嬉しそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載 『転生勇者は魔王の手先!? -チーレム勇者の異世界無双-』 開始しました!

気に入った方は 評価お気に入り感想などをいただけると嬉しいです。

▼こちらの投票もよろしくお願いします▼
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ